10月23日、Go To トラベル事業公式サイト内で公開されている「Go To トラベル事業 Q&A 集」において、Go To Travelキャンペーンにおける消費税や所得税などの課税の仕組みが明らかにされました。
事業者にとっては、対象となる旅行商品を販売する際、消費税がどのように課税されるのかが気になるところでしょう。
一方、消費者が注意すべきは所得税で、Go To Travelキャンペーンの支援額は「一時所得」として計上されます。この一時所得の合計額が年間で50万円を超えると課税対象となります。
これについてSNS上では、事業開始から数か月経った後に課税方法が明らかとなったことで、「後出し」だとの批判の声も上がっています。
Twitter:たびとぶ さん @tabitobu による投稿
そこで本記事では、これまで明らかになっていなかったGo To Travelキャンペーンにおける「消費税」「所得税」課税の仕組みを、図を用いながらわかりやすく解説します。
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事業者が気になる、GoToの「消費税」課税の仕組み
消費税は消費に対して課税されるものであり、当然ながらGo To Travelキャンペーンを活用した旅行・宿泊にも消費税がかかります。
ここでは、Go To Travelキャンペーンにおける「消費税」課税の仕組みをわかりやすく解説します。
GoTo対象の旅行商品を販売する場合の消費税は?:"割引"前の価格で課税
この記事では、国による旅行代金の支援をわかりやすく"割引"と表現していますが、そもそもGo To Travelキャンペーンにおける旅行代金の"割引"は、旅行会社や宿泊事業者が実施しているものではありません。
国による旅行者に対する支援を代わりに旅行会社や宿泊事業者が受領し、間接的に旅行者の旅行代金を"割引"する形となっています。
では、事業者がGo To Travelキャンペーン対象の旅行・宿泊商品を販売する場合、消費税はどのように課税されるのでしょうか。
たとえば、Go To Travelキャンペーン対象の旅行・宿泊商品22,000円(消費税込)を販売する場合、実売価格は14,300円となります。
この場合、消費税が22,000円、14,300円どちらに対して課税されるのか気になりますよね。
結論からいうと、消費税は"割引"前の価格の22,000円に対して課税されるため、消費税は2,000円となります。
これは給付金の負担者が国であり、事業者が値引きをするものではないので、「通常価格の22,000円で販売している」とみなされるためです。
事業者は旅行者から14,300円、事務局から7,700円で合計22,000円を受領するので、売上は22,000円になります。
そのうち2,000円を納付するため、事業者の売上や納税額は、キャンペーンを実施していない場合と変わりません。
地域共通クーポンを受け取った場合の消費税は?:"割引"前の価格で課税
地域共通クーポンも同じく国が間接的に支援しているものであって、対象店舗が割引しているものではありませんが、ここでもわかりやすく"割引"と表現します。
商品の代金が地域共通クーポンによって支払われた場合も、消費税は"割引"前の価格に対してかけられます。
たとえば、地域共通クーポンの取扱店舗が2,200円(消費税込)の商品を販売し、1,000円分の地域共通クーポンと現金1,200円を受領した場合、消費税は2,200円、1,200円どちらにかかるのでしょうか。
この場合は、通常販売価格の2,200円に対して課税されるため、消費税は200円となります。
これも給付金の負担者が国であり、地域共通クーポンの取扱店舗が値引きをするものではないので、「通常価格の2,200円で販売している」とみなされるためです。
事業者は旅行者から1,200円、事務局から1,000円を受領するので、売上は2,200円になります。
そのうち200円を納付するため、店舗の売上や納税額は、キャンペーンを実施していない場合と変わりません。
商品の額がクーポンの額に満たず、店舗が差額を得た場合の消費税は?
地域共通クーポンの扱いで注意が必要なのは、"お釣り"が発生したパターンです。
消費者が商品をクーポンで支払う際に、クーポンの額の方が商品の額より大きくなった場合、消費者側に釣銭を返却しないため、店舗が差額を得ることになります。
たとえば、消費者が1,000円分の地域共通クーポンを使って880円(消費税込)の商品を購入したとします。
すると1,000円-880円で、120円の差額が発生します。この120円はどう処理されるのでしょうか。
この場合は、レシート等で120円の差額が発生したことを、明確に示しているかどうかで分かれるようです。
次の2パターンが考えられます。店舗の多くはレシート等で売上の内訳を示しているでしょうから、1つ目のパターンが多いと考えられます。
1. 通常販売価格を消費者に明示した上で、クーポンとの差額を雑収入など不課税収入として経理している場合
店舗の課税売上(税抜)は通常販売価格の800円であり、80円を消費税として納付します。
2. 通常販売価格と釣銭相当額をレシート等において区分していない場合
店舗の課税売上(税抜)はクーポンの額1,000円(税込)から消費税を抜いた909円となるため、差額の91円を消費税として納付します。
消費者が気になる、GoToの「所得税」課税の仕組み
さて、事業者が注意すべき、Go To Travelキャンペーンにおける消費税課税の仕組みについて説明してきました。
一方、消費者にとっては、所得税が課税されるのかどうかが問題になってきます。
所得税は、個人の所得に応じて課税されるものです。所得の区分には、勤務先から受ける給料・賞与などの「給与所得」、事業を自ら営んでいる人がその事業から得る「事業所得」、懸賞や競馬・生命保険等で得た、労働の対価などの性質を持たない「一時所得」などがあります。
そのうち、「Go To トラベル事業 Q&A 集」内では、Go To Travelキャンペーンの支援額が「一時所得」として計上されることが説明されています。
GoTo支援額は「一時所得」:年間50万円を超えると課税対象に
Go To Travelキャンペーンを利用すると、最大で旅行代金の半額の支援を受けられます。この支援分は旅行者個人の「一時所得」として、所得税の課税対象となります。
しかし、一時所得には50万円の特別控除が適用されるため、他の一時所得と合わせても年間で50万円に届かない場合は、所得税は課税されません。
では、50万円をGo To Travelキャンペーンのみで使用するとなると、どの程度の利用が必要なのでしょうか。
Go To Travelキャンペーンで50万円の支援を受けるには、金額でいえば合計100万円の利用が必要です。また、1人1泊あたり20,000円の上限が設けられているため、人泊数でいえば25人泊(50万円÷20,000円=25人泊)が必要となります。
たとえば「26人のグループで1泊し、100万円を超える代金を折半などせずに1人が全て支払った」という場合には、1回の旅行で50万円の控除額を超える可能性はありますが、極めて稀なケースだといえます。
通常の範囲内であれば、キャンペーン利用による所得税の課税はないとみていいでしょう。
他に一時所得がある場合は注意
ただし、他の一時所得(懸賞、福引きの賞金品、競馬・競輪の払戻金、生命保険の一時金等)がある場合は、注意が必要です。
Twitter:秋山涼@税理士 さん @ryoakiyama_tax による投稿
以下の計算を行い、課税対象となるかどうか確認しておきましょう。
- 一時所得の総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(50万円)= 一時所得の金額
Go To Eatキャンペーンは:所得税は同様の扱い。「錬金術」で課税の危険
ここまで、Go To Travelキャンペーンにおける消費税・所得税の扱いを解説してきました。では、同時期に実施されているGo To Eatキャンペーンではこれらの扱いはどうなるのでしょうか。
消費者が注意すべき所得税については、Go To Travelキャンペーンと同じく「一時所得」として所得税の課税対象となることが公式サイトで明記されています。
オンライン予約であれば1回あたり10,000円分のポイント付与、食事券であれば5,000円分の上乗せが上限となっているため、Go To Eatキャンペーンについても通常の利用であれば所得税の課税はないとみていいでしょう。
ただし、鳥貴族で1品だけを注文し、1000円分のポイント付与で"儲け"を得ることで話題となったいわゆる「トリキ錬金術」など、不正利用により大量のポイントを獲得した人は課税対象になりやすいと考えられます。
一方、事業者が注意すべき消費税の詳細についてはまだ発表されておらず、定かではありませんが、おそらくGo To Travelキャンペーンの場合と同様の方式が取られると考えられます。参加する事業者は、納税までにこれらの仕組みについて理解しておくと良いでしょう。
<参照>
事業者向けGo To トラベル事業公式サイト:Go To トラベル事業 Q&A 集(10 月 23 日時点)
Go To Eatキャンペーン公式サイト:FAQ よくあるご質問
国税庁:No.1490 一時所得
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