新型コロナウイルスの感染拡大により雇用情勢の厳しさが増すなか、自民党は10月6日、雇用問題を話し合う会合を開きました。
会合では、依然として厳しい状況が続く雇用情勢を受け、雇用調整助成金の期限を、現在の12月末からさらに延長すべきという意見が多く寄せられました。
また田村厚生労働大臣は2日、雇用調整助成金について対象範囲などを縮小することも念頭に、期限の延長を検討する考えを示しています。
本記事では申請期間の延長の可能性をふまえ、改めて雇用調整助成金の対象や申請の流れについて解説します。
※11月27日追記
厚生労働省は、雇用調整助成金における特例措置の水準を、2021年2月まで維持する方針を固めました。(参考:日本経済新聞)
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「雇用調整助成金」12月以降どうなる?2021年2月末まで延長決定
自民党は10月6日、党会合を開き、雇用問題について議論を交わしました。新型コロナウイルスの収束の見通しが立たないなか、8月までの有効求人倍率が8か月連続で減少している現状をふまえ、今後の雇用に対する支援策を話し合っています。会合に参加した議員からは、雇用状況が悪化した業種で働く人が、他業種へ転職する際の支援を強化すべきといった意見が出たほか、新型コロナウイルスの影響により実施してきた、雇用調整助成金の上限額引き上げなどの特例措置の期限を、12月末から延長すべきという声も多く寄せられました。
会合では、このような議員からの声や昨今の雇用情勢をふまえ、11月中旬までに政府へ具体的に提言する方針との認識を示しています。
このほか、公明党や野党からも、来年3月末までの延長を求める声が上がっています。
この問題について田村厚生労働大臣は2日、雇用調整助成金について、対象範囲などを縮小することも念頭に、12月末までとなっている期限の延長を検討する考えを示していました。
与野党共通して延長の意見が多く上がっていることから、さらに雇用調整助成金特例措置の適用期間が延長される可能性が高まったといえるでしょう。
※11月27日追記
本会合をへて、厚生労働省は11月25日、雇用調整助成金の特例措置について2021年2月末まで現行水準のまま維持する方針を打ち出しました。
雇用調整助成金とは:特例措置で支給要件緩和・助成率引き上げ
雇用調整助成金とは本来、経済的な理由などから事業を縮小せざるを得ない事業主に対し、雇用を維持できるよう休業手当に必要な費用を助成する制度です。
新型コロナウイルスの感染拡大をふまえ、それらの打撃を受けた事業者を支援する目的で、2020年4月1日から2021年2月28日までの期間で支給要件の緩和や助成率の引き上げなどの特例措置を講じています。
対象は
支給対象となる事業主は、以下の3つの条件を満たす全ての事業主です。
- 新型コロナウイルスの影響から、経営状況が悪化し事業が縮小
- 直近1か月の生産量または売上高などの減少率が、前年同月比5%以上である
- 従業員へ休業手当を支払っている
助成対象となるのは、事業主によって雇用されている雇用保険被保険者に対する休業手当です。学生のアルバイトをはじめ、雇用保険被保険者に当てはまらない人に対する休業手当は、緊急雇用安定助成金の対象となり、雇用調整助成金と同時に申請できます。
助成額は
雇用調整助成金の助成額は、下記の式で計算します。
(平均賃金額× 休業手当等の支払率)× 区分別の助成率
「区分別の助成率」は、新型コロナウイルスによる影響を受けていることを前提に、
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主:大企業が3分の2、中小企業が5分の4
- 解雇をしていないなどの上乗せの要件を満たす事業主:大企業が4分の3、中小企業が10分の10
となっています。
中小企業の定義は以下のとおりです。
- サービス業:従業員が100人以下、または資本金が5,000万円以下
- 卸売業:従業員が100人以下、または資本金が1億円以下
- 小売業や飲食業:従業員が50人以下、または資本金が5,000万円以下
- その他:従業員が300人以下、または資本金が3億円以下
助成額の上限は、1日につき1人1万5,000円と決められています。
雇用調整助成金 申請の流れ
特例措置に伴う雇用調整助成金の支給申請に必要な書類をふまえ、申請手続きの流れから問い合わせ先まで解説します。
必要な書類
雇用調整助成金の支給申請に必要な書類は、事業主の規模によって異なります。
従業員が20人以下の小規模事業主が、雇用保険被保険者または雇用保険被保険者以外の従業員への休業手当を対象に申請する場合は、以下の8点の書類が必要です。
1〜3の書類は、厚生労働省のホームページから、手書き用またはPCでの作成用の2種類をダウンロードできます。
- 休業実績一覧表
- 雇用調整助成金 支給申請書
- 支給要件確認申立書(雇用調整助成金)
- 比較した月の売上がわかる書類(収入簿や売上簿、レジの月次集計など)
- 休業させた日時がわかる書類(シフト表や出勤簿、タイムカードなど)
- 賃金や休業手当の額がわかる書類(賃金台帳や給与明細の控えや写しなど)
- 生年月日が記載されている役員名簿(役員等がいる場合のみ)
- 振込先の口座番号やふりがなが確認できる、キャッシュカードまたは通帳のコピー(任意)
中小企業と大企業は、以下の9点の書類が必要です。
- 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書 ※初回届出時のみ
- 支給要件確認申立・役員等一覧 ※役員名簿を添付した場合は役員等一覧の記入は不要
- 休業・教育訓練実績一覧表
- 助成額算定書
- (休業等)支給申請書
- 休業協定書(労働組合がある場合は組合員名簿、ない場合は労働者代表選任書) ※初回届出時のみ
- 事業所の規模を確認する書類(既存の労働者名簿及び役員名簿でも可) ※初回届出時のみ
- 労働・休日の実績に関する書類(出勤簿、シフト表、タイムカードの写しなど)
- 休業手当・賃金の実績に関する書類(賃金台帳や給与明細の写しなど)
必要な手続き
雇用調整助成金の申請に必要な手続きの流れについて、小規模事業主のケースを例に紹介します。
1. 条件や助成率をチェック
申請する期間が、2020年4月1日〜2021年2月28日までの期間を含んでいることなど、申請内容が助成の条件を満たしているかどうかをまず確認します。
2. 休業実績一覧表を記入
「判定基礎期間」は、通常賃金締切日の期間(1か月間)と同様になります。「この期間の休業手当支払い率」は、事前に休業計画を立てた際に決めた、休業手当支払い率を記入しましょう。
雇用保険に加入している従業員を休業させた場合は、本人の氏名と雇用保険被保険者番号を記入してもらいます。さらに一人ひとり、休業させた日数や時間数、休業手当額を記入してもらうことが必要です。休業手当額は、一部の時間を休業させた場合と、1日休業させた場合の合計額を記入します。
書類株の署名欄では、今回の休業が事前に決めた内容に沿って行われたかについて、労働者代表に確認を依頼し、問題がなければ署名をしてもらいましょう。事業主と労働者代表の双方が署名することで、今回の休業の内容に関して確認したことを証明することになります。
3. 雇用調整助成金 支給申請書を記入
「4(経済上の理由に該当するかについて教えてください。)」の項目では、休業した月と前年同月の売上等を比較する必要があります。前年が適当でない場合は、2年前の同月か、1か月〜1年前の間のいずれかの月でもかまいません。
休業の規模については、休業延べ日数を従業員数の半数で割り確認しましょう。助成額の計算の欄は、先に記入した休業実績一覧表を見ながら記入します。
4. 支給要件確認申立書を記入
本書類における「役員等」とは、法人は役員、団体は代表者や理事をはじめ役員名簿等に記載がある人、個人事業主は事業主本人を指します。
書類下部の事業主の署名欄における法人番号は、本社等に通知されている13桁の番号を記載しましょう。生年月日は、個人事業主または役員等がいない場合に記入します。役員等がいる場合は、生年月日が記載された役員名簿を別途添付することが必要です。
5. 支給申請の必要書類を揃える
本記事の「必要な書類」で紹介した書類を用意しましょう。
6. 必要書類を提出し支給申請は完了
必要書類は、事業所の住所を管轄する労働局かハローワークに、郵送、オンライン、窓口を通じて提出します。郵送で提出する場合は、念のため簡易書留などの配達記録が残る手段を使いましょう。
申請期限は、支給対象期間末日の翌日から2か月以内です。例えば、8月1日から8月31日休業の申請期限は、10月30日までになります。
問い合わせ先
雇用調整助成金に関する問い合わせ先は、主に3種類あります。電話はつながりにくい場合もあるため、必ず問い合わせる前に「雇用調整助成金FAQ」を閲覧し、問い合わせなくても明らかになる疑問なのかどうか確認すると良いでしょう。
- 各各都道府県労働局、公共職業安定所(ハローワーク)
- 学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター:0120-60-3999(9:00〜21:00)土日祝日含む
- 厚生労働省公式LINEアカウント:友だち追加用リンク
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<参照>
厚生労働省:雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
厚生労働省:雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)
NHK:自民 コロナ感染拡大で雇用調整助成金の延長求める意見相次ぐ
ーー雇用調整助成金の特例措置 対象縮小も念頭に延長検討 厚労相
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