標識や銘板の制作などを行う株式会社石井マークが9月5日に投稿した、ユニバーサルデザインについてのツイートがSNS上で話題となりました。
ユニバーサルデザイン(年齢や性別、障害の有無などにかかわらず、できるだけ多くの人が使えるデザイン)のプロダクトが「ダサい」、反対にスタイリッシュなデザインを目指したプロダクトが「わかりづらい」という意見が多かったことに対し、ユニバーサルデザインと、洗練された「ダサくない」デザインは両立しないのかどうか、疑問を投げかけるような内容となっています。
本記事では、今回のSNS上の議論の内容とともに、実際の企業例からも考察していきます。
Twitter:株式会社石井マーク @ishiimark_signの投稿ユニバーサルデザインとは
今回の議論で取り上げられている「ユニバーサルデザイン」とは、1980年代に、障害のあるアメリカ人建築家ロナルド・メイス氏によって提唱された概念です。
その意味は、「高齢者や身体障害者という特定の人に限定せず、また、あらゆる体格、年齢、障害の度合いに関係なく、できるだけ多くの人々が利用可能であるように製品、建物、空間などをデザインすること」と定義されています。
身近な例では、学校で使用する教科書にもユニバーサルデザインの考え方が取り入れられています。色の区別がしにくい色弱などの色覚の特性に配慮したカラーでデザインされ、教科書のレイアウトや文字のフォントもわかりやすくするなど、さまざまな点に配慮して製作されているのです。
また、9月1日に新一万円札として発表された紙幣では、このユニバーサルデザインを意識して「10000」という額面の数字を大きくする、指の感触で紙幣の種類がわかるようにするといった工夫がなされています。
Twitter:日本銀行 @Bank_of_Japan_j の投稿デザインの見やすさと洗練性は両立しないのか?SNS上で議論沸騰
今回SNS上で話題となったのは、石井マークの公式Twitterが9月5日に投稿した「ユニバーサルデザイン」と「ダサさ」についてのツイートです。
このツイートでは「新一万円札のデザインはダサいがユニバーサルデザインへの改善があった」ことと、「企業のプライベートブランド商品を戦略的に差別化するデザインをしたら、分かりにくくなった」という2つの事例から、「ユニバーサルデザインはダサい」ものとされてしまうことに対して疑問を呈しています。
Twitter:株式会社石井マーク @ishiimark_sign の投稿この投稿の後に続いて、フォロワーからのリプライを受けたツイートでは、「スタイリッシュ」が装飾を削ぎ落とすことであるならば、ユニバーサルデザインとは逆のベクトルにはならないのではとし、「ダサくない」ことと「誰にでもわかりやすい」ことが役割的に真逆のベクトルなのか、疑問を投げかけています。
Twitter:株式会社石井マーク @ishiimark_signの投稿 Twitter:株式会社石井マーク @ishiimark_signの投稿フォロワーからの反応
これら一連のツイートに対してフォロワー内外からもさまざまな反応やリプライがあり、その中には「ユニバーサルデザイン」と「スタイリッシュ(洗練性)」は対立するものではなく、別の概念や性質のものだから両立できるとするツイートも見られました。 Twitter:ジーラム|デザインマネージャ*IA さん @jeelamuu の投稿Twitter:まいるどしゅがー/インハウスでデザインとかコーチングとか さん @whispervoiceday の投稿
Twitter:まいるどしゅがー/インハウスでデザインとかコーチングとか さん @whispervoiceday の投稿「見やすさ」と「カッコ良さ」の共通点を見つけて活かす
株式会社石井マークは一連のツイートの中で、「見やすさ(ユニバーサルデザイン)」と「カッコ良さ(洗練性)」はそれぞれ真逆方向の役割を持ったなかで、両者の特性を打ち消し合わないよう、共通点を見つけて活かせるような着地点を見つけていきたいとしています。Twitter:株式会社石井マーク @ishiimark_signの投稿
これらの内容はTogetter(トゥギャッター:Twitter上で話題となったツイートをまとめるメディア)にてまとめられ、さまざまな人からの同意や反論、意見が掲載されています。
<参照>
Togetter:ユニバーサルデザインはダサいもの?スタイリッシュなデザインはわかりにくい?
ユニバーサルデザインと洗練性を「両立」できている3ブランドの事例
これらの議論の中で、ユニバーサルデザインと洗練性を両立させている例として挙げられたブランドがいくつかあります。
ここでは、その中で3つのブランド事例を紹介します。
1. Apple社製品:iPhone
洗練されたデザインと確固たるブランディングで知られるApple社製品は、どんなひとにも使いやすいようアクセシビリティ(利用のしやすさ)の考えを取り入れた製品開発がなされています。
たとえばiPhoneは、画面の文字の大きさや操作方法などを自分の使いやすいようカスタマイズできたり、文字だけでなく絵や写真を読み上げてくれたりする機能などもあります。
自らも視覚障害者である東京大学の大河内氏は、アクセシビリティについてのセミナーの中で、視覚障害者にとってアクセシブルな製品の例としてiPhoneを挙げています(※参照)。当事者から見ても使いやすいプロダクトであることがわかります。
2. IKEAの「文字のない」説明書
スウェーデン発祥の家具メーカーIKEAでは、家具の組立説明書を文字情報ではなく簡潔なイラストで構成しています。
世界で50か国以上にグローバル展開しているIKEAでは、商品の組立説明書を作るだけで何か国語にも翻訳する必要があります。
年間に3,500以上もの商品に対して組立説明書を作成しなければならないため、文字を極力無くし、言語や文化が違っていても理解できるシンプルなイラストで、1つの工程に1作業ずつと、誰にとってもわかりやすい組立説明書となっています。
3. 無印良品
無印良品では、ユニバーサルデザインへの取り組みとして2014年秋より商品開発担当らの有志によって勉強会を開始しています。
勉強会では顧客に対し、商品説明のわかりにくさ・色の区別のつきにくさなどについてのアンケートや、インスタントシニア体験(高齢者疑似体験)などを行い、その結果や経験などを商品の改善や新規商品の開発につなげています。
1例として、自分で好きな3色が選べるボールペンや、カラーユニバーサルデザインの視点を取り入れた識別しやすい歯ブラシセットなどの商品が誕生しています。
見やすさ・カッコ良さの両立はブランディングにもつながる
昨今ではSDGs(Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)が叫ばれており、その中では国や人種、性別などの不平等をなくすことが目標の1つに掲げられています。
誰にとっても使いやすい、使用者の不平等を無くすといったユニバーサルデザインへ取り組むことは、SDGsの実現にも共通する考え方といえるでしょう。
「見やすさ」と「カッコ良さ」を両立しているApple社、無印良品、IKEAといった企業の実例からも、ユニバーサルデザインへの取り組みを企業のブランディングにつなげ、持続的なビジネスを展開していくことが、これからの社会にとって必要となっていくと考えられます。
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→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
<参照>
朝日新聞:新1万円札の実物を初披露、流通は24年度上期めど
三省堂:ユニバーサルデザインへの取り組み
Apple社公式サイト:アクセシビリティ
デジタルマーケティング研究機構:「iPhoneは視覚障害者にも使いやすい!? 当事者が語るバリアフリーとユニバーサルデザイン」2019年7月23日開催 月例セミナーレポート(1)
IKEA公式サイト:組み立て説明書の見方
無印商品公式サイト:無印良品のUD活動 -多様性とヒント-