ヒューリスティック(heuristic)とは、自分の経験則で考えることでおおよそ正解に近い答えを導き出す問題解決法です。
理論的な根拠はなく、必ずしも正解できるとは言い切れません。しかし、難しく考えなくてもある程度の確率で正解が導き出せるため、スピード感を持って意思決定できるのが特徴です。
飲食店や小売業においては、消費者のヒューリスティックに基づいた意思決定をうまく利用して、商品開発や広告、店舗デザインなどのマーケティングに活かせます。
本記事では、ヒューリスティックのメリット・デメリットのほか、5つのヒューリスティックの特徴やマーケティングにおける活用例を解説します。
ヒューリスティックとは
ヒューリスティックとは、自身の経験や先入観など、個人の持つ感覚に頼って判断する問題解決法です。基本的に理論的な思考は伴いません。ヒューリスティックは心理学の用語として知られていますが、マーケティングにも活用できます。例として、色に対して人々が抱くイメージが挙げられます。赤は情熱的、青は爽やか、緑はナチュラル、などです。たとえ同じ商品でも、パッケージの色の違いによって、求める品物のイメージにもっとも適した色の商品を選択する現象が多々生じます。これもヒューリスティックに基づいた判断と言えます。ヒューリスティックのメリット・デメリット
ヒューリスティックは理論的な考えを不要とするため、迅速に意思決定できるのがメリットです。頭であれこれ思考をめぐらせずに、自分の経験などに基づきもっとも最適だと判断した答えを瞬間的に導き出します。そのため脳にかかる負担が少なく、意思決定の際にストレスを感じにくい点もメリットです。
しかし、経験則や先入観に基づいているということは、判断が偏りがちになるデメリットもあります。
慎重な判断が必要な場面においては、ヒューリスティックに頼った思考は避け、時間をかけて判断を下します。
ヒューリスティックの種類と特徴
ヒューリスティックは、主に次の5種類に分けられます。- 代表性ヒューリスティック
- 利用可能性ヒューリスティック
- 係留と調整ヒューリスティック
- 感情ヒューリスティック
- シミュレーション・ヒューリスティック
それぞれの特徴を解説します。
1. 代表性ヒューリスティック
代表性ヒューリスティックとは、「〇〇といえば△△」といった、対象へ抱く代表的なイメージを意思決定の理由にする思考です。先ほど紹介した、色に対するイメージも代表性ヒューリスティックによるものです。例えば、オーガニック志向の人が食品を選択する場合、鮮やかな青色やピンク色をしたパッケージの商品よりも、緑色や茶色など、優しい色味のパッケージの商品のほうが選ばれやすい傾向があります。
これは、「緑色や茶色はナチュラルである」といった印象を抱く人が多いからです。2. 利用可能性ヒューリスティック
利用可能性ヒューリスティックとは、自分自身の印象に残っている記憶を意思決定の理由にする思考です。例えば、外食時の店選びの際に、まったく知らない店と友人がおいしいと言っていた店が隣接していた場合、後者を選択する確率が高いでしょう。これは利用可能性ヒューリスティックに基づいた判断です。
まったく知らない店についての情報を1から調べるよりも、友達から聞いた情報という記憶を想起するほうが容易なためです。
消費者の印象に強く残っているモノほど、利用可能性ヒューリスティックが働き、選択される可能性が高まります。
3. 係留(アンカリング)と調整ヒューリスティック
係留(アンカリング)と調整ヒューリスティックは、最初に認識した情報を意思決定の理由にする思考です。最初に得た情報を基準として認識することで、次の情報に対して抱く印象が変わります。アンカリングは船を固定するための錨(アンカー)から由来しています。
例えば、お弁当が2種類販売されていたとして、1つは定価の500円で販売、もう1つは普段は800円の商品が割引されて500円で販売されていたとします。同じ500円のお弁当でも、多くの人は後者のお弁当のほうがお得だと判断します。
なぜなら、後者は「もともとの値段は800円である」という情報がアンカーとなり、それよりも安い500円の値段設定に魅力を感じるようになるからです。
4. 感情ヒューリスティック
感情ヒューリスティックとは、自身の感情を意思決定の理由にする思考です。プラスの感情を持っている対象についてはマイナスの面に気付きづらいのが特徴です。洋服を買おうとしているときに、自身の好きなモデルが着ていた服と同じだと気付くと購買意欲が高まるのは、感情ヒューリスティックに基づいています。その服の素材や着心地がどうであれ、「好きなモデルと同じである」というプラスの感情が強く働きます。
逆に、「不祥事を起こした芸能人が出ているCMの商品は買わない」と判断するのも感情ヒューリスティックによるものです。
5. シミュレーション・ヒューリスティック
シミュレーション・ヒューリスティックとは、自身の経験や思い込みから架空のシナリオを作成し、それを意思決定の理由にする思考です。以前ダイエット商品を購入したものの思うような結果が得られなかった、という経験がある場合、「前に失敗したことがあるから、ほかのダイエット商品を買っても同じように失敗するだろう」と推定するのはシミュレーション・ヒューリスティックによるものです。
自身の思い込みにより結果を予想し、その結果に基づいて意思決定を行います。
ヒューリスティックのマーケティング活用例
ヒューリスティックはマーケティングにも活用できます。ここでは、利用可能性ヒューリスティック、係留と調整ヒューリスティック、シミュレーション・ヒューリスティックの3つを用いた具体的なマーケティング活用例を紹介します。
他者レビューによる購買販促
他者レビューによる購買販促は、顧客の利用可能性ヒューリスティックを期待したマーケティング手法です。SNSや口コミサイトなどへ自社商品に関する投稿が増えれば増えるほど、他の人の目に留まる確率が高くなります。その投稿を見た人が商品を選択する立場になったとき、自社商品を想起してくれれば、利用可能性ヒューリスティックにより購買に繋がる可能性が上がります。
具体的な方法として、自社の商品を購入・利用した人に、SNSや口コミの投稿をお願いするやり方があります。投稿してくれた人にはちょっとした特典などを設けると、投稿率が上げられ、より購買販促効果が高まるでしょう。
この方法は商品やサービスの利用だけでなく、店舗への来店を促すのにも効果的です。
限定セールでお得感を強調
限定セールでお得感を強調するのは、係留と調整ヒューリスティックを期待したマーケティング手法です。もともとの金額を知ったうえで、それよりも安い金額を提示されると消費者はお得感を感じます。つまりもともとの金額がわかる状態でセールを行えば、購入するかどうか迷っていた顧客の意思は購買の方向へ強く傾きます。
具体的な方法として、アパレルショップなどでよく見られる時間を限定したセールが挙げられます。「今から1時間限定で店内全品50%オフ」という告知などです。もともとの値札がそのまま残されているためお得感が確実に伝わるほか、今しかないという限定的な状況によって購買効果が高まります。
特に、確実に売り切りたい商品などがある場合は限定セールでお得感を強調すると効果的でしょう。
ネガティブな要因の回避
ネガティブな要因の回避は、シミュレーション・ヒューリスティックを期待したマーケティング手法です。消費者がネガティブなシナリオを想起したとき、その中で生じる不安を回避できる方法として自社商品をアピールします。
具体的な方法として、保険の販売が挙げられます。保険は事故や病気など、主に不測の事態に備えるための商品です。消費者が抱く「将来、病気になってしまったら金銭的に困窮するかもしれない」などというネガティブな要因のシナリオに対して、回避方法として自社商品の利用を提案します。
ヒューリスティックを活用してマーケティング効果を高めよう
ヒューリスティックは、誰もが普段の生活の中で無意識に行っている思考です。ヒューリスティックが引き起こされる状況を意識的に作り出すことができれば、自社商品を選択してもらったり、来店してもらったりする機会を増やせます。自社の顧客が、5つのヒューリスティックのうちどの思考に基づいて購買行動を起こしているかを分析することで、より有効なマーケティング方法が模索できます。口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
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