RaaSとは、小売業のサービス化を意味するビジネス用語です。世界的に展開する企業でも重視されており、高度な小売戦略を可能にします。
本記事では、RaaSの概要を始めとして、実際に運用されているグローバル企業を中心とした事例を紹介し、RaaSが今後どのような展開をもたらすかについてを解説します。
また、同一のRaaSという略称を持つロボティクスにまつわるビジネス用語がありますが、今回取り上げるRaaSとはまったく違うものです。
RaaSとは
RaaSとは、Retail as a Serviceの頭文字を取った略語であり「小売業のサービス化」を意味します。
RaaSは商品を売るための仕組みと来店や購入により入手できる消費者データをサービスとしてとらえた概念であり、こうしたサービスは実際に商品を売りたい人に提供されています。
小売りのサービス化/販売の仕組みを提供
RaaSにより商品の販売者へ提供される価値は、商品の売上個数ではありません。実際の店舗での顧客の購買データを入手することと、商品と顧客のリアルな接点を作ることが大きな目的です。
RaaSにより商品の販売者は、商品をどのように配送・保管し、陳列し顧客に手にとってもらい、購入してもらうための仕組みを利用することができます。
RaaSは、小売業にとって新しい収益の可能性を秘めています。小売業では、購買行動にかかわる消費者の情報を取得し蓄積している場合も少なくありません。
RaaSはこれらのデータと、セルフレジなどの外部のテクノロジー企業が保有する技術と掛け合わせてサービス化しています。これにより、企業にとっては新たな収益源を得る機会が生まれます。
同時に、新たな顧客体験を生み出すことにもつながっています。
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ロボティクス・アズ・サービスは異なる概念
RaaSには、同名の略語であるRobotics as a Serviceが存在します。こちらは「ロボティクスのサービス化」と訳されるもので、ロボットとそれを制御する外部サービスにまつわるビジネス用語です。
頭文字が同じために全く同じ4字で構成されていますが、RetailとRoboticsで関連性はなく、解決できる課題も異なります。
Raasのメリット
RaaSを利用するブランドやメーカーにとってのメリットに、外部の成功企業が作り上げた革新的テクノロジーや仕組みを導入するため、必要な投資が最低限で抑えられるとともに生じるリスクも低い点が挙げられます。
また小売業や情報分析に長けた組織に蓄積されたノウハウをもとに、実店舗に来店する顧客データと取得でき、これまでは気づけなかったような視点と客観的データを得られるでしょう。
取得されたデータにより、今までとりあげなかったマーケティング戦略につながり新たな収益を生み出すことも期待されます。
RaaSの事例
RaaSの導入について、世界有数の企業が実際に運用している事例を見ることで、小売業のサービス化というものが形を伴って見えてきます。
以下に4つの事例を示し、どのような形でRaaSが展開されているのかを解説していきます。
1. Kroger
Kroger : Shop Groceries, Find Digital Coupons & Order Online
Krogerは、世界最大手の食品スーパーです。2019年にMicrosoftとパートナーシップを結び、デジタル小売戦略を開始しました。
具体的には、Krogerが所有する顧客データについて、Microsoftのテクノロジー技術を利用し、EDGE Shelfという商品管理システムを開発しています。
EDGE Shelfの利用によって、電子タグによる商品管理が可能になりレジの無人化を実現しました。顧客の購入履歴を分析し、個人別に最適化された情報を提示する機能も実現しています。
<参照>マイクロソフトとスーパー大手Krogerが"RaaS"で連携--デジタル店舗でアマゾン対抗へ - ZDNet Japan
2. b8ta
b8taは、アメリカ合衆国のサンフランシスコを拠点とし、体験型ストアを展開している企業です。
b8taのRaaSソリューションは、店舗における商品の販売をメインとせず、顧客が実際に商品を体験してもらうことを目的としています。
日本にもすでに進出済みで、有楽町と新宿に展開し、日本の顧客にも体験型ストアの新たな波を伝えています。
顧客が体験したデータは分析され、その結果をメーカーにフィードバックという形で戻すことで、ビジネスを成り立たせています。メーカーは自前でストアやサービスを用意することなく、実際に商品を利用した顧客の声を集められるメリットがあります。
3. Amazon
Amazonの「Amazon Go」もRaaSの代表的事例です。
Amazon Goの特徴は、レジなしでの商品の決済です。顧客は専用アプリを利用することで、Amazonアカウントを通じて代金が自動で精算される仕組みになっています。
実際の利用の流れとしては、顧客は入店時にスマホアプリを起動し、入店ゲートへタッチします。入店後は好きなように商品を選び、自分で袋に詰め、退店するだけです。
個々の買い物状況の管理が必要なため、セキュリティカメラが設置されてはいるものの、レジレスかつコンタクトレスでの買い物が可能です。
退店後はデジタルのレシートがスマホアプリに届き、支払いも事前に登録していたクレジットカードに請求されます。
<参照>「Amazon Go」でレジ無しショッピングを体験 - Engadget 日本版
4. no-ma
日本の企業によるRaaSの事例もあります。2018年に設立した企業スマートメディアによるもので、2021年4月にRaaS型体験スペースno-maを展開しています。
ほぼ同じタイミングで、同名のストーリー型コマースサイトno-maを立ち上げました。同社は、ストーリー型コマースサイトについて、EC及びD2Cサイトにメディアコンテンツ編集の観点を取り入れたネットショップと定義しています。
これらのno-maは相互に連携していて、顧客はオンラインとオフラインの双方で商品を体験できるメリットがあり、ブランドの存在意義や商品の制作秘話などを伝える、ブランディング効果への寄与を想定しています。
<参照>RaaS型体験スペース「no-ma」と連動するD2Cブランドのキュレーションコマースメディア「no-ma」をオープン。|株式会社スマートメディアのプレスリリース
RaaSの今後の展開
RaaSが実際にどのように受け止められ、どういった形で展開しているかについて、4つの事例を通して見てきました。ここからは、RaaSの今後の展開について、2つの視点から迫ります。
1. D2Cが広がりをみせる
RaaSの進展が、D2Cの流れを加速させる可能性があります。D2Cは流通業者を介さず、メーカーが顧客へ直接の商品販売を行う概念です。
RaaSの事例に見られるように、ECサイトを超えてリアルの店舗でもD2Cの展開が始まっており、製品の体験を通じたブランドの世界観の提示、ひいては顧客の行動データを収集する場として実店舗の活用の動きが高まっています。
口コミラボでは、D2Cがどういうビジネスモデルであり、導入することでどういったメリットが生まれるかを解説した記事を公開しています。
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2. ベンダーと小売業者の距離が縮まる
これまでのデジタルサービスは、ベンダーが開発し、小売業者はそれを利用するという一方向の関係でした。
しかし、RaaSの概念とその有用性が高まると、双方向的なやり取りによってサービスを向上させる流れが生まれます。この結果、ベンダーと小売業者が互いに課題を持ち寄って共有することで、共同でのデジタルサービスの開発という流れが予想できます。
RaaSを目指して共同開発したサービスは双方にとっての資産となり、他企業へ販売することによる収益も期待できます。
RaaSは新たな購買チャンネルであり顧客接点
RaaSは企業の大小を問わず注目を集める概念になっています。RaaSにより、小売のノウハウを活用できれば、メーカーやクリエイターは自社製品の市場価値を高めることだけにフォーカスすることができます。
ただしショールーミングのように、リアル店舗を商品を購入する場ではなく確認する場として活用する動きも現れています。店舗だけ販売チャンネルととらえず、そこからオンラインでの消費にどうつなげていくかの仕組みと、その際の顧客にかかる負荷をいかに減らせるかがポイントになってくるでしょう。
一方で、店頭だからこその体験に価値を見出している消費者がいるのも事実です。顧客が望む価値をあらゆる角度から検証していくことが大切です。
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