ロングテールとは、販売件数は多くないものの短いものの、長期間を通じて安定した需要のある商品を販売し、収益を得る手法や戦略を意味する言葉です。
コロナ禍で小売業の販売チャネルが実店舗からオンラインへ移行しつつある中、ECサイトの運営やコンテンツマーケティングに有効な「ロングテール」が注目を浴びています。
ヒット商品の売上げを伸ばすことよりも、ニッチな要求に応える商品を多種類販売して収益拡大を狙う手法で、Amazonを筆頭にさまざまなEC企業が成功を収めています。
多様化する顧客ニーズと販売商品のバランスをうまく保ちながら運用することが重要になるため、ロングテールの理論や模範事例、成功させるためのポイントを解説します。
ロングテールとは
ロングテールはたくさんは売れないが常にニーズのある商品やコンテンツを展開することです。
Webマーケティングにおいて基礎となる戦略ですが、従来の「ヒット商品で売上げを伸ばす」という考え方を覆す画期的な戦略でもあります。
ニッチ商品に着目した戦略は、売り場を必要としないECサイトと相性が良く、今後ますます市場拡大が見込まれるECで勝ち抜くために、運営担当者はしっかり押さえておくと良いでしょう。
【売れ筋商品の売上げ】<【ニッチな商品の売上げ合計】となる理論
ロングテールは、米国メディア「Wired」の編集長クリス・アンダーソンが提唱した理論です。
縦軸を販売数、横軸を商品種類とし、売上げ順に商品の種類を並べると、右にいくにつれ販売数量曲線が低く長いしっぽ(long tail)のようなカーブを描くことから名づけられました。
商品数が多いECサイトでは、売れ筋商品の売上げよりも、ニッチな商品の売上げ合計が上回るという特徴があり、まさにロングテール戦略が有効です。
下位8割の商品で安定した売上げを確保
一方、全商品の上位2割が売上げの8割に貢献しているという考え方を、「パレートの法則」と呼びます。
重要視すべき20パーセントが何かを見極め、注力すべきだという主張で、よく知られる「働きアリの法則」も、パレートの法則を細分化した考え方です。
ロングテールはこの逆で、下位8割の売れない商品を積極的にアピールすることで、上位2割より高い売上げを作るビジネスモデルです。複数商品により売上げが支えられるため、安定した収益を確保できます。
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実店舗よりインターネットを通じた販売向き
実店舗では陳列スペースが限られています。物理的な制約から、ヒット商品に注力した販売方法が一般的でした。
これに対し、ECサイトは商品の「情報」を掲載して販売するため、売り場面積を気にせず、商品を限定する必要もありません。さらに、細かい条件指定で絞り込めたり、おすすめ商品を動的に表示できるなどニッチな商品も閲覧してもらえる仕組みが豊富にあります。
電子書籍などデジタルコンテンツを扱うECであれば倉庫や配送すら不要です。ロングテールを取り入れない手は無いでしょう。
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ECサイトでのロングテール成功事例3選
ロングテール戦略の代表例であるAmazonを含め、成功を遂げているECサイトやオンラインサービスの事例を紹介します。
1. 圧倒的な商品数で顧客ニーズに万遍なく応える
Amazonは、年間で数点しか売れないような商品も、まとめれば主力商品に並ぶ売上げが得られることに気づき、ニッチ商品を多数揃えて利益を上げ、世界最大手のECサイトに成長しました。インターネットならではの、世界中の顧客が自由に購買できる点や販売スペースを必要としない点をうまく利用し、多種多様なニーズに合う商品を充足させ、満足度の高いサイトを築いています。
2. アマチュアでも出版可能な書籍マーケット
出版会社では従来、売上げを生み出す著者を選抜してリリースするモデルが常識でしたが、Luluでは数冊しか売れないようなアマチュア作品を多く取り揃えロングテール戦略に成功しています。
出版チャネルの提供だけでなく、作品制作から出版までできるサービスをインターネット上で提供し、アマチュアにも販売のチャンスを与えることで若い著者を発掘し、利用者増につなげました。また、注文後に印刷することで在庫に無駄が出ず、コスト削減になっています。
3. 在庫管理も不要、動画コンテンツ
世界的な動画配信サービスであるNetflixも、ロングテールで幅広い顧客からの支持を獲得しました。在庫を抱えなくて良いという動画コンテンツのメリットを活かし、一時的なヒット作品だけでなく、長く愛される作品の提供にも力を入れ他社との差別化を実現しています。
個別の作品で収益を得ているモデルではありませんが、短期間では収益化しないようなラインナップがユーザーの獲得に作用していると考えられるでしょう。
ロングテールでECを成功させるポイント
ロングテールを成功させるためには、単純に商品数を増やすだけでなく、運用のポイントを押さえる必要があります。
顧客の欲求を満たすラインナップとなるように頻度高く更新し、選ぶ楽しみを維持することで、長期的な収益につなげます。
ユーザビリティの高いページ作りと頻繁なアップデートを維持
サイト上に多数商品を放置しているだけでは売れません。顧客の利便性を考え、わかりやすさを追及した導線設計が基本になります。
またマイナー商品についても、レコメンド機能などで売れ筋と同様に訴求すると良いでしょう。常時同じ商品を表示するのではなく、個性ある商品をピックアップして表示すると目新しさが生まれ興味を喚起します。
顧客がさまざまな商品に触れ合えるように、回遊性を高めるページ作りを意識することが大事です。
サイト外でもニッチ商品を積極的に宣伝し、興味関心を惹きつける
ニッチ商品の紹介記事では、SEOを意識し、検索ユーザーの流入をねらうとよいでしょう。人気商品と比べると、検索エンジン上で勝負すべきコンテンツも多くないため対策のコスパがよいと考えられます。
さらにリスティング広告においても、ニッチなキーワードはライバルが少ないため安価で表示される確率が高く狙い目です。
在庫をスムーズに補充できる物流の仕組みが必要
多数商品を揃える際には、一度に大量の在庫を抱えると売れ残りが膨大になってしまいます。少数の在庫を常に維持できる運用が必要です。
たとえば生産して補充する工程の短縮化を試みたり、受注生産にして在庫を持たないといった工夫が有効になります。
ロングテールをビジネスに活かし、多様化する顧客ニーズに応える
人気商品に注力するという既成概念を脱却したロングテール戦略は、インターネットの普及により多くの企業にとって有効な手段になりました。
顧客一人ひとりのライフスタイルや趣味嗜好が多様化する昨今、画一的に商品を絞らず、かゆいところに手が届くきめ細やかなラインナップを揃えることは、集客や他社との差別化に効果的です。
実店舗からECサイトへ移行する事業者やECサイトでの売上げアップを狙う事業者は、ロングテール戦略を取り込んだビジネスの展開により、埋もれていた商品が持続的な戦力として強みになるでしょう。
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