長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」などを展開する株式会社リンガーハットは、2021年2月期決算で最終損益が87億4,600万円となりました。
このピンチを切り抜けるための戦略として、冷凍食品の製造・販売を強化しているほか、テイクアウト用ちゃんぽん麺を開発し、販売しています。
国産野菜の価格高騰で苦しむ中、コロナ禍でさらなる苦境に…
リンガーハットの苦境は、実はコロナ前から始まっていました。
2018年8月、国産野菜の価格高騰をふまえ、値上げに踏み切っていました。名物の「長崎ちゃんぽん」は西日本では583円から604円へ、東日本では626円から637円へと値上げしています。
その結果、既存店売り上げは2018年10月が前年同月比1.9%減、11月が同1.3%減となり顧客離れに苦しんだようです。
それに追い討ちをかけるように、コロナ禍での売り上げの減少が続きました。
緊急事態宣言下でショッピングセンターが時短営業を続ける中、国内店舗数のうち54.7%がフードコート内店舗を占めるリンガーハットにとっては、大きな痛手となりました。
コロナ禍の2大戦略「冷凍食品」「テイクアウト」
そこでリンガーハットは、冷凍食品とテイクアウトの強化をはじめました。
1. 冷凍食品の需要をつかんだ
コロナ禍では加工食品の需要が拡大し、家庭用冷凍食品の売り上げ金額は、2020年1〜7月累計で前年比9.2%増と伸びました。
食品POSデータのKSP-SPによると、2020年最も金額が伸長した食品カテゴリーのうち、冷凍食品は5位となっています。
参考:KSP-SP
リンガーハットも例外ではなく、2020年3~11月期の外販事業(冷凍食品事業)の売上高は、前年同期比36.7%増の12.6億円と順調に伸びています。その中でもEC経由での販売が好調で、その販売額は前年度比で約7割増加しました。
2021年2月には、静岡県の富士小山工場で製造ラインを増やしており、冷凍食品の製造・販売を強化しています。
現在、販売している冷凍食品は長崎ちゃんぽんと皿うどん、餃子、炒飯の4メニューであり、一番の売れ筋が長崎ちゃんぽんです。
長崎ちゃんぽんは国産野菜を使用しており、一食で多くの野菜が摂れることも人気の秘密です。保存料や合成着色食料を一切使用しておらず、子どもでも安心して食べられます。
味も美味しく仕上がっているということで、以下のようにTwitter上でも好評を集めています。
Twitter:らーめん@さん @ra_men_chikk の投稿
2. テイクアウト用ちゃんぽん麺を開発
リンガーハットは冷凍食品の製造・販売の強化に加え、テイクアウトにも力を入れています。
2020年の10月からは新たに開発されたテイクアウト専用ちゃんぽん麺を使用し始めました。麺の太さを通常よりも太くし、茹で上がりの麺の固さを1.5倍にすることで、伸びにくくなるように工夫されています。
また、ちゃんぽんの麺と餡はセパレートされており、後から乗せることでお店で食べた時と同じような食感を保てるということです。
さらにモバイルオーダーサービスの対応店舗を拡大しているほか、テイクアウト限定のキャンペーンも展開しています。
顧客満足度は常に上位をキープ。「お客様の声」を集めて改善へ
実はリンガーハットは、2017年から2019年の間の顧客満足度3年連続1位をキープしていました。
2020年では2位となったものの、モスバーガーや木曽路などをおさえ、サイゼリヤと同率2位という強さをみせています。
※2020年のJCSI(日本版顧客満足度指数)調査の結果は以下
その理由として、先述した国産野菜の使用、保存料・合成着色食料の不使用など「食の安全・安心」に取り組んできたことが挙げられます。
これはフードコートに数多く出店し、家族連れを大きなターゲットとしているためです。国産野菜の価格が高騰した際も、より安い野菜を選ぶのではなく値上げを選択し、「食の安全・安心」を守っています。
また、キッズメニューや低糖質麺などの女性向けメニューのほか、現在は終了しているものの「麺増量無料」で男性客の心をつかんできました。ターゲットを絞らない「マルチターゲット戦略」で、多くの人にとって満足できるというイメージを作り上げました。
さらに公式Webサイト上の「お客さまアンケート」で顧客の声を集め、それをオペレーション改善に活かしています。
60周年記念ファンブック発売
リンガーハットは、来年2022年で創業60年となります。記念として、ファンブックを4月12日から発売しました。
同社の歴史、メニュー、マニアおすすめのこだわりの食べ方などを紹介しているほか、期間中何度でも使える「特典パスポート」が付いています。
参考:楽天ブックス
こうしたファンブックにも需要を見込んでいることから、根強いファンを持っていることがうかがえます。
テイクアウトや冷凍食品販売の強化で、外出できないファン層や新規顧客のニーズをつかみ事業の立て直しをはかれるのか。今後の動向に注目です。
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<参考>
日本経済新聞:リンガーハット、上場以来初の営業赤字 56億円 21年2月期
株式会社リンガーハット:決算短信
ITmediaビジネスONLINE:リンガーハットの顧客満足度はなぜ3年連続1位?
JCSI:2019年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査結果発表
東洋経済:リンガーハット「冷凍ちゃんぽんで挽回」の事情
食品産業新聞社: 需要拡大する冷凍食品、コロナ禍での自粛生活が流れを加速