RPAはソフトウェアを既存のシステムに適合させて単純作業や膨大な量の業務をオートメーション化することです。近年、小売業界でもRPAの導入が進んでいます。
このRPAの導入でこれまで多くの人員と時間を拘束されていた膨大な単純業務から解放され、その人員をよりクリエイティブで高付加価値を生み出す業務へと転換できることが期待されています。
この記事ではRPAの特性や得意とする業務、導入する上での注意点や導入までに踏むべきステップなどを紹介します。
RPAとは
RPAとは英語のRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の頭文字を取った略語です。
パソコンを用いた日常的かつ規則的に為される一部の事務作業を、あらかじめ設定しておいた内容で自動化するソフトウェアのことを指します。
RPAとは?AIやVBAとの違いと導入のメリットデメリットを解説
RPAとは、オフィスの単純作業を人間に代わりソフトウェアに組み込まれたロボットに実行させることで、業務効率化や経費の削減を行うことです。そこで、本記事では経営者やビジネスマンなら知っておきたいRPAについての基礎知識、さらには導入のメリット、デメリットについて詳しく解説します。RPAの概要の注目されている背景2018年にパーソルテクノロジースタッフが発表した「RPAの導入進捗に関する調査結果」によると、すでにRPAを導入していると回答した企業は35.9%でした。そしてRPAの導入を検討して...
RPAの適用範囲・業務
RPAの特性上、RPAができる作業は人間と比べると限られます。
RPAは大量のデータを別のソフトに再入力したり、送信されてきたデータをもとに自動的に受注書を作成したりという単純で規則的な作業はできますが、複雑で同時に様々な判断を必要とする作業はできません。
パターン化されて、日常的に大量にこなさなければいけない業務を自動化することに効果を発揮します。
RPA導入の注意点
RPAを店舗での商品販売業務に活かす流れは、さまざまな小売業種で進行しつつあります。
RPA導入に際しては、導入の目的やRPAの特性などを適切に理解したうえで計画的に準備をすることが必要です。
1. 導入の目的に「残業対策」を掲げるべきではない
RPAの導入の目的に「残業対策」を掲げることは適切ではありません。RPA導入で促進されるのは業務の効率化と改革です。
本来人間がやっていた業務の一部をソフトウェアに移管することで、人間が使える時間が増えることになります。
残業対策と称してRPAを導入し、その業務時間を短縮できたとしてそれはただ単純に人間の業務をロボットが肩代わりしただけにすぎません。その生まれた時間を用いて、人間にしかできない業務の改善や新しいビジネス上の価値を生み出せるかが重要です。
RPAの導入はその業務改善や効率化の1つの手段であり、価値創造のきっかけです。
2. ロボットの管理者を明確にする
RPAの導入が進むにつれて、RPAが肩代わりされる業務が増えていくことが予想されます。
その時に考えられるのが、RPAの管理がずさんになることです。社内や店舗内にRPAを導入する部署が増えるにつれて、どのRPAがどの部署の担当なのかが不明瞭になることがあります。
また、管理担当者の異動や退職によってRPAの管理業務が適切に引き継がれず、トラブル時に誰も対処できないことや、存在しているけど誰が管理しているのかわからない、そもそも誰も管理していないRPAが出現することになります。
このような状態は企業のガバナンス上問題があるといえます。
このような事態を避けるべく、各部署にRPAの管理担当者を置く、もしくはそのさらに上に社内や店舗ごとに一括で管理する部署や担当者を置き、リストでRPAの一覧を作成し管理するなどの対策が必要です。
3. RPAは突然停止することがある
RPAの特性上、他のコンピューターシステムよりも停止することが多いものです。
多くのRPAはパソコンの画面を画像認識して処理しています。このような仕組みを採用しているのは、既に導入されているシステムを変更することなく簡単に後付して業務を自動化するためです。
しかしこのような仕組みであるために、対象とするソフトウェアの仕様が変更されて、これまでにないポップアップが表示されたりフォントが変更されたりするだけでRPAが正常に動作しなくなることがあります。
また、RPA自身の仕様変更でこれまでのパターンで業務が自動処理できなくなることもありますし、人間の入力ミスや不用意な改行などでも容易に停止することがあります。
これらの要因をすべて排除し、停止しないRPAを生み出すには膨大な例外パターン設定とその準備作業が必要です。
しかし、これではRPAの「既存システムに容易に後付して自動化できる」という長所を失わせることになります。
現実的に運用していくためには、「RPAがなるべく止まらないように設定する」「RPAは止まるという前提で停止しても支障がないような業務フローを別枠で用意する」「繰り返し起きるトラブルをもとに毎回メンテナンスする」などの対策が必要です。
RPA導入の3つのステップ
RPA導入に際しては、RPA自体への理解を深めることが何よりも大事ですが、それ以外にも既に存在する業務内容の再検討と、RPAで自動化の対象としたい業務選定基準を定めてから導入することも必要です。
ステップ1. 業務の可視化
既存の業務がどのような業務なのかを以下の項目で分類することで、RPAの導入に適しているのかどうかやそもそも必要な業務なのかを判断できるようになります。
ある業務について「定型で行なわれているのかどうか」「使われているソフトウェアやシステムの詳細」「関係部署や作業人数」「工程数と工程時間」についてに洗い出します。
この中には重複している作業や、必要以上のクロスチェックなどが含まれていることがあり、それらの整理もできます。
ステップ2. 業務の見直し(自動化すべき業務の決定)
RPAを利用しての自動化したい業務の選定の判断基準としては、業務が定型化しており量が膨大、もしくは多くの時間がかかっているものから優先的に自動化することで業務時間の削減が見込めます。
また、その業務を遂行するうえで複雑な思考や判断が必要とされるかどうかも重要で、これらの能力が必要とされる業務の場合にはRPAによる自動化には適していません。
社内や小売店舗内において主にRPAで自動化しやすい部署としては経理や人事部門、在庫管理や倉庫部門などが該当します。
ステップ3. RPAの導入
既存業務の業務内容の確認と整理や、RPA導入の対象となる業務の目星がついたらいよいよRPAの導入となります。
導入するうえで最終的な目標としたいのは、自社の中でRPAの設定から運用、適応部署業務の拡大までできるような人材育成やノウハウ獲得です。
そのためにも、まずは比較的シンプルかつ効果が見えやすい業務を専門の販売会社のサポートを受けながらRPAで自動化することをおすすめします。これによって、導入初期でのRPAの効果を社内や店舗の現場で実感でき、今後の適応業務拡大への理解を得やすい素地を形成できます。
専門の販売会社のサポートを受けつつも、決して丸投げすることなく自社内での要員育成とメンテナンス技能の確保ができるような体制づくりが継続的なRPA利用の要になるでしょう。
小売業界でRPAの導入に成功した事例
実際に小売業界ではRPAの導入に成功し、業務の自動化による業務時間の削減や効率化に成功している事例が存在します。
ここでは3例を紹介しますが、どの事例に関しても「自動化の対象となる業務を明確にする」ことと「自動化ソフトウェアの専門会社にサポートを受ける」ことの2点です。
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【事例1】西友
スーパー大手の西友は本部部門と物流拠点でRPAを導入しました。
西友の場合は業務改革の一環として下部部門からのRPA導入の提案が複数あり、本部にRPA導入に携わる専門チームを編成し対応しました。 主に物流拠点での単純作業や商品受領証明書の発行作業などへ投入され、1万時間を超える業務時間の削減につながりました。
この導入事例をきっかけに、RPAの対象範囲を徐々に拡大し今では15以上の業務で年間2万時間以上の業務時間削減に成功しており、今後は10万時間以上の削減を目指しているようです。
【事例2】マルエツ
関東を中心にスーパーを展開しているマルエツは本社の経理業務にRPAを導入しました。
マルエツがRPA導入に踏み切ったのは社員をより高付加価値の業務に割り振り、働き方改革と共に業績を改善する為です。
この導入にはNECが協力企業として参加しており、社員の交通費の精算とその金額を会計システムに入力の際に為されていた金融機関のデータとの照合作業を自動化しました。これらの業務は繰り返し行われるものでしたが複雑な作業であり、1か月あたり200時間かかっていました。
RPA導入によりこの工程時間を20時間までに削減しただけでなく、これらの業務を行う社員の養成時間も削減できました。
【事例3】ミニストップ
コンビニチェーン大手のミニストップは店舗が毎日行っている営業日報関連業務を2018年よりRPAで自動化しました。
商品や店舗の販売戦略を考える上で多くの売上データを必要としており、日々集計する売上データの量は増加傾向にあります。またコンビニなどの小売業界では人手不足が深刻化しており、業務時間の削減や負荷軽減は重要な課題となっていました。
こちらもNECの支援を受けて導入を進めており、1か月あたり2,200時間かかっていた日報承認業務は60時間まで削減されました。
小売店におけるRPAの導入は計画的に行う
RPAの導入はあくまでも手段の1つであり、その目的は「定型業務の自動化による余剰時間の確保」とその余剰時間を利用して「高付加価値業務の創造と業務改善」を進めることです。
導入にあたっては、自動化できる業務と自動化すべき業務の選定と優先順位をつける判断基準を明確に定め、場合によっては業務の統廃合を進めることで抜本的な業務改善のきっかけにするのも重要です。
導入後も発生しやすいトラブルやそれに対応する維持管理を定期的にする部署の設立や人員育成が求められます。
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