4月の小売業界では、高島屋がECサイトを通じて購入する「売らない店」をオープンしたり、品質保証にブロックチェーンを利用する企業が増加したりなど、DXへの取り組みがさらに推進しました。
また、家電と家具の大手企業が業務提携することによって売上を伸ばしたり、リアル店舗マーケティングとデジタル技術を組み合わせて小売DX支援事業を展開したりなど、他社と合同で取り組むことで新たなサービスや価値を提供する動きが多くみられる4月となりました。
本記事では、4月の小売業界の動向や発表されたデータについてまとめます。
小売業界の最新DXニュース
4月の小売業界では、リアルとデジタルを融合させた店舗づくりや、技術を活かして顧客満足度や安心感を向上させる取り組みがありました。
高島屋、Z世代を狙う「売らない店」をオープン
店舗には在庫を置かず、消費者は専用のECサイトを通じて購入する「売らない店」、Meetz STORE(ミーツストア)が4月29日よりオープンしました。
すでにマルイや大丸松坂屋も同じ形式の売り場を持っていますが、高島屋としては今回オープンした新宿店が初店舗となりました。
トレンドに敏感なものの百貨店になじみがないとされる「Z世代」向けの商品をそろえることで、幅広い顧客層の獲得につなげることを狙いとしています。
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Meta(旧Facebook)、初の実店舗をオープン
Meta(旧Facebook)は、カリフォルニア州バーリンゲームのメンロパーク本社近くに初の実店舗「Meta store」をオープンすると発表しました。
Meta storeでは商品をデモ体験したり、購入することが可能です。例えば「Meta Portal」という動画チャット端末を使用する商品デモでは、自分の動きとリンクするビデオ通話を通して、接客・商品案内を受けることができます。他にも、没入型のデモエリアでは「Quest」というヘッドセットを装着して最先端のVR体験をすることも可能です。
5月9日にオープン予定で、VR機材やビデオ通話デバイスなど一部の商品は店頭でも販売されるそうです。
また、店舗オープンに合わせてMeta公式サイト(meta.com)に「Shop」タブを追加されました。これにより、すべてのハードウェア製品をオンライン1か所で簡単に購入することができます。
トライアル、顔決済の次世代スマートストアをオープン
株式会社トライアルホールディングス傘下の株式会社トライアルカンパニー(以下、トライアル)は、最先端のIT技術を導入した次世代型スマートストア「トライアルGO脇田店 in みやわかの郷」を4月20日(水)にオープンしたことを発表しました。
トライアル店舗では「24時間顔認証決済」が導入され、セルフレジ決済はもちろんのこと、日本で初めてお酒を購入の際の「年齢確認」が不要の顔認証決済となりました。
他にも、カメラと電子値札が連動し、AIによって自動で値下げする「自動値下げ」が世界で初めて設置されるなど、さまざまな最新機能を備えたスマートストアとなっています。
品質保証にブロックチェーンの利用進む
フランス流通大手のCarrefour(カルフール)社は、4月から製品にブロックチェーン技術を使用することを発表しました。生産の過程や、そのルート情報が重要であるオーガニック製品にブロックチェーン技術を利用すると、農場から店舗に出荷までの食品情報に消費者がアクセスすることが可能となります。
またそのアクセス方法もラベルのQRコードをスキャンするだけであるため、気軽に製品に関する情報を得ることができるようになります。
昨月はコンビニエンスストア大手のローソンが米の産地偽装を防ぐためにブロックチェーンを導入しました。ローソンもカルフール社と同様にQRコードをスキャンすることで、おにぎりに使用される米のトレーサビリティを確認できるようになっています。
情報を透明化することで消費者にとって信用性の高い商品になるため、ブロックチェーンの利用した品質保証は今後益々拡大していくでしょう。
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凸版印刷とHATALUCK 小売DX支援事業展開
凸版印刷とHataLuck and Person が、流通・小売業界におけるDXソリューション開発で協業することがわかりました。凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)のリアル店舗マーケティングと、株式会社HataLuck and Person(以下、HATALUCK)のデジタル技術の双方からアプローチするとしています。
HATALUCKはシフト業務の効率化や店舗内の情報共有効率化などをサポートする店舗マネジメントツール「はたLuck(R)」を提供しています。一方で凸版印刷は店頭POP・販促用チラシなどの制作を通して店舗のマーケティングのノウハウがあり、この2社が連携することでリアル店舗の支援事業を推進しています。
小売業界主要ニュース
4月の小売業界では、売上を向上させたり新しい顧客を開拓したりするために、さまざまな企業が協同する様子がみられました。
ローソン子会社の成城石井、上場へ 時価総額2000億円超か
ローソンの完全子会社である成城石井は、新規上場する方針を固め、23年度までにプライム市場への上場を目指しています。
成城石井は、2013年の売上高が約500億円だったのが、2021年には1000億円超と、ここ10年で売上高を2倍に伸ばしました。店舗数も倍増しており、今後の成長も期待できます。
このまま順調に進めば、総額2000億円を超える大型上場となる見通しです。
ローソン、無印良品の商品を全店に
ローソンは2022年5月から、ローソン店舗への「無印良品」の本格導入を開始することを発表しました。
ローソンは、無印良品の生活雑貨を置くことで競合との差別化を図り、新規の客層・需要を開拓したりすることが狙いです。
すでに2020年6月から、ローソン店舗で「無印良品」を導入する実験販売をしていました。現在、東京都、千葉県、埼玉県の約110店舗で展開していますが、これを2023年中を目途に全国規模に拡大する方針を示しています。
ニトリとエディオンが業務提携
家具大手のニトリホールディングス(以下、ニトリ)と家電量販店の株式会社エディオン(以下、エディオン)は業務提携することを発表しました。
ニトリは商品開発や物流、ネット通販などで協力を検討しています。また、ニトリがエディオンの株を10%取得し、主要株主になる予定です。
今年2月にはヤマダ電機が大塚家具を合併しており、このような家電・家具を包括的にコーディネートすることで売り上げアップを図る大手企業の提携が進んでいます。
NewDaysでもPayPay使用可能に
NewDaysは株式会社JR東日本クロスステーションカンパニーが経営している駅内コンビニエンスストアです。これまでSuicaなどの交通系カードの決済を優先し、大手では珍しくPayPayを導入していませんでしたが、ついに利用可能となりました。
これで、大手コンビニほぼすべての店舗でPayPayが使えるようになりました。
各業態 3月の売上動向
ここでは、2022年3月の各業態について売上動向をまとめます。
:チェーンストアでの総販売額は1兆111億円、前年同月比9.4%増
:コンビニエンスストアにおける既存店ベースの売上高は8,753億6,200万円、前年同月比1.2%増
:スーパーマーケットにおける総売上高は9,661億7,649万円、既存店前年同期比0.9%増
:ショッピングセンターの売上高は4,945億1,746万円、前年同月比2.3%増
:全国の百貨店の売り上げ総額は約4,260億円、前年同月比4.6%増
:ホームセンターの売上高は2,669億円で前年同月比2.2%減
:ドラッグストアの売上高は6,217億円で前年同月比4.5%増
:家電大型専門店の売上高は4,536億円で前年同月比2.6%増
既存店売上:3月分の業種別の売上動向
ここでは、4月に発表された小売業関連の各種データについて紹介します。
総合スーパー
4月に発表された総合スーパーの主要3グループの営業情報によると、既存店売上は前年同月比で、イオンリテール0.1%増、パン・パシフィック・インターナショナルHD国内主要4社(ドン・キホーテ、ユニー、長崎屋、UDリテール)1.5%増、イトーヨーカドー0.2%減となりました。
3月は春休み期間であることから、ディスカウント事業では旅行カバンやバッグ、パーティグッズ、酒類などの売上が伸びました。全体的にも週末や休日が既存店の押し上げに貢献しています。
スーパーマーケット
3月に発表された全国の主要スーパーマーケット10社の営業情報によると、3月の既存店売上は前年同月比でユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス2.2%減、ヨークベニマル0.1%減となりましたが、他8社では売上が増加しています。
- ライフコーポレーション2.7%増
- ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス2.2%減
- カスミ0.2%減
- フジ2.1%増
- アークス2.5%増
- ヤオコー0.8%増
- ヨークベニマル0.1%減
- バロー2.1%増
- マックスバリュ東海1.1%増
ドラックストア
ドラッグストア主要5チェーンの3月の営業概況によると、既存店売上高は、サンドラックが増減なし、マツキヨココカラ&カンパニーは合計1.0%減となりました。一方でウエルシアHD2.9%増、ツルハHD0.1%増、コスモス薬品2.6%増となりました。
家電量販店
3月に発表された家電量販店の大手5社の営業情報によると、ケーズホールディングスの3月度は1.0%増で、5ヶ月ぶりのプラスとなりました。
エディオンは全店で0.2%、直営店で増減なしとなり、直営店は前年同月をキープしました。その他3社はビックカメラ4.2%減、コジマ4.6%減、上新電機6.1%減となりました。
メガネチェーン
3月に発表された大手メガネチェーン4社の営業情報によると、愛眼が0.1%増となりましたが、ジンズホールディングス1.8%減、パリミキホールディングス0.8%減、ビジョナリーホールディング5.4%減と、既存店売上高は前年を下回る結果となりました。
メガネチェーンは2020年に新型コロナウイルスによって売上高が大幅に減少しました。このことから、3月21日まで発令されていたまん延防止等重点措置による外出自粛も多少影響していると考えられます。
内閣府「景気ウォッチャー調査」
内閣府の「景気ウォッチャー調査」によると、まん延防止等重点措置の解除によって消費が上向きになっていることが分かりました。
一方でロシアへの経済制裁など、ウクライナ危機の影響で原材料価格が高騰しており、利益が圧迫されているとの声もあります。
来月の消費予想
博報堂のシンクタンクである博報堂生活総合研究所は4月27日、「来月の消費予報・2022年5月」を発表しました。
それによると、2022年5月の消費意欲指数は46.8点で、前月比では1.2点減、前年比では0.8点減となりました。
5月の大型連休ではまん延防止等重点措置が解除されたことで、特に近場への旅行者が回復傾向にあります。カテゴリ別の前年比予想でも「旅行」のみが増加するとみられています。
一方、円安の影響で物価が上昇したことにより、購買意欲の低下がみられ、それ以外のカテゴリは伸び悩みそうです。
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<参照>
高島屋:“新たな出会い”がテーマのショールーム型店舗「Meetz STORE」が髙島屋新宿店に4月29日(金・祝)オープン
Meta newsroom:Introducing Meta Store: A Hands-On Experience With Our Hardware
Carrefour:CARREFOUR IS THE FIRST RETAILER TO USE BLOCKCHAIN TECHNOLOGYWITH ITS OWN-BRAND ORGANIC PRODUCTS,PROVIDING CONSUMERS WITH MORE TRANSPARENCY
株式会社トライアルホールディングス:次世代型スマートストア「トライアルGO脇田店 in みやわかの郷」〜無人店舗運営に向けて省人化・ローコストオペレーションを高レベル化〜4月20日(水)オープン
凸版印刷株式会社:凸版印刷とHataLuck and Person 、流通・小売業界におけるDXソリューション開発で協業
日本経済新聞:成城石井を上場へローソン、時価総額2000億円超も
無印良品 :ローソンで買える無印良品
ローソン:<参考資料>良品計画とローソン、全国のローソン店舗への「無印良品」展開開始
株式会社ニトリホールディングス:株式会社エディオンとの資本業務提携に関するお知らせ
PayPay:「NewDays」で「PayPay」が利用可能に!
イオン:月次連結営業概況
PPIH(旧ドンキホーテHD):月次売上高情報
セブン&アイ・ホールディングス:月次営業情報
ライフコーポレーション:業績推移
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(マルエツ、カスミ):月次売上情報
マックスバリュ西日本:月次報告
マックスバリュー東海:月次売上情報
アークスグループ:月次業績推移(前年比)
ヤオコー:月次営業情報、営業数値
バローホールディングス:IR情報
ウエルシアホールディングス:月例報告(国内ドラッグストア)
コスモス薬品:IR情報
ツルハホールディングス:月次営業速報
サンドラッグ:月次報告
マツキヨココカラ&カンパニー:売上月次情報
ケーズホールディングス:月次情報
エディオン:月次開示情報
ビックカメラ:月次売上
コジマ:月次売上速報
上新電機:月次売上速報
愛眼:その他のIR情報
JINS:国内JINS月次売上概況
パリミキホールディングス:月次売上データ
ビジョナリーホールディングス:月次売上
博報堂:博報堂生活総研[来月の消費予報・2022年5月](消費意欲指数)