一貫性の原理とは、多くの人が持つ「自分の行動に一貫性をもたせたい」という考え方です。
マーケティングにおいて、一貫性の原理は応用の効く理論です。たとえば段階的に要求を大きくしていくフット・イン・ザ・ドア・テクニックや、キャッチーな宣伝で集客を行い顧客に労力を使わせるローボール・テクニックが有効なのは、一貫性の原理が働いているからです。
この記事では一貫性の原理とは何か、一貫性の原理を活用したマーケティング施策にはどのような方法があるかを紹介します。
一貫性の原理とは:態度を貫き通したいという心理
人は、やると決めたことや人に宣言したことを、一貫性をもってやり遂げるべきだという考え方を持つ傾向があります。この心理効果を「一貫性の原理(一貫性の法則)」と呼びます。
一貫性の原理は多くの人が持っている傾向であり、知らないうちに行動に影響を与えています。
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一貫性の原理が起きる理由
一貫性の原理は、社会性と簡便性の二つが挙げられます。
一貫性をもって行動することは、多くの社会で肯定的にとらえられています。そのため、こうした価値規範に沿って行動しようと考える人は少なくありません。一貫性のある行動によって、所属する社会、コミュニティにおける承認を得ることができます。
もう一つの理由は簡便性です。一貫性を持って行動することにより、行動の選択肢を広げる必要が生じず、状況に応じてどのような行動をとるかが自然と決まるようになります。
結果として、深く考えずとも生活を続けていける点は、決断というストレスの減少というメリットをもたらします。
一貫性の原理が確認できる「クッキーの実験」
人が誰かにお願いごとをするときにどのような方法で頼めば聞いてもらいやすいかを研究した実験があります。
実験の内容は、アメリカのテキサス州に住む人を対象に、「飢餓に苦しむ人の支援のためにクッキーを買いませんか。収益は貧しい人たちの食費のために寄付されます。」という内容の電話をかけるというものでした。
いきなり電話をかけてお願いを受け入れてくれた人の人数はわずか18%だったのに対し、まず初めに「ご機嫌いかがですか」と相手の調子を聞いた後にクッキーの話を持ち掛けた場合の購入率は32%にまで上がりました。
これは、自分の調子を答えることで「自分は恵まれている」と相手に認識させたのであれば、クッキーを購入しないのはおかしいという、「一貫性の原理」の心理が働いたと考えられます。
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一貫性の原理から理解できる心理:3つのテクニック
一貫性の原理は、知らないうちに人の深層心理に働く作用です。この心理をうまく利用することで、マーケティングや販売の場面で有利に商談を進めることができます。
1. フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)
一貫性の原理を利用した商談の方法の例として、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)」が挙げられます。
これは、難しい要求を相手に承諾してもらうために、まずは小さな要求を提示して承諾してもらい、段階的に要求の度合いを強めていくことで、最終的に本来の要求を相手に受けてもらうというテクニックです。
たとえば誰かにお金を貸してほしいとお願いする場合、いきなり1万円を貸してほしいと伝えても、その要求はのまれない場合が多いでしょう。
ところが、100円からお願いをはじめ、徐々に2,000円、5,000円と金額を引き上げていくと、直接お願いした場合には対応してもらえないような1万円という額を貸してもらえる場合があります。
この場合、まず最初に「お金を貸す」という行動をとらせることで、それに続く行動を一貫性の原理に基づいてコントロールしています。また、相対的に小さな要求を最初に示すことで、狙った行動をとらせている点がポイントとなります。
2. ローボール・テクニック(特典除去法)
ローボール・テクニック(特典除去法)は、最初に相手の意識を引くような好条件を提示して相手の許可をとり、その後に好条件部分を取り除く方法です。
「激安」「半額」といった好条件を示すキャッチーなフレーズで相手の興味を引き、実際に消費者が購入しようと訪問した際に目当ての商品が不在な状況を示します。
このような過程をたどることで、消費者は目当ての品を購入できない状況を前に、「せっかく来たから何か買わなければ」と考え、なにかしらの買い物をする可能性があります。
ローボール・テクニックは集客には効果の高い方法ですが、消費者側は納得がいかなかったり、だまされたと感じたりすることがあるため、複数回続けると信頼を失ってしまう可能性があります。長期的な信頼関係を構築したい場面には適さない方法です。
3. アップセル/クロスセル
アップセルとクロスセルとは、一人の顧客が購入する商品に関するビジネスの考え方で、いずれも低コストで売上アップにつながる方法です。
アップセルとは、すでに購入の意思がある顧客に対し、検討しているモデルや現在使用しているモデルよりも高額なモデルを勧め、購入に踏み切らせる方法を指します。
例えば、単価5万円のスマートフォンの購入を考えていた顧客に対し、より性能が良く高額な8万円のモデルを紹介して乗り換えてもらうことがアップセルです。
一方クロスセルとは、購入を検討している段階の顧客に対し、該当商品とは異なるものを一緒に購入してもらうことを指します。
たとえば自転車を購入した人に対し、雨避けのためのカバーや、盗難防止のチェーンロックの紹介を行い、購入する予定だったものに加えて他のものを検討してもらう機会を作ることで、クロスセルを行うことができます。
いずれも、「購入」という一度決めた行動に一貫性を持たせたい消費者の心理をうまく活用した売り込み方です。
一貫性の原理でビジネスや交渉を有利に進める2つのポイント
一貫性の原理をビジネスシーンで上手に活用できれば、交渉を有利に進めることが出来、目的を達成できる可能性が高まります。
相手にどのような行動をとってほしいかをしっかりと認識したうえで、以下の2点に注意するとよいでしょう。
1. コミットメントを促す
まずは、顧客自身に労力を割いてもらう、行動してもらうことが大切です。顧客にハードルの低い要求を受けてもらったり、サービスを理由に足を運んでもらったりすることで、その行動に一貫性をもたせたいという考えが生まれます。
結果として、購買への意識が向く可能性が高まります。
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2. 簡単な行動から提案する
顧客に行動してもらうためには、行動のハードルを下げることも重要です。
たとえば何かを購入してもらうためには、まずその商品を手に取ってもらったり、あるいはその商品のために少し考える時間をとってもらったりといったことでも効果を発揮する場合があります。
具体的には、ある商品に関連して、回答者が肯定しやすい質問を口頭でしたり、記述式のアンケートに答えてもらったりすることなどが挙げられます。その他、試供品を使用してもらうという方法もあります。
簡単な行動でも一度要求に応えると、一貫性の原理に基づき筋の通った行動をとろうとする心理が消費者の中に働きます。商品に対して肯定的な意見を持ったり、実際に商品を使用したりしたという事実により、消費者の中にはその商品を購入したいと考える人も出てきます。
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マーケティング施策でも一貫性の原理を意識
一貫性の原理は、多くの人が持っている心理です。他人から見て一貫性があると評価されたいという考えや、一度決めた方針にのっとって行動することのストレスのなさがその背景にあります。
この原理を理解すれば、商品の売り込みや交渉もスムーズに進められる場合があります。相手に対し最終的にどのような行動をとってほしいのか、最終的な目標までにいくつのステップを設けることができるのかなどを整理すると良いでしょう。
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