特許庁では2020年4月より、建物の外観や内装などの「意匠」を知的財産として登録・保護し、他企業による模倣を防止する取り組みを開始しています。
11月2日、この制度により、ユニクロやくら寿司の店舗など4件が初めて登録されたと発表がありました。
この記事では、意匠登録とは何か、店舗の知的財産が守られることによるメリット、意匠登録の方法について解説します。
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店舗のデザインを「知的財産」として保護できるように
企業が店舗の外観や内装のデザインに工夫を凝らす動きが活発化していることを受け、特許庁では、建築物の外観や内装を知的財産として保護し、他企業による模倣を防止する取り組みを始めました。
本来この知的財産としての登録は自動車や家電などが対象となっていましたが、今回建築物の外観や内装、さらにはアプリの画面構成などの画像も対象に定められています。
2020年4月に始まったこの制度により、4件が初めて登録されたことが、経済産業省により11月2日に発表されました。
登録された店舗は:ユニクロ、くら寿司などオリジナリティあるデザインの4件
今回登録されたのは、ユニクロPARK横浜ベイサイド店やくら寿司浅草ROX店などの4件です。
- ユニクロPARK横浜ベイサイド店(外観)
- 上野駅公園口駅舎(外観)
- 蔦屋書店(内装)
- くら寿司浅草ROX店(内装)
外観が登録されたユニクロPARK横浜ベイサイド店は、地上3階建ての山を切り崩したような斜面の形が特徴的で、屋外では遊んだり休憩したりできるスペースがあります。
一方内装が登録されたくら寿司浅草ROX店は、店内に白木で統一した木材を使ってやぐらを建て、日本の祭りをイメージした空間で食事できるのが特徴となっています。
意匠登録とは?
「意匠権」は知的財産権の一部です。意匠とは、「物品・建築物・画像」と「カタチ・模様(+色)」という2つの要素からなるデザインのことを指します。自社が創り出した意匠の独自性を特許庁に申請する「意匠登録」を行うと、デザインの生産・使用・販売などを独占でき、権利侵害者に対する差し止めや損害賠償の請求ができます。
意匠権の期間は登録した時点から始まり、出願から最長25年となっています。
申請の際「新規性」の面からも審査があるため、店舗展開を始める段階での登録が望ましいと考えられますが、今回登録された4件はどれも「新規性喪失の例外規定」が適用されています。保護する必要が認められれば、新規性のあるデザイン以外でも登録されるようです。
店舗の意匠権が守られるメリットとは
店舗のデザインを意匠登録することで、自社の店舗のブランディングを図れます。
仮に模倣をされてしまった場合でも、意匠権の法的な強制力を行使し、相手のデザインを排除できます。
過去にはデザインが酷似していることをきっかけとした訴訟も
建物の外観や内装が意匠の対象外だったこれまでの期間、似たデザインの店舗に対する訴訟も行われていました。
たとえば2015年、焼き鳥チェーン店「鳥貴族」がロゴマークやメニューよく似た焼き鳥店を営業され損害を受けたとして、近畿地方で展開している「鳥二郎」を経営する会社「秀インターワン」を相手取り、ロゴ使用禁止や約6,000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。
鳥貴族は、鳥二郎のロゴの「鳥」のフォントが鶏をイメージした鳥貴族のロゴに酷似していること、さらには鳥二郎の全品270円という価格や飲み・食べ放題コースの「2525(ニコニコ)パーティー」が、鳥貴族の全品280円や「28(にわ)とりパーティー」の模倣なのではないか、また店の内装や店員の服装についても似ていると主張しました。
鳥二郎の一部店舗は、当時鳥貴族が入居するビルの真上や真下のフロアで営業していたこともあり、以前インターネットでも「鳥貴族だと思って入ったら、鳥二郎だった」というコメントとともに画像がユーザーにより投稿され、話題を呼んでいました。
最終的には裁判長の和解勧告により、「鳥貴族とまちがわれないような看板デザインにする」ということで和解がなされたようです。
このように類似・酷似する店舗デザインの存在に頭を悩ませている企業も存在しており、今後意匠権の登録を検討する企業は増加するものと考えられます。
登録の流れは?
意匠登録手続きは、書面での手続きとインターネット手続きの2種類の方法があります。書面での手続きの流れ
以下書面による手続きの流れを解説します。
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先行意匠調査
:出願前に先行意匠調査をしなければなりません。すでに同じような意匠が登録されている際は、登録ができないだけでなく、意匠権に登録されているものを使用してしまうと、意匠権を侵害してしまうおそれがあります。
「J-PlatPat(特許プラットフォームサイト)」を使って、自分が意匠登録したいデザインがすでに登録されていないか調べてみましょう。 -
意匠登録願の作成
:意匠登録願の様式を「知的財産相談・支援ポータルサイト」からダウンロードし、同サイトの「意匠出願書類の書き方ガイド」を参照しながら、意匠登録願を作成します。
インキがにじまず文字が透き通らないA4版の用紙に印刷をします。
手書きも可能ですが、その際は黒色で明瞭に、かつ簡単に消せないように記入しましょう。 -
特許印紙を購入して指定の箇所に貼り付け
:集配郵便局などで特許印紙を購入し、指定個所に貼り付けます。
特許庁に直接意匠登録願を提出する場合は、特許庁内でも購入可能です。収入印紙では手続きができないので注意が必要です。 -
特許庁に提出
:特許庁の受付窓口に直接提出する場合は、特許庁1階の出願受付窓口に提出をします。
受付時間は平日の9時から17時までで、土日祝日・年末年始(12月29日から翌年の1月3日まで)は閉庁です。
郵送の場合は宛名面(表面余白)に「意匠登録願在中」と記載し、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便で、指定された住所へ提出します。 -
電子化手数料を納付
:書面で提出した場合には、出願日から数週間後に送付されてくる振込用紙を使って、電子化手数料として1,200円+(700円×書面のページ数)を納付します。
インターネットでの手続きの流れ
「電子出願ソフトサポートサイト」より、インターネット出願する際の準備や手順は以下の通りです。
-
電子証明書の購入
:インターネット出願をするためには、所定の認証局が発行する電子証明書を購入する必要があります。
意匠登録の場合は特許庁の電子証明書が必要です。特許庁公式サイトで確認しましょう。 -
「インターネット出願ソフト」の入手・インストール
:「インターネット出願ソフト」をパソコンにダウンロード、インストールをします。
「インターネット出願ソフト」は「電子出願ソフトサポートサイト」よりダウンロード可能です。 -
申請人利用登録
:2でインストールした「インターネット出願ソフト」を使って、特許庁へ申請人識別番号と電子証明書の組み合わせを登録します。 -
申請書類の作成
:意匠登録申請願を作成し、「インターネット出願ソフト」で入力チェック後、特許庁提出のフォーマットに変換します。 -
出願
:出願フォーマットに変換した意匠登録願を、「インターネット出願ソフト」を使って特許庁に送信(SSLを利用した暗号化通信)します。
<参照>
NHK NEWS WEB:店舗などの外観や内装も“知的財産” 意匠登録始まる
経済産業省:建築物、内装の意匠が初めて意匠登録されました
ーー電子証明書の取得
産経ニュース: 「鳥貴族」とそっくり? ロゴ使用禁止求め「鳥二郎」を提訴 大阪地裁
東洋経済新聞:「かつや」運営社がすかいらーくを訴えたワケ
知的財産相談・支援ポータルサイト:各種申請書類一覧(紙手続の様式)
独立行政法人 工業所有権情報・研修館:意匠登録出願書類の書き方ガイド
電子出願ソフトサポートサイト:電子出願(インターネット出願)をはじめる方へ
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