行動経済学を小売業に活かすには?9つのマーケティング用語を実際の例

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経済学に心理学の視点を取り入れた行動経済学では、時として非合理的とも言える個人や組織の経済活動が、どのように金融市場や所得・資産の分配、幸福といった要素に影響するかを探ります。

マーケティングの分野で耳にする「フレーミング効果」「プロスペクト理論(損失回避)」「アンカリング効果」は行動経済学と関連性が高い用語です。行動経済学について知ることは、小売業界におけるマーケティング手法を検討する上でも効果的だと考えられます。

本記事では、行動経済学の概要や、行動経済学マーケティングとの関係性のほか、小売店で活用できるマーケティング用語を紹介します。

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行動経済学とは

「すべての人は合理的な選択をするものだ」という前提があった経済学と異なり、行動経済学ではより現実的な経済活動に焦点を当てています。特に「人は非合理的な選択をすることがある」という前提で事象を分析しているのが特徴です。

この項目では、経済学と行動経済学の概要や、行動経済学マーケティングの関係性について紹介します。

経済学のモデルは「完璧な行動をとる人間」

行動経済学とは、従来の経済学の視点に心理学の要素を取り入れた学問のことを指します。

これまでの経済学では、意思決定する際に人はさまざまな情報を参照し、少しでも高い効果を得られる選択肢を選ぶものだということが前提として置かれていました。

しかし、実社会では感情や直感などに基づいた判断がなされることも多々あるため、経済学の視点は「一般性を欠いている」といった指摘も挙げられていきます。

こうした流れを汲んで、人間の合理的ではない要素にも着目した学問が「行動経済学」です。行動経済学では経済学に心理学の視点を取り入れ、個人や組織がおこなう経済活動がどのように金融市場や、幸福や所得といった要素に影響をもたらすのかを検討します。

「非合理な行動をとってしまう人間」に焦点を当てた行動経済学

経済学の考え方では長年、すべての人は、合理的な判断を目的に、あらゆる情報を正確に取得できるという前提が共有されてきました。

しかし現実の経済活動では、キャッチコピーが気に入って衝動的に物を買ってしまったり、同じ機能の商品が並んでいても少し値段の高いブランド製品を買ってしまったりといった、非合理的な選択がされることもあります。

このような現実社会で観測される非合理的な経済活動は、経済学の前提と大きく食い違います。

行動経済学は「現実的な経済活動」を研究対象とし、これまでの経済学が取り上げることのなかった事象に合理的な説明を加えています。

行動経済学とマーケティングの関係性

商品サービスを購入する際、消費者は数多くある選択肢の中から、価格や品質、ブランド名などさまざまな情報を参考します。消費者はこれらの情報をもとに、購入する、あるいはしないといった行動を決断します。

この決断は常に合理的下されるわけではなく、感情や衝動に駆られたものである場合も少なくありません。行動経済学ではこうした非合理的な行動には様々なパターンがあるとしています。

行動経済学は企業のマーケティングにも注目されています。消費者がどのような状況で、どういった理由から非合理的な行動を取るのかを理解することで、市場の開拓や売り上げの拡大をはかることができると考えられているからです。

小売店が知っておくべき、マーケティング用語と活用例

小売業界で活用できるマーケティング用語には、「フレーミング効果」「プロスペクト理論(損失回避)」などが挙げられます。

この項目では、小売店で活用できるマーケティング用語とその活用例を紹介します。  

1. フレーミング効果

「フレーミング効果」とは、ある物や事象を言い表す方法によって、その表現を見た人が物事に対して持つ見解が変わることを指します。

フレーミング効果の「フレーミング」には「枠組み」「骨組み」といった意味があり、小売業界では例えばセール販売時の割引率の表記などが当てはまります。

例えば、セブンイレブンではセール時に「20%オフ」と表記していたものの、割引率を変えずに表記だけを「100円均一セール」に変更した結果、顧客の購買意欲が向上し、コンビニ他社も同様の表記を導入したという事例があります。

2. プロスペクト理論(損失回避)

「プロスペクト理論」は、人は利益を得ることより、損失を避けることを優先して意思決定する傾向にあるという理論です。プロスペクトは「損失回避性」を意味します。

小売業界におけるマーケティングの活用例としては、商品のセール時に添えられる「50%の値下げは今年最後」「あと5時間で60%セールが終わります」「残りわずか!本日10名のお客様が既に購入しました」といった文言が挙げられます。

購入できる機会の希少さや、商品の希少さを強調することで消費者に「機会を損失したくないから、購入しよう」という動機付けを与える効果が見込めます。

3. アンカリング効果

アンカリング効果」とは、キャッチコピーなどの宣伝文句に、比較検討の基準となる情報を取り入れ消費者が下す判断の方向性に影響を与える現象です。

小売業界におけるマーケティングでの活用例としては、割引前後の大きさを強調するために使われる「通常は1万円の商品を、今回は特別に8,000円で提供します」など、比較対象を強調させるための文言が挙げられます。

アンカリング効果とは?意味やマーケティングへの活用事例を業種別に紹介

たとえば2万円の予算で掃除機の購入を考えていたときに、元値が4万円の掃除機が在庫処分のため2万8,000円で売られていたら予算をオーバーしているのにもかかわらず購入を検討してしまうことなどが挙げられます。 この場合、元値の4万円が基準となるため顧客にお得感を感じさせます。


4. ヒューリスティック

「ヒューリスティック」とは、人間が経験則や直感で回答を見つけ出す現象やその様子を指した言葉です。

消費者は商品などに対する評価を行う際に、無意識のうちに参照している手がかりがあり、これが決断に影響を与えています。小売店では、消費者が無意識のうちに参照しているものを理解することで、消費者の購買意欲を高めることもできるでしょう。

口コミサイトやSNSで言及されていた、製品に対する評価や感想が無意識で参照され、結果として消費者の購入を後押しするような場合、そこにはヒューリスティックな判断が働いているといえます。

5. バンドワゴン効果

「バンドワゴン効果」とは、多くの人が高い評価を付けている商品には良い印象を持ちやすいという現象です。

例としては、店舗を吟味している時間がないとき、一つの口コミサイトで上位に位置している店舗を「人気の店だ」と判断したり、口コミの件数が多い店舗を「話題になっている店舗だ」と判断したりすることが挙げられます。

インターネット上の例の他に、行列ができているお店を見ると繁盛店だと判断することもバンドワゴン効果の例に当てはまります。

6. 松竹梅の法則

松竹梅の法則」とは、商品の値段を安値、中程度、高値の3種類に分けて設定したとき、多くの人が中程度の値段の商品を購入する傾向にあることを指します。なお、松竹梅の法則は「ゴルディロックス効果」と呼ばれることもあります。

多くの人が中程度の値段の商品を選ぶ理由としては、「豪華な物を購入して失敗したくないが、安い物を選んでケチだと思われるのが嫌だ」というように、損失回避と見栄の心理が働くためではないかとも考えられています。

小売業界のマーケティングでは、ある商品の売れ行きを伸びやすくするために、店頭に並べる類似商品の価格を意図的に調整するといった活用方法が見られます。

7. ハロー効果(認知バイアス)

ハロー効果」とは、商品や物事を評価するときに、判断材料と直接の関連がない背景や特性に意識が向いてしまい、評価が左右されてしまうことを意味します。

ハロー効果は「認知バイアス」とも呼ばれており、例としては「この洗剤は多くのスーパーで売られているから良い」「国産品は品質が良いだろう」など、マーケティング手法やブランドの名前をもとに製品の質を判断する場合などが当てはまります。

8. 希少性の法則

「希少性の法則」とは、生産数や在庫数が少なかったり、入手場所が限られていたりする商品などに消費者が注目することを指します。

その他に希少性の法則を取り入れた例としては、購入できる期間に制限を設ける「期間限定」、ファンクラブや協会に入会している人にのみ購入権を与える「会員限定」といったマーケティング手法が挙げられます。

また、上記の手法を組み合わせることで、希少性をさらに高める効果にも期待できます。

9. ウィンザー効果

ウィンザー効果」は、販売店の店員から提供された情報よりも、まったく利害関係の生じない第三者から伝えられた情報に人は信憑性を感じやすいことを指します。

商品の購入前に公式サイトではなく口コミサイトを確認するといった行動は、第三者の情報に信頼を寄せるウィンザー効果が関係しています。

AmazonやAliExperssといった大手通販サイトには必ず口コミ機能が設けられているほか、近年は各ブランドのオンラインショップでも独自の口コミ機能を設けている店舗が多数見かけられます。こうした商品に対するユーザーの評価は、ウィンザー効果により売り上げに貢献していると考えられます。

小売の現場でも、行動経済学の理論が確認できる

行動経済学は、従来の経済学における「人はあらゆる情報を正確に取得できる」「人は合理的な判断をするものだ」といった前提の代わりに「人は時として非合理的な判断を取ってしまう」という前提を置いています。

こうした前提のもと、行動経済学では人や組織の経済活動がもたらす影響を探究しています。

経済学に心理学の要素を取り入れた行動経済学マーケティングの分野でも応用されることがあり、「フレーミング効果」「プロスペクト理論(損失回避)」をはじめとする理論はキャッチコピーの作成時や、店舗展開の戦略などあらゆる場面で取り入れられます。

行動経済学を知ることでマーケティング手法の引き出しが増え、実店舗や、オンラインショップなどさまざまな形態での小売店の運営に活用できるでしょう。

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<参考>

BOXIL:行動経済学とは

PLAN-B:マーケティング活動に活かせる行動経済学の基礎知識5選

オクゴエ!:悪用厳禁!行動経済学をマーケティングに劇的に活かす21の方法

mbaSwitch:行動経済学が変えるマーケティング戦略〈 第1回 〉行動経済学とは何か?〜人間の不合理な行動を読み解こう

freewebhope:行動経済学「フレーミング効果」で売上を劇的に上げる方法

MNEXT:行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方

ferret:マーケティングする上で知っておきたい!行動経済学用語7選

UX TIMES:代表性ヒューリスティック

富士通マーケティング:第06回 松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)~最も売りたい商品を売る方法~

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    この記事の筆者

    口コミラボ編集部

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