美容院や飲食店、エステ、雑貨屋等を経営したい人の中には、店舗兼住宅に興味がある人も多いと思います。店舗兼住宅とは、自宅と店舗を兼ね備えた住宅のことです。
自宅スペースのすぐ下や隣が店舗であるため、通勤時間がかからない分プライベートに時間を使ったり、仕事の時間を増やしたり、ライフスタイルに合った働き方が可能なので魅力的ですよね。
一方、店舗兼住宅を建てるには法令上のさまざまな制限や注意事項があるため、しっかりと検討してから行動に移す必要があります。
本記事では、店舗兼住宅を建てる際の注意事項やメリット、デメリットについて詳しく紹介します。
店舗兼住宅の5つのポイント
土地探しや設計をしっかり検討してから店舗兼住宅を建てれば、店舗経営がうまく軌道に乗る可能性も高まります。そして、売り上げにも直結するため、入念に調べる必要があります。
店舗兼住宅を建てる際の5つのポイントを説明します。
1. 1階を店舗・2階を居住スペースに
物件が2階建てであれば、店舗スペースは1階に、居住スペースは2階に設定すると良いでしょう。
店舗スペースを2階に置くと、顧客は店舗が外から見えなかったり2階まで上がったりしなければらならず、集客力が落ちる可能性があるためです。
そのため、店舗スペースは1階に置き、店舗があることをアピールする必要があります。店舗に入りやすい雰囲気づくりが集客につながるのです。
また、居住スペースを2階にすれば、セキュリティ対策を強化できます。
2. 店舗と住居の動線を分ける
店舗兼住宅では、顧客と居住スペースの動線が重ならないようにするのが理想的です。つまり、店舗以外の通路から居住スペースに入れるような動線です。
プライベート空間を確保でき、顧客の目を気にせずに済むからです。また、動線を分けておくと、人の出入りも把握しやすくセキュリティ対策につながります。
店舗スペースと居住スペースの行き来が内部でできることが、店舗兼住宅の要件でもあるため、この点も考慮しておく必要があります。
3. 店舗内に顧客用のトイレを設置・バックヤードも
店舗スペースには、居住用とは別に顧客用のトイレを設置することをおすすめします。顧客のいる時間にトイレを使いにくいといった、不便を解消するためには必要な設置であるといえます。
またバックヤードを置くことも店舗経営するうえで重要です。バックヤードは、従業員が休憩したり着替えたりする空間として、あるいは在庫を置く空間です。
一方で、設置することにより店舗内がその分狭くなるため、どの程度のスペースが必要なのかを見極めることが大切です。
4. セキュリティ対策をしっかり行う
店舗スペースには、釣り銭や売上金、在庫が置かれているため、慎重にセキュリティ対策を講じる必要があります。たとえば、出入口の施錠は厳重にし、防犯カメラを設置することも考慮しなければなりません。
また、店舗兼住宅であるため、居住スペースのセキュリティ対策も通常より強化しておくことが重要です。
5. 駐車場をつくる
店舗兼住宅は住宅地内にあることが多く、立地が良くないこともあります。駐車場を設置し、顧客に車で来てもらうことも想定しておきましょう。
一方、業種によって顧客の滞在時間が短ければ、駐車場を設置しなくても構わない場合があります。また、駐車場の設置そのものが難しい場合もあるため、近所に月極駐車場があるかどうかを確認しておくことも大切です。
ただし、駐車場を設置した場合、車のエンジン音の苦情などが近隣から出ないように営業時間にも注意する必要がありそうです。
店舗兼住宅の6つの注意点
店舗兼住宅を建てる前に、住宅ローンを受けられるかまた控除はどの程度かについて調べておくことは、全体の予算を立てるうえで役立ちます。
土地の種類によっては店舗兼住宅の建築が難しい場合があるため、注意する必要があります。
1. 住宅ローン控除を使う際の注意点
店舗兼住宅を建てる際に、基本的に店舗スペースは「ビジネスローン」、居住スペースには「住宅ローン」をそれぞれ利用しなければなりません。また住宅ローンは、店舗兼住宅の設計基準が条件を満たしている場合にのみ組めます。
もし、条件に満たなければ住居スペース部分もビジネスローンを利用するほかなく、金利も高くなるので注意が必要です。
一方、店舗兼住宅で住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の要件を満たせば控除を受けられます。その要件には、床面積が50㎡以上であり、建物全体の床面積のうち1/2以上が居住スペースであることなどが挙げられます。
控除に関するそのほかの詳しい要件については、国税庁の公式サイトで確認できます。
<参照>住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除):国税庁2. 店舗をたてる土地の種類に注意
建築基準法では、その土地にどのような建物を建てて良いのか、つまり「用途地域」について定められています。用途地域は、住居や商業、工業などの用途によって13種類に分けられています。
その中で「第一種低層住居専用地域」というエリアでは、原則として店舗を建てられません。しかし建築基準法施行令(130条の3)では、居住スペースに延べ面積の1/2以上を割り当て、店舗スペースは床面積の合計が50㎡以下であれば店舗兼住宅の建設を特例として認めています。
また「第二種低層住居専用地域」であれば、2階以下かつ床面積の合計が150㎡以下の飲食店などの店舗も建てられます。
このように、もし店舗兼住宅を建てたい土地を見つけたとしても希望する大きさで建てられない可能性があります。そのため、その土地がどの用途地域に当たるのか調べておく必要があります。
3. 固定資産税が発生する
店舗兼住宅に関わらず、不動産を所有すると固定資産税が発生します。店舗兼住宅の場合は、一般の住宅よりも固定資産税が割高となる可能性があるので注意です。建物と土地両方に固定資産税がかかります。
4. 専用業者に依頼する必要がある
日本の土地には都市計画に基づく用途地域が定められています。そのため、店舗兼住宅を建てたい場合は、用途地域や地区計画の細かい規制や条件など、専門的な知識を持った業者に依頼することが重要です。
店舗兼住宅の設計は業態によってもカウンター、間取り、倉庫の有無など知識が必要なため、経験や実績のある施工業者へ相談しましょう。
5. 店舗兼住宅を賃貸した場合の消費税に注意
店舗兼住宅を賃貸した場合の家賃は、住宅部分は消費税が非課税で、店舗部分は消費税の課税対象です。
家賃は基本的に消費税の課税対象ですが、「住宅の家賃」に関しては政策的な配慮から例外的に消費税が非課税となっています。
6. 住宅ローン返済中は他人に貸せない
住宅ローンを借りて店舗兼住宅を建てている場合は、「店舗部分が自己の使用であること」という要件が付されているケースがほとんどです。その場合は、住宅ローン返済期間中に店舗部分を他人に貸せないことになります。住宅ローンを借りて建てた物件を他人に貸す場合には、住宅ローンが完済していることが必要であることを念頭においておきましょう。
店舗兼住宅のメリット・デメリット
立地の良い場所では、店舗経営がうまくいったとしても土地の値段が高く、周辺の環境が居住には適していない場合もあります。
逆に周辺が静かで住みやすい環境であれば、集客で苦労するかもしれません。
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メリット
店舗兼住宅の最大のメリットは、通勤時間がかからないという点です。また、休憩時間は居住スペースに戻って食事をしたり休んだりもできるため、時間を有効に使えます。
通勤にかかる交通費もゼロで済み、店舗または住宅の家賃が発生しないため、固定費を抑えられます。
そして、店舗経営に打ち込みたい人には集中できる環境であり、家族との時間を増やしたい人にとっては有効な手段といえます。特に、子育てや介護など家庭での時間をより多く持ちたい人には良いかもしれません。
デメリット
店舗兼住宅は他の住宅に並んで建っていることが多く、近隣への配慮が必要です。
たとえば、飲食店を経営する場合は害虫が発生しやすいため、その対策が求められます。また、店舗内の音や駐車場での車のエンジン音が騒音につながらないよう気をつけつつ、営業時間も慎重に検討しなければなりません。
そして、仕事とプライベートをうまく切り分けることが難しく、店舗中心の生活になりがちです。すると、家族との時間が取れなくなったり、家族への負担が大きくなったりする可能性もあります。
こうしたデメリットも理解したうえで、店舗兼住宅の建築について考える必要があります。
注意事項やポイントを把握して店舗兼住宅でのビジネスを成功に
店舗兼住宅を建てることによって、自分の店とマイホームを同時に持てます。そして、自分のライフスタイルに合わせて自由に働けます。
しかし、店舗兼住宅を建てるには、法令上の制限やローンを受けるための要件や注意事項がいくつもあります。また、制限や要件をクリアして建てたとしても、店舗兼住宅ならではのデメリットもあります。
これらデメリットについては、集客アップにつながるような工夫が必要です。
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