観光庁とは、日本の観光立国の実現に向けて、魅力ある観光地の形成、国際観光(インバウンド)の振興その他の観光に関する事務を行うことを任務とする国土交通省の外局の一つです。 日本では比較的新しい省庁で、発足は平成20年(2008年)10月1日です。観光庁が設置されるまで、日本の観光政策の窓口は国土交通省の総合政策局 観光政策課が担当していました。 主な業務は
- 観光地及び観光施設の改善その他の観光の振興
- 旅行業、旅行業者代理業その他の所掌に係る観光事業の発達、改善及び調整
- 通訳案内士、地域限定通訳案内士、国際戦略総合特別区域通訳案内士、地域活性化総合特別区域通訳案内士及び福島特例通訳案内士
- ホテル及び旅館の登録 であり、主務局としてJNTO(正式名称:国際観光振興機構、通称:日本政府観光局)を配下に置いています。
観光庁発足の経緯
地域格差が問題になっていた2000年代中頃、その是正を福田政権が重点政策として掲げていました。そこで目をつけたのが観光政策でした。その頃、日本ではアウトバンドと比べてインバウンドが極端に少なかったことから「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(2002年(平成14年))や「外国人旅行者訪日促進戦略」(2003年(平成15年))が打ち出されました。これらの「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の後押しもあり、観光収入やインバウンド消費を地域格差是正の解決策として考えられたのです。 福田政権は「観光立国」を目指し、2008年(平成20年)1月29日、観光庁設置のための「国土交通省設置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同年2008年(平成20年)10月1日に国土交通省設置法の観光庁設置に係る改正部分が施行。これにより観光庁が発足しました。
JNTO(日本政府観光局)との関係
JNTO(日本政府観光局)とは、海外からの訪日旅行者(訪日外国人)を誘致する活動を行う独立行政法人の日本政府観光局のことです。前回の東京オリンピックが開催された1964年に、日本の政府観光局として発足し、その後50年間にわたって訪日外国人旅行者の誘致に取り組んできた日本の公的インバウンド専門機関です。 観光庁発足後は、JNTOは観光庁所管の独立行政法人となっています。位置づけとしては、観光政策の実動部隊をJNTOが担っています。
他国の観光庁
海外では行政機関に「観光」と名が付く国は少なくありません。例えば、スペイン・アンダルシア州の「観光スポーツ庁」のように、海外諸国では観光政策に重点を置いています。 それに対し、日本で観光振興が本格的に叫ばれるようになったのは、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(2003年)が始まった頃であり、海外諸国と比較して遅れをとっていました。それまで、日本では「観光」は産業というよりレジャーととらえる見方が強く、長いあいだ政策は後手に回ってきたという経緯があります。
観光白書
観光庁が発行する資料として重要なものが観光白書です。観光白書は、観光庁が起草・編集する白書で、今年度の観光の状況、および政府が観光分野で行った政策、そして次の年度に行う予定の政策を明らかにした観光全般に関する刊行物です。毎年、観光の状況及び政府が行った観光に関する施策を国土交通省が取りまとめ、「観光白書」として国会に報告しています。 近年ではインバウンド消費(訪日外国人の消費行動)に関する記述の割合が高くなっており、2020年の東京オリンピックに向けた訪日外国人に関する情報が数多く掲載されています。