100円ショップは、豊富な品ぞろえと100円均一の商品を売りにした店舗です。 可愛い小物や日常で使えるものから便利グッズまで用意されており、女性の人気が高い店舗でもあります。
近年は海外にも進出し、中国や台湾、韓国、東南アジアにも店舗をを構えるようになり、これまでの経営形態から一転、新たにデータ分析を取り入れて経営に生かす100円ショップも現れてきました。 100円という比較的廉価でも利益を上げ続け、市場を拡大し続けられる戦略について、100円ショップ大手4社の事例などを比較しながら詳しく解説します。
100円ショップならではの特徴とは?
100円ショップはコンビニやスーパーとは異なる戦略のもと経営されています。100ショップだからできるビジネスモデルなども存在し、他の小売業とは一線を画す存在です。
100円ショップ大手4社と近年の需要
日本にある100円ショップ業界は、最大手のダイソーを展開する株式会社大創産業を筆頭に、セリア、キャンドゥ、ワッツの4社が広く知られています。
100円均一であるため、価格競争は起こりにくい業界です。そのため100円ショップ各社は価格以外のところで、他社との差別化に取り組んでいます。
可愛くておしゃれな商品や、機能性重視の商品、便利グッズ、各種日用品、DIYやハンドメイドに使う材料と道具など、ほしいと思ったものは大抵店舗にあり、どんなものでも安く買えるということから主婦層や若年層からの支持を集めています。
そのため、業界としては11年間拡大傾向にあり、これからも業界規模は大きくなっていくと考えられます。
一方で、昨今の原材料費や人件費、商品などの輸送費の高騰が激しく、簡単に値段を変更できない100円均一商品であるため、利益を圧迫しています。 特に人手不足による店舗での人員や製造工程での人員にかかわる人件費の上昇は今後業界にとって大きな足かせになると考えられます。
300円ショップも人気が出ている
100円ショップの競合は同業者だけでなく、300円ショップも競合企業として台頭しています。 100円ショップと基本的なビジネススタイルは変わらず、300円均一を売りにしている店舗です。
しかし、両者の根本的な違いは値段ではなく、戦略の差であるといえます。 100円ショップが便利なものを100円という安さで売るのに対して、300円ショップは100円ショップよりもワンランク上のデザイン性や統一感で商品を展開しています。
このように、両者とも安価な均一商品を販売するビジネススタイルで、対象とする消費者層も若い女性であることに変わりはありませんが、300円均一のショップは100円ショップにはない付加価値を消費者に提供しています。
100円ショップならではの特徴
100円ショップは既知の通り値段が均一であることを売りにし、消費者もそれに納得して買っているという状況が浸透しているめ、通常の小売店であれば一般的な、値引きやセールといった販売方法をする必要がありません。そのため利益率を上げる、安定させる、またセールなどの広告費がかからないというメリットがあります。
さらに百円ショップには、商品開発から市場投入までのサイクルが早いということが挙げられます。 セリアの場合、常時およそ2万アイテムを取り揃え、毎月500から700アイテムを開発し入れ替えるというシステムを構築し、消費者にとって常に新鮮に映る商品陳列に取り組んでいます。
大手3社の特徴
100円ショップは各町に一つ、大きな駅の近くには複数店舗あることも珍しくありません。街中でもよく見かける代表的な大手3社の100円ショップを、それぞれの特徴とともに紹介します。
DAISO(ダイソー)
DAISOは店舗数で業界1位を誇り、国内外に合わせて5,000店以上を構えています。日本の100円ショップ業界のパイオニアとしてビジネスモデルを確立させた企業ともいえるでしょう。
2019年にロゴを刷新し、ピンクをメインのコーポレートカラーに設定し女性客の取り込みに力を入れ始めました。また、社名の英語表記にも変更が加えられ、「DAISO」の「A」の文字を「∧」の形に変更しました。「∧」には上昇していくイメージを込め、ダイソーの利用者に対して生活の質や豊かさを向上させていくというメッセージを発信しています。
この大々的な企業イメージ戦略の変更にともなって、ホームページや各店舗の装飾も順次変更していく計画です。 アイテム数はセリアに比べて3倍以上のラインナップを用意しており、100円にこだわらず、商品によっては200円、300円で設定しているものもあります。
Seria(セリア)
セリアはDAISOに比べると店舗数が少ないですが、DAISOとは違うコンセプトでイメージを確立しています。 他の100円ショップとは違い、商品は完全に100円均一という徹底ぶりです。
セリアの商品は品質とセンスが良いという評価を受けており、デザイン性に優れている商品が多いことも特徴です。
また、DIYやハンドメイドに特化した品ぞろえに定評があり、売り場の4分の1はそういった商品構成になっているそうです。
セリアが急成長した陰には「セリア・パトロール」という購買行動をする一部の熱狂的なファンの存在があります。 このような常連客はインフルエンサーであり、SNSなどでセリアで見つけた自分のお気に入りの商品を発信しているため、大きな影響力を持っています。
CanDo(キャンドゥ)
CanDoは業界3番手につける100円ショップです。
一番の特徴はネット購入ができることでしょう。送料は無料であり、大口の注文であれば店舗に行かずとも大量に買うことが可能です。注文の際は商品ごとに最低購入個数が決まっているため、それ以上買う場合はネット購入がオススメです。
女性客の獲得に力を入れており、来店者の8割が女性であるとされます。2015年7月には「Instagram」の公式アカウントの運用を開始し、集客力向上に取り組んでいます。
100円ショップの戦略とは?
成長し続けている100円ショップ業界ですが、人件費や製造コストの上昇で現在のビジネスモデルを維持することが難しいのではないかという見方もあります。
100円ショップ各社がどのような集客を行っているのか、ご紹介します。
SNSを有効活用
SNS上には消費者が商品を購入した後の感想が並びますが、ポジティブなものネガティブなものもどちらも存在します。 商品開発の担当者はそういったSNS上の口コミを確認して、デザインの修正や商品開に活かしているそうです。
SNSを利用することでどんな商品が求められているのか、期待されているのかというニーズを把握しやすく、より消費者の求めている商品を店頭に送り出せます。
また消費者が気に入った商品などをSNSで投稿したことがきっかけで、爆発的な人気アイテムになることもあります。
以前CanDoで発売された折り畳み姿のスマホスタンドは、スマホスタンドでありながらフィギュアを座らせるのにちょうどいいとSNS上で話題となりヒット商品になりました。 この商品は事前にコレクター層のニーズを把握し、SNS上で話題になることを想定の上で開発された商品だそうです。
SNSを効果的に活用し、実際の商品開発と販売につなげた実例といえそうです。
データ分析
100円ショップではこれまで、データを用いて在庫管理をするということはしてきませんでした。 製造費を抑えるために海外の工場に発注するケースが多く、また輸送費を抑えるために船舶での輸送を多用してきたため、POSシステムなどで在庫管理をしても商品の供給が追い付かないなどの問題がありました。
最近は国内の中小企業に製造を委託したり、自社と協力企業で共同開発をしてPB(プライベートブランド)の比率を増やし、生産量と価格をよりコントロールできるようになってきました。
そのため、現在はPOSデータ活用して商品構成を店舗別、商品別で売り上げや売れ筋のデータをもとに自動的に算出するシステムを構築しています。
また、セリアでは商品ごとに「お客様支持率」というデータを算出しており、各店舗でその商品がどれだけ売れているかを数値として提供しています。 このようなデータをもとに各店舗ごとの最適な商品ラインナップをそろえ、消費者のニーズに応えています。
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それぞれの店舗の特徴をうまく活かして差別化を
100円ショップは小売店の中でも特殊な業態であり、通常のコンビニやスーパーとはまた違った戦略の下で経営されています。 100円ショップ各社は自社ならではの特徴を活かして、競合他社と差別化を行い利益を上げる努力を行っています。
近年はSNSを活用して、消費者からのフィードバックを収集し商品の改善や開発に生かすことも増えてきました。
またデータの分析を通して商品ごと、店舗ごとの売れ筋を把握し最適化することで、薄利多売のビジネスでありながらも安定的な収益を確保できています。 今後もITやインターネットなどを用いた効率化と最適化が、100円ショップ業界にどのような影響を与えていくのか、注視していく必要がありそうです。
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