プロスペクト効果とは、行動経済学で利用されるプロスペクト理論を用いて説明される心理効果のことです。
損失回避したい人間の心理をモデル化した理論であり、さまざまな形でマーケティングに活用されています。
この記事ではプロスペクト効果の概要とその活用事例、マーケティングに活用する際のポイントについて解説します。
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顧客の心理を理解したマーケティング:プロスペクト効果とは
ここではプロスペクト効果の概要と、その基礎となるプロスペクト理論におけるポイントを紹介します。
プロスペクト効果とは?
プロスペクト効果とは、「プロスペクト理論」と呼ばれる行動経済学における意思決定モデルに基づいた心理効果のことです。プロスペクト理論はアメリカの行動経済学者であるダニエル・カーネマンと心理学者のエイモス・トベルスキーにより提唱されました。
「プロスペクト(prospect)」には「期待、見込み、見通し」といった意味があります。
人間の損失回避性により得られる効果
プロスペクト理論では、人間が持つ「損失回避性」がキーワードとなります。
損失回避性とは「人は得をすることよりも、損を避けることを選ぶ」心理傾向のことで、人間は損失を被る可能性を感じた時に保守的になったり、リスクを避けるように行動したりする傾向があります。
この心理効果は、たとえそれが確率や期待値を考慮するうえで合理的でなくても発揮されることがあります。
プロスペクト理論はこの損失回避性に着目し、選択の結果として得られる利益や損失を、人がどのようにとらえているかを表したものです。
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プロスペクト理論の2つのポイント:価値関数と確率加重関数
プロスペクト理論をより理解するには「価値関数」と「確率加重関数」を押さえる必要があります。
価値関数とは、物事の価値の感じ方の歪みを表すグラフです。同額の利益と損失に対して、人は利益を得る満足度よりも、損失がある方の不満度の方が大きくなる傾向があります。
たとえば「5万円を得られるメリット」と「5万円を失うデメリット」では、失うデメリットのほうを重視します。
確率加重関数は、確率に対する心理的な重み付けを表すグラフです。人は高い確率を実際よりも低く感じ、低い確率を実際よりも高く感じる傾向があります。
たとえば「パラシュートが開く確率が99.9%」と聞いて逆に「もしかしたら開かないのではないか」と感じたり、逆に「競馬で万馬券が当たる確率が5%」と聞いて「意外と当たるのではないか」と感じてしまう現象は、確率加重関数から説明できます。
フレーミング効果との違いは?
同じく行動経済学から提唱された心理作用に「フレーミング効果」があります。これは「同じ対象物でも着目する部分によって印象は大きく異なる」という理論に基づいています。
プロスペクト効果は、提示された情報に対して「どのように行動するか」という人の行動選択に注目しているのに対し、フレーミング効果は「人々にどのような印象を与えるのか」という印象の操作の面に注目しています。
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プロスペクト効果を活かしたマーケティング事例
プロスペクト効果を利用したマーケティング手法は、さまざまな形で実践されています。
ここではプロスペクト効果を活かしたマーケティングの事例を、どのようなロジックで活用されているかを中心に解説します。
1. 期間限定キャンペーン
期間限定割引や限定商品のキャンペーンは、プロスペクト効果を利用した典型的なマーケティング手法のひとつです。
期間を定めることで「期間限定中に利用しないと、損をしてしまう」という心理が生まれます。損失を回避したい心理に訴えかけることで、より強い訴求効果を得られます。
2. 返金キャンペーン
化粧品やサプリ、通販などでしばしば用いられる「効果がなければ全額返金保証」というキャンペーンも、プロスペクト効果を利用したものです。
興味はあるが、高いリスクを払ってまで試してみようとは思わない顧客に、「返金してくれるならリスクはない」と感じさせることで、心理的なハードルを下げる目的があります。
3. 競合との比較
競合他社との差別化を図りたい場合にも、プロスペクト効果が用いられることがあります。
たとえば、成功率が90%であることをアピールする結婚相談所が複数あった場合、「90%の方がマッチングしています」と「他社では10%の方がマッチングできていません」という宣伝文句では、顧客に与えるイメージが異なります。
競合他社を引き合いに出す際、競合に失敗のリスクがあることを強く打ち出すことにより、顧客の損失を回避したいという心理に働きかけることができます。
プロスペクト効果をマーケティングへ応用するための2つのポイント
プロスペクト効果を自社のマーケティングに活かすためには、押さえるべきポイントがあります。
ここではプロスペクト効果をうまく利用するためのポイントを2つ紹介します。
1. 価格設定
プロスペクト効果をマーケティングに活かすためには、参照価格に沿った価格設定がポイントです。参照価格とは、ある商品に関して顧客が心の中で妥当だと思う金額のことです。
プロスペクト理論に基づくと、顧客は参照価格に対して安いものを購入することは得だと思う心理に比べ、参照価格よりも高いものを購入する損失の方を重視します。
そのため、参照価格より高い価格を見て抵抗感が生まれてしまうと、商品の購入さえ検討してもらえない可能性が高くなります。
2. 価値訴求
単純に価格を提示するだけでなく、「損をしたくない」という心理を刺激するためにどのような訴求が必要かを考えることが、プロスペクト効果の活用において重要なポイントになります。
たとえば「今買うとお得」とアピールするよりも「今買わなければ損」であることを強調したり、「先着100名様以降は通常価格」というように、未来に起こる損失にフォーカスすることでより効果を発揮します。
プロスペクト効果を利用し、顧客の心理に沿ったマーケティングを
「損失を回避したい」という心理傾向は多くの人が普遍的に持つものであり、すでに日常の多くの場面で利用されています。
プロスペクト効果をマーケティングに活かすには、顧客の損失回避性に対してどのように訴えかけるかという視点が重要になります。
事例やここに挙げたポイントを参考にし、顧客の心理に沿ったマーケティング戦略立案していくことで効果が期待できるでしょう。
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