ヒューリスティックは、人間の意思決定に影響を与える心理の一つです。ものごとの全体をとらえ、論理的思考に基づいてではなく、経験や先入観から答えを導こうとする様子を指す言葉でもあります。
ヒューリスティックは、便利な手法に見えて多角的な視点を失い、重大な判断ミスを引き起こす可能性もあります。
無意識で使用しているため意識すること自体が難しく感じられますが、正しく認識すると集客のための効果的なマーケティング手法の構築や後悔のない判断につながります。
そこで本記事では、意思決定の際に使用されるヒューリスティックの種類やマーケティングでの活用例を紹介します。
ヒューリステリックとは:意思決定に影響する心理
「ヒューリスティック(Heuristic)」とは、和訳すると「経験則の」「試行錯誤的な」という意味を持つ単語です。
ヒューリスティックは、人が何らかの判断や意思決定をする時に「無意識に使用している法則や手がかり」のことを指しています。
経験や無意識の思考を判断材料とすることで、意思決定のスピードは速くなりますが、必ずしも適切な判断になるわけではないというデメリットも存在します。
人によって経験や判断材料が異なるため、同じような議題に対しても、判断結果に一定の偏りが生まれます。
ヒューリスティックの主な種類
ヒューリスティックには、判断に影響を与える思い込みの類型により、3つに分けられます。
1. 代表的ヒューリスティック
代表的ヒューリスティックは、あるカテゴリーや集団において代表的・典型的である事象を判断に利用し過大評価してしまう意思決定パターンを指しています。
たとえば、初対面の人の血液型を聞いた時に「A型だったら綺麗好き」「B型は突飛な発想をする」などと無意識判断してしまうことなどが挙げられます。
しかし実際は、「血液型によって性格が分類される事実はない」という研究結果が出ています。このように代表的な固定概念や先入観によって判断してしまうパターンが代表的ヒューリスティックです。
2. 利用可能性ヒューリスティック(想起ヒューリスティック)
別名想起ヒューリスティックとも呼ばれている利用可能性ヒューリスティックは、想起しやすい情報や、手に入れやすい情報を頼りに判断してしまうパターンを指しています。
たとえば大規模なテロ事件が起こり、ニュースで大々的に報道がされたとします。大々的に報道されたテロ事件の内容は、目にしていた人にとってはすぐに想起できる情報です。
テロが起きた地域や、似たような要素がある地域では、その他の条件にかかわらずテロが頻繁に起こるものだと認識してしまうことは珍しくありません。このような認識が生まれるのは、利用可能性ヒューリスティックが作用しているからです。
3. 係留と調整ヒューリスティック(固着性ヒューリスティック)
最初に目にした情報を手がかりにした推測が判断に影響を与える場合、この推測は「係留と調整ヒューリスティック」と呼ばれます。
たとえば同じ50万円のテレビでも、定価で50万円であるのと割引された50万円とでは、後者の方が得をしたかのように感じられる現象は、係留と調整ヒューリスティックが作用している実例です。
このように、先に示された情報が基準となり、人の判断へ影響を与えることは、アンカリング効果とも呼ばれます。
アンカリング効果とは?意味やマーケティングへの活用事例を業種別に紹介
たとえば2万円の予算で掃除機の購入を考えていたときに、元値が4万円の掃除機が在庫処分のため2万8,000円で売られていたら予算をオーバーしているのにもかかわらず購入を検討してしまうことなどが挙げられます。 この場合、元値の4万円が基準となるため顧客にお得感を感じさせます。
消費の現場に存在するヒューリスティック
ヒューリスティックの事例は、ビジネスシチュエーションでも活用できます。以下では、代表的な2つの事例を紹介します。
価格は「値引き後」であることで魅力を増す
たとえば同じ商品を同じ環境・値段で販売しているとしても、「10万円」と「20万円を特別価格で10万円」と記載されていた場合には後者が選ばれやすくなります。この時消費者の心理には、係留と調整ヒューリスティックが影響しています。
消費者の購買意欲に影響を与える施策といえますが、この活用法を導入する際には景品表示法の範囲内であるかどうかを確認することが必要です。
口コミサイトや体験者の意見
口コミサイトでは、利用者や消費者の口コミが、簡単に理解できるような形でたくさん情報が並んでいます。
必要とする情報を並び替えて確認でき、実体験にもとづく感想は、利用可能性ヒューリスティックの典型的な要素であり、口コミサイトの情報はヒューリスティックの観点からも購入判断に強く作用すると考えれます。
友人におすすめのお店を尋ねる、転職経験のある先輩に転職の話を聞いてもらうといった行動においても、ヒューリスティックが元になっています。
ヒューリスティックを活かしたマーケティング戦略
ヒューリスティックは、経験や想起しやすい情報をもとに判断することです。
こうした人間の性質を利用して、消費者に対し、ビジネスを仕掛ける側にとって都合の良い判断に導いていくことも不可能ではありません。
以下では、ヒューリスティックをマーケティングに活用する際のコツを紹介します。
1. 選択肢を3つにする
選択肢を3つ用意することで、購入してほしい商品を手に取ってもらう可能性を高めることができます。
人間は無意識に「高価な商品は品質が良い」と判断しています。また「安価な商品は質が悪い」という思い込みも持っています。
さらには「条件が複数ある場合は真ん中を選ぶのが良い」「一番良い商品を選ぶのが消費者として当たり前」と考えています。
3つの異なる価格帯の商品を並べると、中間の価格の商品と、最も高価な商品が選ばれるという現象が起こります。なぜならば、上述の思い込みにより消費者は、最も安価な商品よりも高品質でなおかつ最も高い商品よりも安く手に入る真ん中の価格帯の商品や、もっとも高価な「一番良い商品」を購入したいと考えるからです。
2. キャッチ―なイメージ(イメージ戦略)
商品について容易に想起できるなんらかのイメージを持たせ、消費者に印象付けることができれば、商品の購入を後押しすることができます。
イメージ戦略ではたとえば、ダイエットといえばあのジム、喉風邪にはあの薬、といったものが成功例となります。
CMや広告を使用してキャッチ―なイメージを持ってもらうことは、実際にダイエットをしたいときや風邪を引いた時に「そういえば」と消費者に商品を思い出させる効果があり、こうした想起は購買につながります。
この行動を呼び起こす心理は、利用可能性ヒューリスティックです。自身の経験や記憶から、シチュエーションに合致する簡単に引き出せる情報を想起し、それをもとに購買の判断を下しています。
3. ネガティブなイメージが基準となり、購入を後押し…「損を回避したい」心理にも
ある状態が続けば、望ましくない未来が訪れると聞かされた人間は、その状態を回避したいと考えるようになります。この時聞かされた「ある状態」「望ましくない状態」は、その人にとっての基準となり、解決策を選ぶ際の判断にも影響を与えます。
たとえば美肌グッズを売りたい場合には、売り場の近くにあえて「肌の状態が良くないことのデメリット」が伝わるメッセージやアンケート結果を置いておきます。これらの内容は、印象に残りやすいもの、その後も想起しやすいものであればあるほど、消費者の購入を後押しすると考えられます。
自分にとって良くない状態を回避したいとする心理は「損失回避の法則」と呼ばれます。
マーケティングに役立つヒューリスティック
ヒューリスティックは、私たちが無意識にしている判断や選択のうち、典型的なイメージや印象にのこっている物事を指標にする心理を指しています。
ヒューリスティックな判断においては、経験や記憶といった曖昧で主観的な軸が据えられるため、合理的な判断が下されないことも多々あります。
商品の販売現場では、どんなシチュエーションでヒューリスティックが作用するのか予測をすることで、売れ行きや評判に対するポジティブな影響が期待できます。事例を参考にしながら、消費者の関心領域や思考回路を想像し検証すれば、成功する戦略を見つけ出せるでしょう。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
そこで口コミラボでは、MEO・口コミマーケティングに役立つ最新ニュースをまとめた「Googleマップ・MEO最新情報まとめ」を毎月発行しています。
本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
※『口コミアカデミー 』にご登録いただくと、レポートの全容を無料でご確認いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】