消費者の購買行動は変化しています。従来は店頭で購入するかどうかという意思決定を下していたものの、現在では事前に情報を集め比較することで、購入前に予め商品を決めていることが多くなってきています。
Googleはこのような消費者行動に対してZMOT(Zero Moment of Truth)という意思決定モデルを提唱しました。
市場で商品をより多くの人に購入してもらうには、ZMOTを正しく理解したうえで、ZMOTを前提としたマーケティング戦略が必要となります。
本記事ではZMOTの概要や特性、実際にマーケティングに取り入れる際のポイントについて解説します。
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ZMOTとは
ZMOTに対応したマーケティングを確立するにあたって、ZMOTだけでなく関連するほかの概念についても知っておくことが重要となります。
ZMOTをはじめとする消費者の意思決定モデルの根底にはMOTという概念があるなど、ZMOTを理解するためのヒントが存在します。
まずは、ZMOTについて触れながら、関連があるほかの概念についても紹介します。
Googleが提唱したマーケティング理論 消費者の意思決定モデル
「ZMOT」とはZero Moment of Truth(ゼロモーメントオブトゥルース)を略した言葉で、Googleが提唱している概念の一つです。
消費者の多くは店舗に行く前にインターネットで商品について調べ比較することで、事前にある程度購入する製品を決めていることが少なくありません。
つまり、店頭で初めて実際の商品を目の当たりにする前から、商品と消費者との交流が発生しているといえます。こうした理由から、「ファーストモーメント」の前である「ゼロモーメント」が使われています。
商品についての情報は、商品情報や口コミなどさまざまな形で存在します。これまでにも、家電製品やパソコンなど高価な商品を購入する際には事前に情報収集する消費者が多くいました。
しかし、ネットやスマートフォンの普及により、現在は安価なものでも事前に調べる消費者も多くなったことでZMOTが注目されています。
FMOTとSMOT
ZMOTは、以前から存在していた「FMOT」や「SMOT」にならったマーケティング理論です。
FMOTとは、First Moment Of Truth(ファーストモーメントオブトゥルース)の略称で、消費者が店舗の数秒の間に、商品購入を決定することを示した理論です。
FMOTは2004年に大手消費財メーカーの「P&G」が消費者行動調査を実施し、消費者が店頭で3~7秒の間に購入の意思決定を下していることが明らかになり、提唱されました。
また、SMOTとは、Second Moment Of Truth(セカンドモーメントオブトゥルース)の略称です。
消費者が商品を評価するのは購入後実際に商品を利用するときで、その商品を継続して購入するかの意思決定はその時点でなされるという理論です。
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MOT(Moment Of Truth)とは
ZMOTやFMOT、SMOTの前提として、1980年代にスカンジナビア航空の元CEOのヤン・カールソンが自身の著書の中で提唱した「MOT」という概念があります。
MOTはMoment Of Truth(モーメントオブトゥルース)の略称で、消費者が商品やサービスと接触するわずかなタイミングで商品を評価することを説明しています。
MOTは直訳すると「真実の瞬間」となりますが、消費者と商品やサービスを提供する社員が直接接する機会を意味しています。
具体的には、対面での接客や電話、手紙などが該当します。この真実の瞬間は、消費者にとって会社や商品、サービスのブランドを評価する材料になると考えられています。
ZMOTの特性・典型的な場面
ZMOT、FMOT、SMOTは、消費者がどのタイミングで商品を評価するかによって分かれます。実際にマーケティングに取り入れる際には、それぞれの特性について知っておく必要があります。
ここからは、3つのMOTのなかでも商品購入前に注目したZMOTの特性や、典型的な場面について解説します。
ZMOTの特性
ZMOTには大きく5つの特性があるとされています。
- オンラインで発生します。検索エンジンやSNSでの検索がZMOTの一般的な入口とされています。
- リアルタイムで発生し、場所や時間帯に関係なく常に発生し得ます。その傾向は強まっているとされ、2010年の時点ですでにGoogleの1年間のモバイル検索数は前年比で2倍と急激に伸びています。
- 能動的な行動をとります。消費者が情報を得るとき、他の人から得た情報以上に能動的に得た情報を重要だと考えていることがわかっています。
- 情動的な行動を起こします。消費者は自身が満足するために情報を収集しているとされています。
- 多数に向けた情報発信が特徴といえます。今日においては、友人や面識のない人、一般人や専門家などの立場に関係なく、誰もが情報を発信し、注目を集めるために競い合っています。
ZMOTの典型的な場面
ZMOTの典型的な場面は、消費者が商品やサービスに関する情報に触れる際に発生します。多くの情報ツールのなかでも、消費者が最も多く利用しているのは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使用した情報収集です。次いで利用者が多いとされているのが、友人など周囲の人からの口コミといわれています。
ZMOTの性質上、ZMOTが想定する主な場面はオンラインとなります。オンラインでは検索エンジンを介した情報収集がメインとなります。口コミサイトの口コミや、商品やサービスに関する記事、企業や商品の販売者が開設しているSNSの投稿が具体的な例としてあげられます。
オフラインにおいては、身近な友人や家族からの口コミのほかに、企業の資料請求なども情報収集の手段として利用されています。
ZMOTにアプローチできるマーケティング戦略
ZMOTの概要や特性を知っているだけでは、実際にマーケティングに取り入れるのは難しいのが実情です。
そこで本記事では、マーケティングに取り入れる際にどのような部分をポイントにしたらよいのかを3つの側面から解説します。
話題性がある広告などで消費者の興味をひく
消費者の興味を引くには、どのような情報提示が最適であるかを考えることが求められます。
今日、最も多くの人が利用しているオンライン検索ですが、検索に至るまでには友人からの口コミやSNSなどから得た情報により、消費者のサービスに関する潜在的な興味関心を起こすことが必要となります。
消費者に商品やサービスを知ってもらい興味を持ってもらう入り口として、マス広告などによるきっかけ作りが有効といえます。
消費者が知りたい情報を適切に提供する
情報を発信するにあたって、消費者が必要としている情報は何かということを知っておかなければなりません。
そのためには、自社の商品やサービスがターゲットとしている消費者の年齢層や性別を明らかにする必要があります。
そして、口コミやSNSでの発言からターゲット層となる消費者が欲している情報や情報発信の手段について分析することが必要となります。
さらに、提供する情報によって消費者の購買意欲を高めるためには、検索されているキーワードは消費者が求めている情報であると理解すること、消費者の課題解決につながる情報提供を徹底していくことが求められます。
消費者の検索ニーズを満たす情報を発信することで企業の信頼を高められるだけでなく、消費者が購入するか判断する際に強い影響力を及ぼせるようになるでしょう。
SEOなどで情報にアクセスしやすい環境を整える
消費者が求めている情報を提供していても、その情報にアクセスできなければ意味がありません。
ZMOTが重視する情報収集の段階では検索エンジンが最も多く利用されていることから、検索エンジンでアプローチできるか否かが、他社の商品やサービスとの競争に勝つポイントだといえます。
消費者が自社の情報に確実にアクセスできるように整備するにあたって、SEOが重要となります。多くの消費者が検索エンジンで情報を収集しているものの、そのうちの8割は検索結果の2ページ目までしか見ないことがわかっています。
こうした事情を考慮すると、より多くの消費者に情報にアクセスしてもらうためにはSEOが必要不可欠といえます。
ほかにも、検索エンジン以外にもSNSやWebサイトなどオンラインの至る所に情報を配置しておくことで、消費者へのアプローチの機会を増やせるでしょう。
来店前に知る情報が購買行動を左右
ZMOTはGoogleが提唱している概念で、消費者が店舗で商品を購入する前に予め情報を収集し、来店前から購入する商品を決めていることを指します。
情報収集の手段として最も多く用いられているのが検索エンジンを利用した方法で、このほかにも友人からの口コミやSNS、Webサイトなどオンラインを中心に情報収集がなされています。
インターネットが広く普及した今、企業がZMOTを意識することは必要不可欠だといえます。オンライン上に多くの情報があふれている今、消費者に発信する情報の内容や発信手段、より多くの消費者に届けるための戦略策定が売上げにも影響を与えてくるでしょう。