2月23日、東京オリンピック開催までの日数が残り150日となります。
当初2020年7月開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックでしたが、新型コロナウイルスの世界的な流行により、1年延期した2021年7月23日の開催が予定されています。
最近では、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(以下、東京2020組織委員会)森会長の辞任と橋本新会長の就任や、無観客での開催の可能性など、オリンピックを取り巻く状況は日々更新されています。
そこで、本記事では、政府やIOC(国際オリンピック委員会)の発信やこれから開催までに行われる準備・状況などについて、現時点でのオリンピックについての情報をまとめます。
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開催可否は:政府・IOCは開催の姿勢で一貫
新型コロナウイルスの世界的な流行が理由となって、2020年3月24日に東京オリンピック・パラリンピックの開催が最長1年延期する決定がなされました。2020年7月17日には延期後の正式な開催日程が発表され、東京オリンピックは2021年7月23日に開会式を行い、8月8日に閉会式を行う予定となりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は未だ収まっておらず、日本でも2020年11月後半から感染の第3波と2回目の緊急事態宣言が発令される状態となっています。
そのため、今夏での東京オリンピック開催を危ぶむ声が各地から上がり、2021年1月21日にはイギリスの新聞社タイムズが「日本は非公式にオリンピックの中止を結論づけた」という報道を行いました。
これに対し日本政府は、翌日1月22日にタイムズの報道を否定。橋本五輪相(当時)が会見で「政府としてはこの夏の大会の開催に向けて全力を尽くす」と発言しました。
2021年7月の東京オリンピック開催について、日本政府とIOCは開催の姿勢で一貫しています。
IOCのバッハ会長も、2021年1月27日の記者会見で「我々は『開催するかどうか』ではなく、『どう開催するか』という問いに集中している。臆測が選手を傷つけている」と発言し、開催の意向を強調しました。
東京オリンピックに対する各国の姿勢は
東京オリンピック開催について、IOCと日本以外の国の発言や報道をいくつか紹介します。先述の通り、イギリスのタイムズなど民間では中止を煽る報道もあるものの、各国政府はオリンピック開催に対し好意的な姿勢をみせているようです。
<台湾>
蔡英文総統は2021年1月23日に、日台友好イベントに寄せた動画メッセージの中で「きょうで開催まで半年となった。日本が団結によってこの試練を乗り越え、半世紀ぶりの東京五輪を再び実現するよう祝福する」と発言し、東京オリンピック開催へエールを送りました。
<中国>
習近平国家主席は2021年1月25日に、IOCのバッハ会長と電話会談を行いました。
その中で、習近平国家主席が「東京五輪と北京冬季五輪を安全に、順調に開催するため、IOCや各国とともに努力したい」とバッハ会長に伝えたとしています。
<アメリカ>
ホワイトハウスのサキ報道官は2021年2月3日の記者会見で「われわれはアメリカの選手が国際舞台で成功を収めることを望むとともに、選手の健康と安全を優先する」と発言し、東京オリンピックの開催については、新型コロナウイルスの感染状況を引き続き注視する考えを表しました。
また、選手団の日本への派遣については、最終的にはUSOPC(アメリカオリンピック・パラリンピック委員会)の判断となると述べています。
<イギリス>
菅首相は2021年2月16日に、イギリスのジョンソン首相と電話協議を行いました。
その中で、2月19日に開催されるG7サミットで、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてG7の協力を求めることに対して、議長国であるイギリスのジョンソン首相が「全面的に支持する」と答えたとのことです。
東京2020組織委員会・森会長の発言により国内外から批判。辞任へ
東京オリンピック・パラリンピック関連で特に最近話題となっていたのが、東京2020組織委員会の会長を務めていた森元首相の発言から、辞任となり新会長が選出された一連のニュースです。2021年2月3日のJOC(日本オリンピック委員会)評議員会で、森元首相が発言した「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性というのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと自分も言わなきゃいけないと思うのだろう。それでみんな発言する」という内容に対して、女性蔑視だとする批判の声が上がりました。
この発言はアメリカのワシントン・ポストやイギリスのBBCなど海外でも広く報道され、153か国中121位となる日本のジェンダー意識の低さについて指摘しつつ「日本では珍しく男女間格差を巡る議論が起きた」と解説されました。
こうした批判の高まりを受けて森元首相は2月4日に記者会見を開き発言の撤回と謝罪をしましたが、その時点では東京2020組織委員会の会長職辞任については否定し、続行する意向を示しました。
しかし、その後も批判が止まず、大会ボランティアや聖火ランナーの辞退が相次いだなどの影響から、2月12日に会長を辞任することが発表されました。
また、その後任としてオリンピック・パラリンピック担当大臣だった橋本聖子氏の就任が2月18日に決定しました。オリンピック・パラリンピック担当大臣には丸川珠代氏が新たに就任し、橋本氏、丸川氏、そして小池都知事と女性3名での連携が期待されています。
開催までの準備は:無観客での開催も検討。春までに決定
新型コロナウイルスの感染流行によって史上初めて延期となった東京オリンピックの開催について、これまで政府は無観客での開催はないという方針でしたが、2021年1月29日の加藤官房長官の記者会見では、東京2020組織委員会が無観客での開催を決断した場合は、政府は容認する方針を表明しました。無観客での開催か、観客を入れる場合はその上限人数については2021年春までに決定される予定で、その決定を踏まえてチケットの扱いと海外からの観客の受け入れについても判断されていくとしています。
また、史上初のコロナ禍でのオリンピック開催への準備として、3月から5月には感染防止対策や運営の手順などの課題を確認するテスト大会が予定されています。出場選手の検査体制や感染予防、海外選手の出入国管理などを、実際の大会運営によって手順と課題を確認していく予定だということです。
また2月3日、新型コロナウイルスへの対策をまとめた「プレイブック」の初版が公開されました。
選手や大会関係者、報道などそれぞれの立場ごとで作成されていて、大会期間中の出入国や検査体制、輸送などの課題について、4月と6月にプレイブックの更新版を出すにあたって、今後IOCと東京2020組織委員会などで業務の具体化を進めていくとしています。
開催された場合の経済効果は:32兆円の試算、「レガシー効果」含め
東京オリンピック開催が日本にもたらす経済効果は、2017年に発表された東京都の試算によれば、招致が決まった2013年から2030年までの間で約32兆円にもなるとのことでした。この経済効果は、競技会場の整備など大会開催のための直接的効果と、訪日外国人観光客の増加などその後も残るレガシー効果の2つに分けて計算されており、特にレガシー効果のうちインフラ整備・インバウンド対応などによる経済効果は大きく、28兆円と試算されています。
また、東京オリンピック開催のために必要な雇用ニーズの高まりも経済効果の1つです。会場の建設や競技場の整備を始め、選手団だけで最大18,000人ともいわれる海外からの選手・観光客へ対応をするサービス業など、雇用全体では80万人ほどの雇用ニーズが生まれるといわれています。
ただし感染の状況によっては無観客での開催も考えられるため、当初考えられていた程度の経済効果は難しいと考えられます。
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万が一中止になった場合、どんな影響がある?
IOCを始め日本政府や東京2020組織委員会は、コロナ禍でも東京オリンピックの開催に向けて日々準備と対応を進めています。しかし、万が一感染状況が抑えきれない事態となり、2021年の東京オリンピックを中止とした場合はどのような影響が考えられるでしょうか。
2021年1月22日に関西大学の宮本名誉教授が発表した試算によると、東京オリンピック・パラリンピックが中止となった場合の経済損失は4兆5,151億円、無観客での開催となった場合は2兆4,133億円に上るとのことです。
また、今回の東京オリンピックは、2011年の東日本大震災からの「復興」の象徴としての意味を持つ大会です。被災地の福島や宮城が会場となる競技もあり、オリンピックの開催を通じて被災地から希望と感動、支援への感謝などを伝えるべく、さまざまなプログラムが企画されています。
もし中止となった場合、これらの企画も併せて中止となるため、世界に向けて「復興」をアピールできる機会が大きく失われることになるでしょう。
アスリート達への影響は?オリンピックへの思い
中止による影響は経済的なものだけでなく、オリンピック出場を目指していたアスリートに対しても大きく影響があると考えられます。目標としていたオリンピックが中止となった場合、肉体的・精神的に緊張状態を維持してきたアスリートにとっては、競技に対してのモチベーションが維持できなくなるなど、今後の競技生活にも支障をきたす可能性があります。
2020年7月22日の朝日新聞では、アスリート達のコロナ禍でのオリンピックに対するさまざまなコメントが掲載されました。その中から、オリンピックを特別な大会として強い思いを抱いているコメントをいくつか引用して紹介します。
松元克央選手(競泳)
無観客でもいいから、世界で一番強い選手を決める場所が欲しい。僕の願いはそれだけです。世界選手権でメダルを取ってから、五輪に向けて人生で一番と言っていいほど自分を追い込みました。蓄えた力を発揮できる機会がなければ、僕は頑張れません。
西村拳選手(空手)
空手は今回が初の五輪です。たまたま僕が現役の時に実施競技に入り、出場権を獲得できた。夢が現実になった。空手を知ってもらえる機会でもある。だから中止でもいいや、と簡単には思えない。開催してほしいというのが本音です。
文田健一郎選手(レスリング)
五輪という「舞台」で、そのマットで戦えるなら他には何も望みません。開閉会式や選手村での交流などは細かい要素。やはり「五輪で戦って勝つ」ことが、最も大きいので。ただ、レスリングは五輪の注目度が別格。無観客だと少し寂しいかな。
※参考
まとめ
新型コロナウイルスの流行によって史上初の延期となった東京オリンピック・パラリンピックは、開催まであと150日となりました。開催半年前での東京2020組織委員会会長の交代劇などもあり、さまざまな意味でも東京オリンピックの開催は世界から注目されているといえます。
日本国内での変異ウイルスの確認や感染者数が落ち着かないことから、オリンピックの開催を危惧する声もありますが、日本政府や東京2020組織委員会、IOCなどが一丸となって、安全・安心な開催に向けてプレイブック作成などのさまざまな対策やシミュレーションを行ない、開催への道筋を整えようとしています。
東日本大震災からの復興の象徴やコロナ禍での希望として、また、アスリート達のオリンピックに向けた思いのためにも、東京オリンピック・パラリンピックが安全に開催されることが望まれます。
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<参照>
日本経済新聞:東京五輪、21年夏に延期 IOCが首相提案を承認
朝日新聞:東京五輪、延期後の競技日程を発表 開会式は7月23日
朝日新聞:「五輪中止と結論」英タイムズが報道 日本政府は否定
日本経済新聞:IOCバッハ会長、東京五輪開催を強調 感染対策2月
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