ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)は、1回目の緊急事態宣言下であった2020年4〜5月、前年同月と比較して大きく既存店売上高を伸ばしました。
コロナ禍で多くの飲食店が苦しむ中、KFCはどのようにして売上高を伸ばしたのでしょうか。
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コロナ禍、ファストフード業界が好調
以下のグラフは、日本フードサービス協会による外食産業市場動向調査のデータをもとに、外食市場全体とファストフード市場との売上高を比較したものです。
ファストフード業界の売上高は、外食市場全体に比べ落ち込みが少なくなっています。特にGo To Eatキャンペーンが開始された2020年10月以降は、前年とほぼ同等の売上を維持していることがわかります。
これは、新型コロナウイルスの流行に伴う外出自粛の影響で増大したテイクアウトやデリバリーの需要を捉えたものとみられます。
なかでもKFCは、1回目の緊急事態宣言時に大きく成長している
では、ファストフード業界大手3社の既存店売上高を、前年同月比で比較してみましょう。
1回目の緊急事態宣言が発令されていた2020年4〜5月、KFCの売上高が前年と比較して30%以上増と、大きく伸びているのがわかります。
売上高自体は業界1位のマクドナルドが圧倒的で、元々の売上高の規模が異なるため単純比較はできません。
ですが、KFCが緊急事態宣言中でも前年を大きく伸ばし、最も高い成長率を記録したことは事実だといえます。
KFCの戦略は?
では、KFCはどのような戦略をとっていたのでしょうか。コロナ禍の商品開発やシステム導入について解説します。
1. 「GWパック」で緊急事態宣言下の顧客ニーズを掴んだ
KFCは、コロナ禍の顧客ニーズにうまくマッチする商品として、テイクアウト用に「まとめて買える」商品を展開しました。
緊急事態宣言下であった大型連休直前、1,500円でオリジナルチキン3ピース、Sサイズのポテト2個、カーネルクリスピー2ピース、チョコパイ2個が入った「GWパック」を発売し、大きく売上を伸ばしたといいます。
なお直近の2021年2月には、“おうち時間”応援企画として、新たに「ナゲット10ピース半額」キャンペーンを開催するなどの取り組みを続けています。
コロナ禍以前も、顧客のニーズを見極めて商品を展開していた
KFCはコロナ禍以前も、顧客のニーズを見極め、商品開発を行ってきました。
たとえば2018年には、それまで期間限定で販売していた500円のランチセットをレギュラーメニューに加えました。
マクドナルドなど競合よりも比較的価格帯が高く、記念日やイベントなどの「ハレの日」需要をつかんできたKFCですが、代わりに日常利用が伸び悩んでいたといいます。
社内からは「KFCの価値が下がる」といった反対意見も出たものの、「多くの消費者に体験してもらうことが大事」という考えからメニューの変更に踏み切り、成果を挙げたのです。
こうした取り組みを続けたことが、成長率を大きく伸ばすことに貢献したものと考えられます。
2. ネットオーダーなど、コロナ禍での利便性を向上するシステム導入
KFCでは、商品開発のみならず、コロナ禍での利便性を向上させるようなシステムを積極的に導入しています。
ネットオーダーとは
UberEatsや出前館といったデリバリー代行サービスはもちろん、自社サイトでいち早くテイクアウト予約やデリバリー注文の受付を実施しています。また、スマートフォンの公式アプリからも同様のオーダーを受け付けています。
KFCではもともと持ち帰り客の比率が約7割と高かったといい、それが緊急事態宣言下でも大きく売上を伸ばす要因となりました。
「ポチッとギフト」で、KFC商品をギフトとして贈れるように
ポチッとギフトは、メールやLINEで対象商品をギフトとして贈り、受け取った側は店舗で商品を受け取れるというサービスです。
KFCは、2015年と早くからこのポチッとギフトに対応していました。なかなか会えない相手に、オンラインで気軽にギフトを贈れることから、コロナ禍でこうしたサービスの需要は増大しています。
なお2021年2月には、同様にeギフトを贈れるサービス「giftee」にも対応しています。
ピックアップロッカー
さらに2020年10月には、「ピックアップロッカー」を南浦和店、溝ノ口店、新宿西口店、中野店の4店舗で試験導入しています。
ネットオーダーで注文した商品を店員と対面することなく受け取れるシステムで、コロナ禍の非接触ニーズを捉えようとする試みとなっています。アフターコロナの新たなニーズにも対応できるか
マクドナルドやモスバーガーと比べ、緊急事態宣言下の売上が大きく伸びたKFCですが、その後は競合の2社も売上を伸ばしているようです。
ウィズコロナからアフターコロナへと時代が移り変わる中、顧客のニーズも変化していくものと考えられます。
そうした新たなニーズにも対応できるのか、今後の動向に注目です。
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<参考>
日本フードサービス協会:外食産業市場動向調査 2021(令和3)年1月度 結果報告
日本KFCホールディングス株式会社:月次情報
日本マクドナルドホールディングス株式会社:セールスリポート
株式会社モスフードサービス:月次情報 モスバーガー既存店および全店前年同月対比実績
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