9月末をもって緊急事態宣言が全面解除となり、落ち込んでいた消費傾向の回復が期待されています。
10月の小売業界ではコンビニの無人店舗出店やリモート接客など、非接触、非対面でのサービスを開始する動きが見られました。
本記事では、10月の小売業界の動向についてまとめます。
すすむ小売DX
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、小売業界では非接触と非対面、時間短縮の効率化、人件費削減などを目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)の導入が進んでいます。大手コンビニエンスストアのファミリーマートでは、10月より郵便局と駅で無人店舗の出店が開始されました。
郵便局に無人コンビニ(ファミリーマート)
ファミリーマートは、日本郵政グループと提携して、郵便局内にコンビニの無人店を開設していく方針であることが10月20日にわかりました。フォミリーマートで扱っている食料品や日用品を郵便局内の空きスペースを活用して販売する予定で、店内に設置されたカメラや重量センサーなどによって利用客が手にした商品を把握し、セルフレジで代金を支払います。
ファミリーマートは従来の店舗とは異なる場所や形式での出店によって新たな需要を開拓する狙いで、2024年末までに「無人店」を1,000店舗まで拡大するとしており、10月中に埼玉県川越市で、郵便局の第一号店を出店する予定です。
<参照>
JIJI.COM:ファミマ、郵便局に無人決済店 月内に埼玉・川越で第1号
読売新聞:郵便局内に無人ファミマ…空きスペース活用し食品や日用品販売、今月中に第1弾出店
無人決済の店舗を駅に(ファミリーマート)
ファミリーマートは東部グループの東部商事と東武鉄道とともに、東武アーバンパークライン(東武野田線)の岩槻駅へ、無人決済システムを導入した「ファミリーマート岩槻駅店」を10月12日にリニューアルオープンしました。株式会社TOUCH TO GOが開発した無人決済システムを導入したウォークスルー型の店舗では、店内に設置したカメラなどで利用客が手に取った商品などをリアルタイムに認識し、代金の支払いは出口付近の決済エリアで現金または電子マネーなどで支払います。
店舗側の人材不足解消と、人との接触機会が減らす新型コロナウイルスの感染症対策としても効果的です。
また、朝の通勤や通学時間帯では、有人店舗よりも買い物時間が短縮できるため、鉄道利用客の利便性向上のニーズにもマッチするとしています。
<参照>
流通ニュース:東武/ファミリーマート岩槻駅店に無人決済システム導入
リモート接客・AI接客で、接触軽減
アバターやAIを利用したバーチャル接客の導入が実現し始めています。人材派遣事業などを行うパソナは10月20日に、大阪大学発のAVITA株式会社と連携して、アバターを利用して画面越しに接客するサービスを開始することを発表しました。
小売業などからリモートでの接客業務を請け負い、開始3年で1,000人規模の雇用創出を目指すとのことです。
また、AIやXRなどの先端技術を提供する株式会社ワントゥーテンは、バーチャルヒューマンをアバターとした「AI接客システム」の提供を10月19日から開始し、当面は受付業務やショールームでの案内業務を中心に導入を予定しています。
これらのバーチャル接客はコロナ禍での非接触と非対面などの新しい生活様式の中で需要が増えると考えられ、人材不足の解消や人件費削減の削減にもつながります。
<参照>
日本経済新聞:パソナ、アバターで「リモート接客」 小売りなどに提供
PR TIMES:ニューノーマルでニーズが高まる【接客x AI】技術に新風、バーチャルヒューマン型AI接客システムを提供開始
スーパーマーケット・総合スーパー
「オール日本スーパーマーケット協会」「日本スーパーマーケット協会」「全国スーパーマーケット協会」が集計した270社のデータ統合したスーパーマーケット販売統計調査の9月実績速報版によると、9月のスーパーマーケット総売上高は9,735億5,222万円で既存店前年同期比1.2%増となり、8か月ぶりに増加したとのことです。また、日本チェーンストア協会が発表した全国1万1,855店のスーパーの売り上げは1兆510億円で、既存店前年同月比3.2%増となり、こちらも2か月ぶりの増加となりました。
両者ともに食品の売り上げが増えており、コロナ禍の巣ごもり需要に加えて、続いた長雨などの天候不順による野菜の高騰が影響していると考えられます。
<参照>
流通ニュース:スーパーマーケット/9月の既存店売上、8カ月ぶり前年超え1.2%増
NHK NEWS WEB:スーパー 先月の売り上げ 2か月ぶり前年上回る 野菜値上がりで
衣料品回収キャンペーン、SDGs意識(イトーヨーカドー)
セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパーのイトーヨーカドーでは、108の店舗で10月1日から24日まで衣料品の回収キャンペーンを行いました。これは持続可能な生産と消費を広めるためのSDGsを意識した取り組みで、伊藤忠商事が展開する衣料品の繊維から再生ポリエステル素材をつくる「RENU」プロジェクトとの協業によるものです。
回収対象となるのは肌着や靴下などを除く衣料品(婦人服、紳士服、子供服)で、1点回収ごとに衣料品に使える10%OFFクーポン券を受け取ることができるキャンペーンとなっています。
<参照>
日経クロストレンド:イトーヨーカ堂が初の衣料品回収キャンペーンでSDGs拡大提示
ドラッグストア
大手ドラッグストアの営業概況によると、2021年9月の既存店売り上げ前年同月比はウエルシアHDが2.3%売り上げが微増となったほかは、ツルハHDは2.3%減、コスモス薬品は1.8%減、サンドラッグは1.5%減、マツモトキヨシHDは3.0%減となったことがわかりました。一方で、全店売上高の前年同月比を見てみると、ウエルシアHDは6.1%増、ツルハHDは6.2%増、コスモス薬品は3.4%増、サンドラッグは2.1%増、マツモトキヨシHDのみ0.7%減となっています。
<参照>
流通ニュース:ドラッグストア/9月既存店売上ウエルシア2.3%増、他4社減
ウエルシアで吉野家の牛丼を販売
ウエルシア薬局では、10月1日から関東エリアでの吉野家「牛丼」販売を本格的に開始しました。ウエルシア薬局では2020年6月より14店舗で吉野家の牛丼を実験販売を行っており、その結果、ランチタイムを中心に一定数の需要が認められたため、牛丼の販売店舗を拡大し本格的に販売を開始するとのことです。
2021年内には取り扱い店を50店舗まで増やす予定です。
<参照>
株式会社吉野家:吉野家、「ウエルシア薬局」での「牛丼」販売を10月1日より本格開始
家電量販店
外出自粛による生活家電やテレワーク関連の需要がひと段落し、実店舗の売上は減収が続く一方で、家電量販店のEC事業は好調な伸びを見せています。ビックカメラ、8月期のEC連結売上1,564億円(前期比8.9%増)
10月13日発表された家電販売大手のビックカメラグループの決算短信によると、2021年8月期のビックカメラグループの連結売上高は8,340億6,000万円で、前年同期比1.6%の減少となっています。また、10月21日の日本流通産業新聞によると、連結EC売上高は1,564億円で前期比8.9%の増収となり、EC事業は2019年8月期からの2年間でその売上高を1.5倍に拡大しているとのことです。
<参照>
株式会社ビックカメラ:2021年8月期決算短信〔日本基準〕(連結)
日本流通産業新聞:ビックカメラ 21年8月期/EC売上1564億円/8.9%増収、事業成長続く
その他
コロナ禍の影響から、小売業界ではEC事業が注目されています。
その中で、ニトリが行っているVRを利用したショールームを紹介します。
ニトリ、バーチャルショールームで冬物家具を販促
家具やインテリアを扱うニトリでは、10月21日に3D技術を使用したバーチャルショールームの「デコホーム」を冬仕様にリニューアルしました。ニトリのバーチャルショールームとは、実際の店舗やコーディネートした部屋をVR撮影し、パソコンやスマートフォンなどから360度をクリックしたりドラッグしたりなどの操作で移動しながら商品を見ることができるサービスです。
気に入った商品をクリックすると詳細確認ができ、そのままオンラインで購入することも可能です。
関連記事
ニトリ「バーチャルショールーム」に冬の新商品 店舗さながらの空間、クリックして購入可能
10月に発表された小売業関連のデータ紹介
2021年9月は新型コロナウイルスの新規感染者数が減少の傾向となったことから、緊急事態宣言の10月からの全面解除が決定されました。8月に新規感染者数が過去最多となり冷え込んでいた消費動向は、緊急事態宣言の全面解除に向けて回復することが期待されます。
ここでは、各業態の9月の売り上げデータと10月に発表された小売業関連のデータを紹介します。
各業態 9月の売上動向
:チェーンストアでの総販売額は1兆510億円、前年同月比6.6%減
:コンビニエンスストアにおける既存店ベースの売上高は8,786億6,600万円、前年同月比0.6%増
:スーパーマーケットにおける総売上高は9,735億5,222万円、既存店前年同期比1.2%増
:ショッピングセンターの売上高は3,963億6,934万円で前年同月比9.0%減、2019年同月比28.3%減
:全国の百貨店の売上総額は約3,188億円、前年同月比4.3%減
:ホームセンターの売上高は2,654億円で前年同月比3,2%減
:ドラッグストアの売上高は6,018億円で前年同月比3.0%増
:家電大型専門店では3,551億円で前年同月比3.3%減
9月の商業動態統計速報/小売業は「横ばい」傾向
経済産業省は、9月の小売業の売り上げは12兆410億円で、前年同月比0.6%減少したと発表しました。
小売業の動向は、季節による調整を鑑みて、ほとんど横ばいであるとの分析結果も示しました。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除された10月以降、回復傾向に向かうのか注目されています。
<参照>
速報|商業動態統計|経済産業省
博報堂生活総研 [来月の消費予報・11月](消費意欲指数)
博報堂のシンクタンクである博報堂生活総合研究所は10月26日、「来月の消費予報・2021年11月」を発表しました。それによると、11月の消費意欲指数は47.9点で、前月比1.8ポイント増、前年比では0.9ポイント減となりました。例年11月は年末年始を控えて消費意欲指数の変動が少ない傾向がありますが、2021年は緊急事態宣言の全面解除もあってか1.8ポイントと微増になり、コロナ禍の反動によって過去5年で最高値となった2020年11月に近い数値となっています。
自由回答では、消費に対してポジティブな回答が前月から3倍近くの90件に増加し、一方でネガティブな回答は前月の211件から118件まで大幅に減少しています。消費意欲を男女別で見てみると、男性は前月比で3.6ポイント増なのに対して、女性は増減なしとなっています。
関連して、カテゴリー別の消費意向では「旅行」の回答が前月よりも38件増加しており、この増加は男性が主となっているなど、11月は男性の消費意欲の高まりが期待されます。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
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本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
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<参照>
博報堂:博報堂生活総研[来月の消費予報・11月](消費意欲指数)
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