認知バイアスとは?9種類を紹介・先入観から逃れるコツ

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認知バイアスは、物事を認識、判断、思考する際に、これまでの経験や固定観念にしたがい合理的でない結論にたどり着くことや、その合理的でない考えを指します。バイアスは「偏り」を意味する単語です。

心理学において認知バイアスは多種多様な効果が知られており、その効果の多くは、日々の生活においてしばしば発生しています。

マーケティングにおいても例外ではなく、顧客のみならず企業側にも認知バイアスが発生し、誤って判断してしまったためにマーケティングで失敗してしまうという例もあります。

この記事では、認知バイアスについてや、特にマーケティングに関係がある認知バイアスの種類について紹介し、その対応策について紹介します。

認知バイアスとは

「認知バイアス」とは、簡単に説明すると認知に何らかのゆがみが生じてしまうことをいいます。

この項では、具体的にはどのような効果であるか、また認知バイアスが生じる原因としてどのようなものがあるかについて紹介します。

これまでの経験による先入観

認知バイアスは、主に認知心理学や社会心理学などの分野で用いられます。

物事を判断する際に、直感や以前までの経験に基づく先入観、または他人からの影響など、何らかの理由によって論理的な思考が妨害されることで、非合理的に判断してしまう心理現象が、認知バイアスです。

少し考えれば誤った判断であったことに気付く内容であったとしても、このような心理現象によって簡単に間違えてしまうことがあります。

個々の生活習慣などで生まれた固定観念や、不安、懸念などが認知バイアスの原因になると考えられており、認知バイアスを取り除くことは困難です。

しかし、認知バイアスが生じる可能性があることを認識し、対策を講じておくことで思い込みによる判断を少しでも減らすことができるでしょう。

認知バイアスが起こる原因

アメリカの行動経済学者ダニエル・カーネマンは、人には2つの思考システムがあることを説きました。同氏によれば、直感的に思考する「システム1」および、合理的に思考する「システム2」に分けられます。

「システム1」ではスピーディーな判断ができ、脳に対する情報処理の負荷は比較的低くなります。その一方で、非合理的に判断してしまう面があります。

他方、「システム2」は論理的な思考に使われる思考システムとされます。集中して事実を分析したり、細部を確認するために意識したりといった脳の働きが必要であり、情報処理の負荷は高くなります。

結論までの時間を要しますが、結果として合理的な判断を下すことができます。

人は日常生活の中で膨大な量の情報を処理しているため、迅速な対応ができる「システム1」を無意識に用いて直感的に情報を処理し、「システム1」で答えが出せない場合に「システム2」が最終的な決定を行います

このような背景から、思い込みやこれまでの経験から「システム1」の直感的な判断によって、認知バイアスが生じると考えられます。

主な認知バイアスとその特徴

認知心理学などでよく取り上げられる認知バイアスは、100種類以上あると考えられています。

この項では、その中でも特にマーケティングに関わりがある認知バイアスについて9つを取り上げ、紹介します。

1. ハロー効果

ある特定のものに対する評価が、全く因果関係を持たない異なるものの評価へ影響を与えることを、ハロー効果といいます。この効果にはポジティブなものとネガティブなものがあります。

タレントがCMを行う商品などがそれにあたり、ポジティブな効果であればある一点の高評価によってそれに付随する他の評価も向上しますが、ネガティブな効果はその反対となってしまうため、やはり注意が必要となります。

ハロー効果とは?意味・マーケティングに活用する際の注意点

ハロー効果は、ある事象を評価する際、その事象が持つ特徴に評価が引きずられてしまう「認知バイアス」の一つです。マーケティングなどビジネスの分野でもハロー効果は応用されており、代表的な例としては「多くの消費者に信頼されている有名人をCMに登場させる」といった手法が上げられます。評価の高い人や物を宣伝に取り入れることで、商品そのものに対する評価の向上も期待されるハロー効果ですが、ハロー効果ではある特徴が強調されるがために製品がもつ他の特徴の印象が薄らいでしまうというデメリットもあります。本記事で...


2. アンカリング効果

最初に入手した情報・数値や最も印象に残った情報・数値によって、決断が感化されてしまうことをアンカリング効果と呼びます。船が降ろすいかり(アンカー)が語源であり、その場からほとんど動けなくなってしまうことから由来しています。

例えば元々1万円の商品であったとしても、「90%オフ」の値札と共に1万円の値札を付けることで、相場を知らない人からはとてもお得に見えてしまいます。(こちらの例は景品表示法に反しているため実施してはいけません。)

アンカリング効果とは?意味やマーケティングへの活用事例を業種別に紹介

たとえば2万円の予算で掃除機の購入を考えていたときに、元値が4万円の掃除機が在庫処分のため2万8,000円で売られていたら予算をオーバーしているのにもかかわらず購入を検討してしまうことなどが挙げられます。 この場合、元値の4万円が基準となるため顧客にお得感を感じさせます。


3. コンコルド効果

これ以上投資しても損失になってしまうにもかかわらず、すでに投資してきた分を惜しむ気持ちから投資を続けてしまうことを、コンコルド効果と呼びます。

超音速旅客機「コンコルド」から由来している効果であり、埋没費用効果やサンクコストバイアスなどとも呼ばれます。

4. バンドワゴン効果

多数の人が選択している判断は、個人の判断よりも正確であると思い込むことで、より多くの人がその選択肢を選んでしまう効果を、バンドワゴン効果と呼びます。簡潔に示すと「勝ち馬に乗る」ことを表しています。

インフルエンサーによるマーケティングも、バンドワゴン効果の1種であるとされており、SNSにおける「いいね」の数が多い物ほど、良い商品であると認識される傾向があります。

5. 確証バイアス

人は自分の主張を強化するために、都合のいい情報や自分自身の思い込みを正当化する情報を集める傾向があり、これを確証バイアスといいます。

血液型占いは確証バイアスを最も強く反映させているものの1つであり、例えばA型の人全員が几帳面ではありませんが、「A型は几帳面である」といったように、先入観だけで人の性格を表してしまう場合があります。

6. 内集団バイアス

自分が所属している集団は、他の集団と比較してより優れていると位置付けてしまうことを指します。

それだけでなく、外部の集団と比較して内集団の人により好意的に接することも内集団バイアスに含まれます。

一方で、外部の集団に対して差別的に接することが問題となる場合も多くあります。

7. ピーク・エンドの法則

ピーク・エンドの法則は何かを経験した際に、最高または最低値にあたる感情のピークと、経験を終えた際の出来事によって、その経験全体の印象が決定されてしまうことを表します。

例えば大きな騒音を一定時間聞いた後に、音量が小さい騒音を聞かせた場合と、始終大きな騒音のみを聞かせたグループでは、前者のグループでより不快感が和らいだといった報告もあります。

ピーク・エンドの法則とは?店舗の接客とどう関係?活用方法を解説

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8. 後知恵バイアス

ある事象が起きた後、つまり結果がわかった後に「そのような結果になることは予想できていた」というように、さながら結果を最初から知っていたかのように、結果と自分の考えを一致させようとすることがあります。

このような心理現象を後知恵バイアスといいます。たとえ結果を知らないままであったら、確実に予想できていなかった事象が起きたとしても、このような心理現象ははたらくことが知られています。

9. 正常性バイアス

「自分だけは大丈夫だ」といった考えや、「たとえ何か起きたとしても大事ではないだろう」と考えることで、自身にふりかかる危険を過小評価し、いつも通りの生活を継続しようとします。

これを「正常バイアス」といい、例えば台風が接近しているときに外出してしまうことや、自分はひっかからないだろうと思っていた詐欺に騙されてしまうことなどが挙げられます。

このように、ニュースなどでもよく耳にするほど、正常バイアスはより強い心理現象であるとされています。

認知バイアスから逃れるためには?

認知バイアスは普段から無意識に生じていることが多い心理現象のため、単純に注意するだけでは防げません。

以下では、企業が市場で商品を販売する場合について、自分の認知バイアスから逃れるためのアイデアを紹介します。

ビジネスに限らず、大切な意思決定の場面でも応用できるでしょう。

「適切かどうか」判断の軸を持つ

より少ない労力でより多くの売上げを得ようという考えに基づき、過激な文言や、法律に抵触するような商品の紹介文で購入意欲をあおる販売手法や広告が存在します。

これらの方法を用いることで確かに売上げが伸びる場合もあります。しかし、不誠実な情報を顧客に提供することは、顧客からの信頼を失い、購入されなくなることは容易に想像できます。

長期的に見れば企業にとってデメリットでしかありません。

企業や個人の行動の目的が何であるのかを整理し、判断の基準を定め、それに従い判断を下すことで、こうした誤った方針をとるリスクを減らします。

たとえば企業が消費者向けに商品を販売する際には「顧客に対して誠意のある態度かどうか」を判断の軸に据えることで、認知バイアスによる失敗を防ぐことができます。

「因果関係は事実か」前提を疑う

商品の売上げが減少した場合に、どんな理由が考えられるでしょうか。データにあたらず「競合商品の影響である」と発想する場合、内集団バイアスの影響を受けてしまっている可能性があります。

他社の優れたサービスや品質により自社商品が選ばれないのではなく、自社商品が市場の需要にマッチしていなかったり、マッチしなくなってしまったという可能性もあります。

このように多角的に考えれば、「競合商品が存在しなかったとしても、売上げが落ちてしまった可能性」も存在します。

先入観を持たないことは難しいかもしれませんが、第一に浮かんだアイデアに先入観が混じっていないか批判的な視点で向き合えば、本来の要因を発見する手がかりとなります。

「複数の視点を知る・意見に耳を傾ける」客観的に物事を見る

認知バイアスに気づくためには客観的な視点が必要不可欠となります。客観的視点を会得するためには、最初から自分の意見が正しいと結論づけずに、反対意見や自分にとっては不都合な情報も集めることが役に立ちます。

意思決定の際には、自分一人だけで判断するのではなく、複数人の考え方に積極的に触れるようにします。

他人から意見をもらった際には無下にせず、同意できる点がないか検討することで、新たな気付きを得られることもあります。

大切な判断や期待と反する展開には、認知バイアスの存在を疑う

認知バイアスには多くの種類があり、ビジネスに影響を及ぼすものも少なくありません。ところが、自分一人の判断だけでは認知バイアスが生じていることに気づかないということもあります。誤った判断によって、ビジネスチャンスが失われてしまうこともあります。

こうしたリスクを回避するためには、軸となる価値観を定めたり、当然と思っている因果関係の根拠を再度確認してみたり、他人の意見に耳を傾けて不都合な情報にも向き合ったりといった対策があります。

認知バイアスは、人間の情報処理スピードを高めるというメリットの陰で、時折発生してしまう不都合ともいえます。大切な判断を下す際や、期待していたように物事が進まない時には、こうした人間の認知の癖について振り返り、批判的な意識を強めたり改善すべき点を探したりすると良いのかもしれません。

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