3月5日、首都圏1都3県(東京・埼玉・神奈川・千葉)における緊急事態宣言の2週間の延長が政府より発表されました。
一方、大阪府・京都府・兵庫県・愛知県・岐阜県・福岡県の6府県は2月末で緊急事態宣言が解除されています。政府は時期尚早と否定する中、宿泊業界からは早くもGo To トラベルキャンペーン再開を望む声も聞かれます。
本記事では、2021年2月の宿泊業界の動向についてまとめます。
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2月の宿泊業界:一時支援金不足、苦しい状況
2021年2月の宿泊業界は、主要都府県で引き続き緊急事態宣言が発令されていたこともあり、相変わらず厳しい状況が続きました。
そこで政府の支援策の現状などと合わせ、まずは宿泊業界全体の動向や、休業や倒産情報などを中心に各企業の動きなどをまとめます。
一時支援金で売上減少を補えない宿泊業者、全体の85%
2月19日付の日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69242130Y1A210C2EE8000/)において、政府統計から同社が推計した結果、新型コロナウイルスの影響を受けている宿泊業者のうち、3か月の売上減少分の半分以上を補えるのは15%に留まっており、残りの85%の事業者は売上減少分を補えないことが判明したと報道しました。
この支援金は1~3月のいずれかの月の売上高が半分以上減った事業者に対し、法人なら60万円、個人なら30万円を上限に3カ月の減収分を補填するものですが、特に営業規模が大きい業者ほど赤字額との乖離が大きく、一時支援金だけでは売上の補填には足りないという実態が浮かび上がりました。
そうした実状から、大手ホテルチェーンのプリンスホテル、東急ホテルズ、阪急阪神ホテルズ、伊東園ホテルズ、大江戸温泉物語、ホテル京阪系列などが、1月から2月にかけて一部の施設を一時休業させる措置を実施しています。
今後緊急事態宣言の延長が続けば、休業期間を延長する宿泊業者も増える可能性があります。
2月の主な倒産・閉館情報
2021年2月も、宿泊業界では閉鎖や倒産の報道が相次ぎました。
東京商工リサーチの発表によると、2021年2月の8件の宿泊業倒産のうち、4件が新型コロナウイルス関連倒産でした。
2月に閉館、倒産した主な宿泊関連施設として、丸小ホテル(熊本県)・旅館紅せん(宮城県)・スマイルホテル長野(長野県)・ホテルWBFなんばえびす(大阪府)などがあります。また、千代田区飯田橋の大型シティホテル「ホテルグランドパレス」が2021年6月いっぱいで閉鎖することもわかりました。
東京商工リサーチは、今後東日本大震災関連で倒産が増えた2011年度以来の倒産件数になることが危惧されるとしています。
2月の業界動向:高級ホテルなどで長期滞在プランが続々登場
苦境にあえぐ宿泊業界において、テレワークの増加といったコロナ禍ならではの需要を捉えるべく、高級ホテルなどを中心に相次いで発表されているのが「長期滞在プラン」です。
リーガロイヤルホテル(大阪市)では、2021年2月19日に長期滞在プラン「Home Hotel」の販売を開始すると発表しました。これはホテルでのリラックスタイムと充実したサービスを満喫することを柱とした「デラックスプラン」と、長期出張するビジネスマン向けの「シングルプラン」の2タイプからなるもので、価格は5泊で3万5,000円から、月額では15万円からとなっています。
加えて大きな反響を呼んだのが、帝国ホテル(東京)が新規事業として2021年3月15日より開始すると発表した 「帝国ホテル サービスアパートメント」です。
同サービスでは、客室内にキッチンや大型冷蔵庫などの設置はないものの、24時間対応の専属サービスアテンダントを配置しており、食事や洗濯などはサブスクリプション方式で提供する予定としています。
料金は月額の場合36万円で、最低宿泊日数は5泊・15万円からとなっています。
2月に発表された宿泊業関連のデータ紹介
ここからは、2021年2月に観光庁や各企業から発表された、宿泊業界にまつわる各種データについて紹介します。
観光庁が「宿泊旅行統計調査」1月第1次速報発表
観光庁が毎月発表している「宿泊旅行統計調査」の令和3年1月分第1次速報が、このほど発表されました。
これによると、全体の延べ宿泊者数は約1,681万人で、このうち外国人延べ宿泊者数はおよそ44万5,000人でした。
客室稼働率は23.7%と低調で、最も稼働率の良いビジネスホテルで33.7%、そして旅館やリゾートホテルといった観光旅行に対する依存度が大きい宿泊施設ほど影響は大きく、旅館では12.7%、リゾートホテルでは15%に留まっています。
観光庁がGoToトラベルの利用実績公表
観光庁は2月10日、2月1日までにとりまとめた速報値として、Go To トラベル事業の利用実績および利用状況の速報値を更新しました。
これによると、2020年7月22日~12月28日チェックアウト分の利用人泊数は少なくとも約8781万人泊で、割引支援額は少なくとも約5399億円でした。
この割引支援額の内訳は、宿泊・旅行代金の割引が約4082億円、地域共通クーポンが約1317億円となっています(※地域共通クーポン利用額については、2/1までにGo To トラベル事務局に換金請求があったもの)。
また、今回の観光庁からの発表では、2020年7月~10月の利用価格帯分布も公表されました。
それによると利用率が一番高かった宿泊価格帯は5000円~1万円(41.1%)で、これに続くのが5000円未満(25.8%)でした。
Go To トラベル事業スタート当時は、還元率の高い高価格帯に利用が集中するのではといった予測もありましたが、実際には低価格帯に利用が集中したようです。
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なおGo To トラベル事業の今後の動向ですが、一部地域に対する緊急事態宣言の延長を受けて2月末まで延長されました。3月以降についてはまだ不確定要素が多く、1都3県の緊急事態宣言の延長を受け、Go To トラベル事業の再開時期や再開の方法については改めて告知する旨が3月5日に発表されています。
これまでに報道された内容によると、利用可能範囲を隣接地域に限定、割引率の段階的引き下げ、平日に旅行を分散させるといった対策を行い、6月末から秋頃まで延長する方向で政府内で検討されている模様です。
いずれにせよ、早期に今後の具体的な方針の発表が待ち望まれます。
またGo to トラベル事業に関連して2020年7月22日にキャンペーンがスタートした際、割引での販売が間に合わずに旅行者が事後手続きをすることで還付金を受け取れる「個人事後還付申請」制度が導入されましたが、未だ還付金の振り込みが完了していないケースがあるようです。
遅延の大きな原因となっているのが申請書類の不備や不足で、事務局は案内書面の郵送や電話確認を行っているものの、いずれの方法でも連絡が取れない利用者もいるため、そうした人々に対しては事務局へ連絡するよう呼びかけています。
JCB、ナウキャストが「JCB消費NOW」による2021年1月の消費動向を発表
JCBとナウキャストが、消費動向指数「JCB消費NOW」を用いた1月分の消費動向速報を発表しました。
それによると新型コロナウイルスによる経済的影響を強く受ける旅行・宿泊業界ではいまだ消費の減速傾向が継続されており、2020年10月以降減速傾向にある「旅行」では前年同期比-69.6%と大幅な下げ幅を示しています。
博報堂が「来月の消費予報・3月」を発表
博報堂生活総合研究所が、1,500名を対象に毎月行っている消費の先行きに関する調査「来月の消費予報」の2021年3月分を発表しました。
この発表によると、季節や年度の変わり目で行事やイベント、さらには転勤や入学、進学といった生活の変化が大きい3月は例年消費意欲指数が高まる月であり、消費意欲指数は46.5点と前月比でプラス4.8ポイントとなりました。
「旅行」に関しても当初緊急事態宣言の解除予定があったことが影響してか、前月と比較すると消費意欲が上昇しています。
ただし前年と比較すると消費意欲は低下しており、コロナ流行前まで消費意欲が回復するには、時間がかかることが推測されます。
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<参考>
熊本日日新聞:丸小ホテル、2月末で閉館 熊本市上通町、創業133年 コロナ禍と老朽化で
旬刊旅行新聞:2月の宿泊業倒産8件、 震災後9年ぶりの高水準 東京商工リサーチ調べ
観光庁:Go To トラベル事業の利用実績等について
Go To トラベル公式サイト
PR TIMES: 21年1月の国内消費指数「JCB消費NOW」ハイライト
博報堂生活総研:[来月の消費予報・2021年3月](消費意欲指数)
Airstair:伊東園ホテルズ・伊東園リゾート、全国 41 の旅館・ホテルで臨時休館 2021年2月末までに延長
Hotel Bank:大阪 リーガロイヤルホテルで30泊15万円の長期滞在プラン「Home Hotel」が販売
ーー帝国ホテル東京 タワー棟一部客室をサービスアパートメントへ
観光庁:宿泊旅行統計調査
Hotel Bank:東鳴子温泉「旅館紅せん」 自己破産申請へ GoTo停止で予約キャンセルが相次ぐ
スマイルホテル長野公式サイト
ホテルWBF:ホテルWBFなんばえびす 閉館のお知らせ
Airstair:【まとめ】全国で大手ホテルチェーンが相次いで営業休止 ホテル業界への打撃深刻