今年もスキー場の運営時期が近づいてきました。シーズン限定で運営するスキー場は、期間が短い分、集客方法などや取り組みなどで個性を出し、他のスキー場と差別化を図っていく必要があります。
本記事では、スキー場が取るべき新型コロナへの対応や、インバウンド向け施策などもあわせ、スキー場が集客施策を考える上で重視すべきポイントを解説していきます。
スキー市場の現状と今後の活路
まずはスキー場における利用者の状況と、それを踏まえてスキー場はどのような施策を練るべきかについて解説します。
スキー人口とスキー場数の減少
国内のスキー・スノーボード人口は、減少傾向にあります。
公益財団法人日本生産性本部による「レジャー白書2017」によれば、1998年の1,800万人をピークに以降は減少傾向で推移、2015年にはピーク時の4割強まで減少しました。
スキー・スノーボード人口の減少とともに、スキー場の数も減ってきています。ピーク時は全国700か所を超えていたものの、現在は500か所を超えるほどに減少しています。
幅広い年代層へのアプローチやインバウンド客の誘致が求められる
日本人のスノースポーツ人口は、1998年時の1,800万人をピークに、今では半減しています。
ただ、スキー人口は減ったものの、年代別でスキー人口に大きく差はありません。若者から高齢者まで、多くの日本人がスノースポーツを楽しんでいることから、スキー場は幅広い年代へのアプローチが必要と考えられます。
同時に、日本人だけでなく、訪日外国人によるスキー意欲も理解する必要があります。訪日外国人のスノースポーツへの関心は、日本のインバウンド市場重視の姿勢とあいまって高まっています。
日本人だけでなく、外国人に向けたインバウンド対策をスキー場でも実施することで、集客が見込めるでしょう。
今後のスキー場集客のポイント
今やスキー場は、「スキーやスノーボードができるだけのスポット」では、新たな顧客開拓は期待できません。スキー人口が減少していくなかでも売上アップを成功させるには、そのスキー場のターゲットや打ち出すコンテンツを見直す必要があります。
では、実際にスキー場はどのように集客施策を行なっていけばよいのでしょうか。施策を考える際のポイントを4つ紹介します。
1. 訪日外国人観光客への対応強化
前述の通り、訪日外国人観光客をターゲットにした施策によって、集客が期待できます。
日本のスキー場に訪れる訪日外国人は、日本のスキー場の雪質が好きという人、自然豊かな景観や周辺環境に魅力を感じる人などが多くいます。
そういった日本のスキー場ならではの魅力を全面に打ち出したコンテンツを打ち出しながら、気軽に訪日観光客が訪れられるようにサポートしてあげましょう。
たとえばスキー場までの公共交通機関や場内の多言語対応、外国語対応の自然に触れられる体験プログラムの用意、「雪質」を楽しめるイベントの開催など、さまざまな対応策があります。
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2. 地域に根ざした集客
都心部からアクセスしづらい地方のスキー場は、地域に根ざした施策で、地元住民の集客を狙いましょう。
地方のスキー場の多くは、学校のスキー授業・合宿などで選ばれる可能性も多くあります。
スキー授業・合宿を通じて子どもたちにそのスキー場の魅力を知ってもらった上でお得な体験プランやスキー講習の用意、無料招待券などを配布することで、スキーに魅力を感じた子どもを連れたファミリー層にリピート利用してもらうことも期待できます。
ほかにも、地域住民のみのサービスプランなどを用意することで、休日のお出かけ先に選んでもらえる可能性も高まります。
3.一年中楽しめるコンテンツの生成
スキー場の多くは、高山植物が生育する緑地としての魅力を持っています。また、スキー場は標高が高いことから、夏には避暑地としての魅力も打ち出すことができます。
こうしたスキー場の立地による魅力を存分にアピールし、春から秋にかけてのグリーンシーズンでも集客を目指してみるのもおすすめです。
たとえば春〜秋に見頃を迎える花園を造ったり、広い芝生の敷地を生かしてサバイバルゲームやスケートボードの会場として活用したり、期間限定でアスレチック設備を設けて大自然の中でスリリングなアスレチックを楽しんでもらったりと、自然と敷地を生かしたアイデアはいろいろあります。
工夫次第で、スキー場が定めるターゲットに合わせた最適な集客が期待できます。
4. 新型コロナウイルスの感染対策
今後は、新型コロナウイルス感染症など、感染防止対策をしっかりとっているかどうかも、利用者が訪れるスキー場を選ぶ上での大切な指標となります。
消毒の徹底や、ソーシャルディスタンスの確保を目的に入場者数を制限するといった施策をとり、それについてアピールすることで利用者に安心感を与えられます。
実際にオーストラリアでは、さまざまな感染症対策をとった上でスキー場の運営が行われています。
オーストラリアのスキー場では、入場者に「Covid Safe」という追跡アプリのインストールを求めています。加えて、ソリやスノーチューブといったアクティビティは、衛生面を考慮し禁止としています。
これ以外にも、スキー場利用のためのチケットは前売り券のみの販売とし、入場者数を管理・制限しています。
いくつもの感染防止対策を万全にし運営することで、実際に感染のリスクを下げられるだけでなく、新型コロナウイルスが発生している中でも利用者に積極的に足を運んでもらえるようになります。
オーストラリアの取り組みは、日本のスキー場での感染防止策を設計する際に役に立つでしょう。
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集客に成功したスキー場の事例
スキー場の集客について考える際には、これまでに紹介したポイントを整理し具体的な成功事例と照らし合わせることで良い結果が期待できます。そこで、実際に集客に成功したスキー場の事例について紹介します。
事例1 : ニセコいわない国際スキー場(北海道)
北海道にある「ニセコいわない国際スキー場」は、「徹底した地元集客戦略」と「スキー場という特性を活かした高付加価値化戦略」の2つを軸とした施策をいろいろ打ち出しています。
地元集客戦略としては、子どもとその家族をターゲットにしたサービスやコンテンツを用意しました。
近隣小学校への無料券配布のほか、ある程度技量が向上した小学生が楽しめるようなコース作りも行っています。
期間限定のイベントを積極的に開催することで、何度訪れても飽きない工夫も施しています。
こうした施策が功を奏し、結果的に地元の家族連れの集客に繋がっています。
スキー場という特性を活かした高付加価値化戦略としては、スキー場のパウダースノーを楽しめる圧雪車ツアーを実施しています。雪質に魅力を感じる人、スキーやスノーボードだけでなく雪や景色を楽しみたい外国人観光客などをターゲットにした施策で、幅広い層の集客を成功させました。
事例2 : 白馬観光開発(長野県)
長野県白馬には、複数のスキー場が点在しています。1998年の長野オリンピック(第18回冬季オリンピック)の開催場所にもなった白馬は、全国屈指のウィンタースポーツスポットとして知られています。
かつて大勢の人で賑わいを見せた白馬のスキー場も、スキー人口の減少に伴い、入場者は減少傾向にあります。
こうした状況を打破しようと、白馬のスキー場ではさまざまな集客施策が行われ、新しい魅力を打ち出すことに成功しました。
一つは、インバウンドに向けた集客施策です。たとえば、「HAKUBA VALLEY」という共通ロゴを10か所以上の白馬のスキー場に設け、訪日観光客に向けて白馬ブランドの認知を広げました。
もう一つは、白馬の山全体を「マウンテンリゾート」とし、スキーをしない旅行客でも楽しめるような魅力作りを行ないました。標高が高い白馬竜王スキー場は、高山としての特徴を生かして高山植物の観察スポットや避暑地として開拓しました。グリーンシーズンでも楽しめる場所であることを知ってもらい、春夏の集客増加に成功しています。
さらに、スキー場で提供される食事に地元産の食材を使用するなど、地域連携による付加価値化にも取り組んでいます。
スキー場利用者の多様化するニーズを捉え、集客成功につながる施策を
かつてはスキー・スノーボードといったスノースポーツを楽しむ場としてのみ利用されていたスキー場ですが、これからは利用者のニーズを捉え、多彩な魅力を開拓していく必要があります。
今後増えるであろうインバウンド客に向けた施策、地元住民のリピーター利用を狙った施策、スノースポーツ以外を楽しみたいという人に向けた施策など、ターゲットに合わせたコンテンツ作りをしていくことで集客力を高めることができます。
スキー場の所在地や雪質、周辺環境によって、既存のターゲット層、潜在顧客層が異なってきます。こうした点に理解を深めながら、利用者の心を打つ施策を見つけ出すことが大切です。
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