10月11日から『全国旅行支援』がスタートしました。『全国旅行支援』は、県民割に代わる全国的な観光需要喚起策で、旅行代金の40%相当の割引と地域クーポンが付与されます。
この記事では、全国旅行支援の概要と各種旅行予約サイトの対応、制度利用時の注意点をまとめました。宿泊・観光事業者の方にとっても参考になる内容ですので、ぜひご覧ください。
※適用条件は都道府県によって異なるため、ここでは北海道の「HOKKAIDO LOVE!割」を参考にしています。詳細は自社のホテル・旅館の管轄となる都道府県にお問い合わせください。
全国旅行支援とは
『全国旅行支援』とは、政府が実施する全国を対象とした観光需要喚起策です。補助対象事業者である各都道府県に国が財政支援をし、各都道府県が実施します。
制度の内容
『全国旅行支援』は、宿泊割引とクーポン券(以下地域クーポン)に分かれます。宿泊割引は、一律40%とされています。割引上限額は交通(鉄道、バス、タクシー・ハイヤー、航空、フェリーなど)付プランか宿泊プランかで異なります。1人1泊あたり交通付プランは上限8,000円、宿泊プランは上限5,000円です。
地域クーポンは、宿泊地域の対象施設で利用すると、会計が値引きされます。旅行需要の平日分散化の観点から、地域クーポン配布額は平日と休日で異なり、1人1泊あたり平日は3,000円分、休日は1,000円分が配布されます。
全国旅行支援の制度に基づき、補助金適用の対象旅行代金は各種割引後の代金となります。また、最低利用金額は1人1泊あたり平日5,000円、休日2,000円とし、「5,000円×平日宿泊数×合計人数+2,000円×休日宿泊数×合計人数」の合計額が下限条件となります。
対象者・実施期間・利用条件
対象は全都道府県民で、日本に居住する外国人も対象になります。訪日観光客や海外に居住し一時帰国中の日本人は利用対象外となります。実施期間は、国の要項によると「10月11日〜12月下旬」とされています。『全国旅行支援』を活用した事業の実施期間は、各都道府県が個別に設定します。多くの都道府県では10月11日(東京都のみ10月20日)から事業開始となっているものの、実際の旅行商品は準備ができ次第、順次発売されるでしょう。
利用条件は、コロナワクチンの3回接種、またはPCR検査・抗原定量検査(検体採取日+3日)・抗原定性検査(検体再採取日+1日)の陰性が確認されることです。いずれも利用時(旅館チェックイン時)に証明書の提示が必要となります。
県民割との違い
県民割は、近隣県を割引対象とした旅行支援策です。10月10日まで実施されていましたが、10月11日以降は『全国旅行支援』に移行されます。県民割と全国旅行支援の違いは以下の通りです。施策 |
県民割・地域ブロック割 |
全国旅行支援 |
実施期間 |
2022年10月11日~12月下旬(予定) |
|
対象者 |
当該県在住者および対象の近隣エリア在住者 |
日本在住者 |
割引率 |
50% |
40% |
割引上限額 |
1泊あたり 5,000円(一部例外あり) |
|
地域クーポン |
上限 2,000円(一部例外あり) |
平日 3,000円 |
予約方法は3パターン
『全国旅行支援』が適用される予約方法には、「オンライン予約サイトでの予約」「旅行会社での予約」「自社(ホテル)での直接予約」の3つのパターンがあります。いずれも予約の取扱業者(直接予約の場合は自社)が『全国旅行支援』もしくは各都道府県事業の対象業者・施設である必要があります。自社での予約と旅行会社を経由しての予約では取り扱える商品が異なります。例えば、自社での直接予約では、日帰り旅行の商品は取り扱いができません。宿泊事業者は、自社の旅館・ホテルに合わせて宿泊プランや予約方法を選ぶ必要がありそうです。
旅行会社の対応は?
宿泊業者や観光事業者にとって、自社と取引のある旅行会社や予約サイトが『全国旅行支援』の対象となるかどうかは気になるところだと思います。ここでは、全国旅行支援を利用した旅行会社、予約サイト毎の予約開始スケジュールや予約方法、開始前の既存予約への対応(あとから割引)についてまとめます。
旅行会社の対応
10月11日時点での、各社から発表されている情報をまとめました。旅行会社 |
あとから割引 |
独自の特典 |
利用条件など |
楽天トラベル |
◯ |
アプリ予約で5%、 |
要会員登録 |
◯ |
割引クーポン併用可/ポイント付与 |
要会員登録 |
|
ゆこゆこ |
- | - | 要会員登録 |
JALパック |
◯ |
- | - |
◯ |
最大10%ポイント付与 |
- | |
◯ |
1~5%ポイント付与 |
独自特典は要会員登録 |
|
JTB |
◯ | - | - |
◯ |
- | - | |
✕ |
- | - | |
近畿日本ツーリスト |
◯ |
- | - |
◯ |
- | 要会員登録 |
各会社とも、都道府県ごとに『全国旅行支援』が適用されるプランの上限数が設けられているようです。『全国旅行支援』が開始された10月11日時点で、既に販売が締め切られている都道府県もあります。
『全国旅行支援』開始前に成立済みの予約においても、一定の条件を満たせば割引が受けられる場合があります。そのため旅行客が「割引を受けたいから」という理由で、既存の予約をキャンセルしてしまうことは少なそうです。ただし、旅程が迫っているものは手続き上対象外になることが多いようなので、直近の予約に関してはキャンセルが入ってしまうかもしれません。
特設ページで独自の特典を打ち出しているのは「楽天トラベル」「じゃらん」「Yahoo!トラベル」「一休.com」です。旅行客にとって、割引はホテル選びの1つのポイントになるため、これらの予約サイト経由の予約は増えることが予想されます。
一方、観光事業者からは、『ポイント還元が原因で旅行支援の計算がややこしい』などの声も聞かれます。予約サイトを利用する際は、メリット・デメリットを把握した上で、業者を選ぶ必要がありそうです。
また、多くの予約サイトでは、割引を受けるために「会員登録」が必要な場合があります。さらに、今回の『全国旅行支援』は適用条件が複雑であることから、予約サイトによって予約方法が異なったり、手順が複雑だったりします。予約サイトを利用したくない旅行者にとっては、旅行会社での予約や自社Webサイトでの直接予約は価値がありそうです。
利用時の注意点
『全国旅行支援』適用プランを作る際に、気をつけたい注意点をまとめます。※適用条件は都道府県によって異なるため、ここでは北海道の「HOKKAIDO LOVE!割」を参考にしています。詳細は自社のホテル・旅館の管轄となる都道府県にお問い合わせください。
日帰り予約は適用条件外となる場合も
旅行会社や予約サイトが全国旅行支援を利用できるのは「交通付き」日帰り旅行プランとされています。つまり新幹線やバスなどの移動がプランに含まれる必要があります。滞在のみのプランは対象外となりますのでご注意ください。
ちなみに、宿泊事業者が独自にプランを打ち出す場合、日帰り旅行は対象外となります。販売時に混同しないようご注意ください。
地域クーポンの「平日」「休日」の定義は事前確認を
地域クーポンの「平日」「休日」の定義は、「宿泊旅行」と「日帰り旅行」で異なるようです。
北海道の「HOKKAIDO LOVE!割」の場合、”宿泊旅行については、宿泊日とその翌日がともに「土・日・祝」の場合は「休日」、それ以外は「平日」として扱われます。例えば、金曜日から日曜日にかけての2泊3日の旅行は、3,000円+1,000円=4,000円分のクーポンを配布することとなります。
日帰り旅行については、土・日・祝を「休日」として扱い、それ以外を「平日」として扱います。
他の割引との併用がNGな場合がある
旅行会社や予約サイトが独自で行っているクーポンやキャンペーンと『全国旅行支援』の割引は併用できない場合があります。
JALパックでは、”割引クーポンその他割引にてお申し込みをいただいていた場合、新たに「全国旅行支援」対象商品との割引併用はできません。”としています。
また、どの予約方法においても、換金性の高い金券類(QUOカード)を含むプランは『全国旅行支援』の対象外となります。
陰性証明は、どの予約方法であってもチェックイン時に確認
『全国旅行支援』の利用条件となる”ワクチン接種および陰性証明”は、予約方法に関わらず利用時に確認することとなっています。チェックイン等の際、ワクチンの接種済証や検査の結果通知書等の提示、および運転免許証、健康保険証等の公的書類による、本人確認及び利用対象の都道府県在住の確認が必要です。『HOKKAIDO LOVE!割』では、”複数人の参加者がいるグループの一部が条件を満たさない場合(接種済証や検査結果を忘れた、検査が間に合わなかった等)当該条件を満たさない者のみの対象外とするか、全員を対象外とするか、事業者において判断してください”とされています。
宿泊事業者は、利用客への公平性を保つためにも事前に対応を統一しておく必要があります。
まとめ:都道府県や旅行会社の最新情報をチェックしておこう!
『全国旅行支援』は、水際対策の緩和と併せて、新型コロナの影響で冷え込んだ観光業界への起爆剤となることが期待されています。全国からの旅行を受け入れられることもあり、観光業・宿泊業者にとって、積極的に活用したい制度と言えます。『全国旅行支援』を活用した観光事業は開始されたばかりのため、要綱や取り扱い条件等は改訂される場合があります。自社の管轄となる都道府県の最新情報を都度確認し、動向を把握しておくと良いでしょう。
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