飲食店経営者にとって最も避けたい事態は、経営維持が難しくなり「廃業」せざるをえなくなることです。
飲食店経営はいくら経営が順調であっても、お店を利用する顧客の嗜好の変化や、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症といった社会情勢にも左右されるため、予想もしないタイミングで経営が傾いてしまうことがあります。
飲食店は時代に合わせて経営手法を変えていく必要がありますが、そうした努力を行っても廃業せざるをえなくなる場合もあります。
今回は廃業しなければならなくなったときに必要な手続きについて、またこれから飲食店を始めたいという人のための廃業のリスク、注意点について説明します。
飲食店経営の厳しい現状
「飲食店経営は難しい」といわれるのはデータからも明らかです。
事業継承総合センターによると、飲食店の倒産、休廃業・解散は2018年度で4万6,724件となっています。この数字は東日本大震災が起きた2011年度の2万5,007件、リーマン・ショックが発生した2008年度の2万7,306件を上回る数字です。大きな災害や経済へ悪影響を与えるニュースがほかの年に比べて目立たなかったにもかかわらず、飲食店の倒産、廃業、解散は増えているというのが現状です。
2018年度に休廃業・解散となった飲食店は523件というデータについても、前年度比30.4%増と3年ぶりに増加しています。経済に大きなインパクトを与えたリーマン・ショックが発生したときは488件でしたが、その数字を大きく上回り2000年度以降で最多を更新しています。
2000~2018年度の19年間における飲食店の倒産、休廃業・解散件数を合計してみると、その数は約2万件となり、飲食店が占める割合は全業種の約2.9%となっています。2018年度のデータでは飲食店の倒産、休廃業・解散件数は約3.8%と、全業種と比べて増えていることは明確です。
このような背景の中、新型コロナウイルスの感染拡大は不安を抱える飲食店経営者をさらに悩ますことになりました。緊急事態宣言の発令により、確実に客足は激減しています。客商売である飲食店は閉店に追い込まれるところも多く、なんとか息をひそめている店舗も有効な打開策を打ち出す余裕が持てない状況にあります。
仕方なく閉店を決めた飲食店も、すぐに店舗をたためるわけではありません。飲食店は店舗を始める際に不動産契約を結んでいるため契約期間内は家賃などを払い続けなければならず、退去を決めた後も費用の負担が重くのしかかります。
飲食店が廃業に追い込まれる原因は?
飲食店が廃業を余儀なくされてしまうのは、いくつかの理由が考えられます。新型コロナウイルス感染症のような予期できない問題を除いた場合、どのようなことが廃業を招いてしまうのか、考えられる原因について解説します。不十分なマーケティング
飲食店は参入の多い業界と言われているため、ただ単に経営をするのではなく、十分なマーケティングを行わないと廃業を余儀なくされてしまう可能性が高くなります。
出店するエリアにどのような人が多く集まっているのか、その人たちが好むメニューは何か、といったリサーチにより、メニューを考えていく方法が王道ですが、そのエリアを利用する人々の構成は年々変化していくものです。
顧客の飽きも発生するため同じメニューや同じ方法では通用しなくなることもあります。そのため、リサーチを定期的に繰り返し、継続して来てもらえるような戦略を考えて経営することが大切です。
ただ待っているだけでは集客は難しいため、店舗の認知を高めていくための戦略として、利用客に口コミをしてもらえるようなアイデアを考え、口コミを取り入れてサービスを改善していくことも重要です。
他にも飲食店経営には立地も重要です。ただ、駅から近く、人通りが多いからといって自然に集客できるとは言えません。立地の良い場所には多くの競合店がひしめき合うため、店舗に顧客を呼び込むためには念入りなマーケティングが必要となります。
さらに座席数が決まっていると顧客の数が限られるので、売り上げを上げるなら回転数を考えることも大切です。回転数を上げるには商品の提供、顧客退店後の対応をスピーディーに行うなどの方法があります。しかし、露骨に食器を下げにいくことは顧客の満足度を下げるので、お冷をつぎにいく際にさりげなく声がけをしたり、顧客が混雑する時間帯には長居されないように雑誌や漫画を置かない、といった工夫が必要です。
投資・固定費の問題、ビジネスモデルの性質
飲食店の廃業リスクが高い理由として、物件の取得費用、内装工事の費用、厨房機器の費用など、店舗を開業する際の初期費用が大きいことあげられます。
初期費用だけでなく、ランニング費用という点で見ても、飲食店は毎月家賃が発生するため、この出費を補いまかなうだけの売り上げを常に維持していかなければならないところが、飲食店経営の大きなリスクといえます。
飲食店経営を始めたいという人の中には自己資金が少ない人も多く、経営を始めてみたものの早くも運転資金が回らない、といった事例もあります。
またビジネスモデルの問題もあります。飲食店経営は「フロービジネス」の収益構造といわれ、ビジネスモデル自体のリスクが高いとされています。フロービジネスとは顧客との取引がその場限りのものであることから売り上げが単発的なものであり、継続した安定収益が見込めないビジネスのことです。
今月はいくらの売り上げが上がるのか、といったことは現時点では明確に分からないにも関わらず、支払わなければならない費用は継続的に発生するため常に不安がつきまといます。
このビジネスモデルの対極にあるのが「ストックビジネス」です。ストックビジネスとして代表的なものとして、サブスクリプションがあります。サブスクリプションは毎月一定額を支払うことで、サービスなどが利用できるビジネスのことで、定期的な収益が期待できるビジネスモデルです。
たとえば、企業に定期的に宅配弁当を提供したり、月額会員制にして会員には特別なメニューを提供するといった事業もストックビジネスに該当します。
飲食店経営者はこうしたストックビジネスを少ない割合でも取り入れていくことで、廃業のリスクを抑えることが可能になります。
人にまつわる問題
飲食店の廃業リスクには、働く人に関するものもあります。
多くの場合、店舗の経営には従業員が必要とするケースが多くあります。しかし今は人手不足といわれており、働き手を探すこと自体が難しくなっています。
飲食店は接客スキルも重要ですが、そのほとんどは体力仕事です。そのため、長時間、調理場やホールに立って働くことを「辛い」と感じ、飲食店の業務にネガティブな意識を持ってしまい、せっかく雇った従業員がやめてしまうことは少なくありません。たくさんの従業員を採用しても、その分退職されてしまっては採用に費やしたコストや時間が無駄になってしまいます。
また右も左も分からない新人に対し、同じ視点に立って分からないことを理解させる人材が少ないという現状もあります。こうした教育に適した人材が少ないのは「聞かずに、見て覚えろ」といった考えの人が多いこともあるでしょう。人を教育するには相手が「何を理解していないのか?」に気付く観察力も必要です。こうした教育スキルを持つ人材が少ないこともアルバイトなどが育ちにくい環境をつくっているといえます。
そして、常に新しい従業員が入ってくることから、顧客から「今日のオススメは?」「この料理はどれくらい辛い?」「この料理には何が入っている?」と質問されたときに答えられないということも発生しがちになり、リピーターも生まれにくくなります。
飲食店の経営はこのように従業員の採用や人材教育におけるリスクも非常に高くなる傾向にあります。
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廃業する際に気をつけたいこと
ここからは実際に廃業することになった際の廃業の流れや、廃業するにあたって気をつけておきたい内容について解説します。
廃業にかかる期間の把握
廃業を考え始めた際には、先に賃貸借契約の内容を確認しておきます。
賃貸借契約書には「解約予告期間」が記載されている場合があります。解約予告とは、賃貸借契約の解約する旨を前もって店舗物件を貸している賃貸人に通知をすることです。解約予告期間は最低でも3ヵ月以上あることが多く、解約予告期間いっぱいは家賃がかかり、その間に廃業のために必要に準備を済ませておく必要があります。
廃業を決めた際は契約書を確認し、解約予告期間がどのくらいあるのか把握し、逆算して計画を立てる必要があります。
解約予告期間を把握しておかなければならない理由としては、その期間の間は原則家賃を払い続けなければならないからです。廃業は突然ではなく、前もった準備と心構えが必要になります。
居抜きの場合は賃貸者へのしっかりとした説明
廃業は居抜きで廃業するのか、原状回復工事で廃業するのかで流れが異なります。以下では、それぞれの廃業の流れについて説明していきます。
営業用の計器・設備や家具、内装などをそのままで退去する居抜きで廃業する場合についてですが、賃貸借契約書には「居抜きのまま廃業して良い」という記載は通常ありません。
民法第616条,第598条には「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる」と記載されていることから、原則賃貸人へは元の状態にして返す必要があります。つまり、「借りたものは元の状態にして返す必要があるけれど、自分で取り付けた物は取り外して持ち帰っていい」ということです。
居抜きのまま廃業するケースもありますが、それは賃貸人の了解を得ている場合です。もし居抜きのままの廃業を考えている場合は、賃貸人から事情を説召して了解を得る必要があります。
しかし、居抜きのまま廃業できるケースは少ないといえます。基本的には原状回復工事をすると考えておいたほうが現実的です。
原状回復工事をして廃業する場合は、契約期間内に工事を終わらせるようにします。たとえば解約予告期間が3か月ある場合は、その期間内に工事を終わらせなければなりません。
ただし、原状回復工事によって内装や設備がなくなり店舗としての機能を失ったとしても、契約期間内は家賃を払い続けなければならないため注意が必要です。
廃業の際は契約書の確認や原状回復工事の段取りを考えることと並行して、これまで店舗を利用してくれた顧客へ廃業の告知を行います。
廃業を決めたといっても現時点では予約が多数入っている場合もあります。店舗によってはお客様のボトルを預かっている場合もあり、店舗に来ていただく必要がありますが、連絡先などを知らないケースがほとんどです。その場合は店舗の目立つ場所に廃業のお知らせなどを貼っておき、なるべく多くの顧客に店舗を辞めることを知ってもらうようにします。
顧客への告知のタイミングはなるべく1ヵ月前からお知らせすることを目安に、遅くなったとしても2週間前までには告知をするようのが望ましいでしょう。
飲食店の開業・廃業時には明確な見通しを
飲食店の経営は難しいとされています。それでも自分の夢を実現するために経営を始めたいという人もいます。
そのためにはまず「誰をターゲットとするのか?」「エリア内にはどんな人がいるのか?」といったマーケティングの視点を持ち、ある程度の見通しを立てることが大切です。
その上で定期的なリサーチを欠かさず、メニューのアップデートや従業員の教育といったことも欠かせません。
廃業を決めた場合には、契約書の解約予告期間を確認し、やるべきことのリストをつくっておくと分かりやすいでしょう。
解約期間が終わるまでの家賃や諸費費用の確認し、顧客への廃業のお知らせを通知し、原状回復工事のスケジュールなどの確認といったことを準備しておくとスムーズに進めることができます。
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