機能性や利便性、商品価格など、消費者は商品を購入する際にさまざまな要素を総合的に判断してアイテムを選択します。
しかし数千、数万のアイテムから1つの商品を選ぶことは労力や時間をかなり要する上、適切な判断ができているのか迷ってしまうケースも発生し得ます。
本記事では選択肢が多すぎて購買意欲が低下する「選択肢過多」について、実際の例やマーケティングへの応用事例を解説します。
選択肢過多とは?
選択肢過多とは、選択肢が増えれば増えるほど選択すること自体が難しく感じられ、購入につながらなかったりストレスを感じたりしてしまう現象を指しています。
選択肢過多の実験:スーパーでのジャム試食
スタンフォード大学のマーク・レッパーとコロンビア大学のシーナ・アイエンガーの実験では、多すぎる選択肢は消費者の購買を抑制してしまうことが明らかにされました。
彼女たちの実験内容はスーパーの一角にジャムの試食コーナーを設け、ある週末では24種類のジャムを、別の週末には6種類のジャムを置いて購買行動の反応を調べるというものでした。
実験の結果、24種類のジャムを置いた週末に足を止めた顧客は59.9%、6種類のジャムを置いた週末には40.0%の顧客が足を止めて試食を実施しました。一方で24種類のジャムを置いた週末は2.8%、6種類のジャムを置いた週末では29.8%と購買行動には明らかな差が生じました。
ただしこの実験にはバイアスがあり、「正確に測定できていない」「食品に明確な好みを持っている人ほど多くの選択肢を好む」といった指摘もされています。
選択肢過多が起きやすい場面
選択肢過多が生じやすい状況はいくつかの研究で定義されており、「類似性が高い商品が多い場合」「商品の属性数が多い場合」「選択肢がカテゴリーに整理されていない場合」「選択肢ごとの類似性が高い場合」「選択のための時間が少ない場合」などが挙げられます。このうちのいくつかが選択時に重複していると、特定の属性のみに注目して判断してしまったり選択自体がストレスになって諦めてしまったりといった購買意欲の低下につながります。
一方で例外もあり、選択肢過多が起こりえる状況であっても「消費者が自身の好みを明確に把握している場合」はスムーズに選択ができます。
選択肢過多はなぜ起きるのか
選択肢が多いあまり選択自体を困難にしたり購買意欲の低下を引き起こしたりする選択肢過多ですが、そもそも選択肢が多いことがどうしてこういった事態を引き起こすのでしょか。
以下では、選択肢過多が起こる要因を紹介します。
1. 人間の記憶量の限界を超えてしまうから
残念ながら多くの人間は、全ての可能性を検討するだけの能力を持ち合わせていません。そのため人間が瞬間的に記憶できる情報は「7±2の原則」に従って5~9つまでとされています。
つまり、9つ以上の短期記憶を必要とする情報を与えられると記憶量の限界を超えてしまい顧客が疲弊してしまうため、購入そのものを拒絶してしまうことにつながるといえます。
2. 多くの中から1つを選びとるプロセスは心理的な負担を伴うから
数多くの選択肢が与えられた場合、購入後に他の選択肢と比べてしまったり、他人の評価が気になってしまい後悔したりする可能性が高くなります。
加えて他の選択肢を切り捨てなければいけないというストレスも感じやすくなり、選択自体に心理的負担を伴います。
選択肢の対象が多ければ多いほど認知的不協和と呼ばれる行動や考えの矛盾を感じやすくなるため、心理的なストレスが増長します。
3. 商品の比較検討が難しくなるから
選択肢が多いブースの方が試食する顧客が増えるのは、味見という情報収集により商品比較をするためだといわれています。
一方で選択肢が少ないブースで味見をするのは、基本的には購入をする決心ができあがっており、最後のひと押しとして商品の良さを確認する意味があります。
前者のように選択肢が多い場面では、具体的な評価項目や、あるいは味覚など五感に頼った判断基準がないと、自分の選択へが正しいのかどうかわからなくなります。
結果として、購入を決断する難易度はあがってしまいます。
選択肢過多の考えをマーケティングに活用する際のポイント
顧客が自社の商品を比較し購入を検討しやすくするためには、選択肢過多の考えをマーケティングに活かすことが求められます。
以下では、どのようにマーケティングに活かしていくのかその方法やポイントを解説します。
1. 多すぎず少なすぎない、適切な数の選択肢を設定する
前述した「7±2の原則」も示す通り、人間が自信を持って選択できる数・選択に満足できる数は5~9つとされています。この原則に基づくと、顧客に心理的負担やストレスを与えない5~9つの数字を商品の種類として展開することが望ましいといえます。
松竹梅の法則においても、「松・竹・梅」を明確に分類してサービスやキャンペーンを販促すると購買意欲を高めることにつながります。この例として、旅行の際に宿泊する部屋のグレードが挙げられます。
「安い部屋だが、部屋の狭さや景色に納得できない部屋」「予算範囲内の部屋で狭さや景色に納得できる部屋」「予算オーバーの部屋だが広さや景色に申し分ない部屋」の3つが候補として提示されると、基本的には2番目の「竹」にあたる部屋の予約率が高まります。
3つの選択肢を顧客に提示することで自分で決めたと思いこませる「顧客満足度の向上」や、真摯に向き合ってくれていると感じさせる「信頼の構築」などの効果が見込まれます。
2. 選択肢の数は多いほうが良いときもある
商品やサービスを選択する際に必ずしも選択肢過多が発生するわけではなく、選択肢過多の起こりやすい事例・起こりにくい事例が存在します。
例えばスマートフォンを買い替える際にはキャリアや機種、データ容量やパケット容量、支払い方法など選択場面が多くなります。
スマートフォンにこだわりがない人からすると選択肢が多すぎて機種変更を断念しそうになりますが、自分に適したキャリアやデータ容量を把握している人からすると選択肢の多い方が選びやすく感じられます。
このように顧客自身の好みや商品への目的がはっきりとしている場合は、選択肢が多い方が購買意欲につながる場合もあります。
また、お酒やタバコなど誰もが知識を持っているわけではない趣向品は選択肢が多い方が好まれる傾向にあります。
相手にする顧客の知識の深さ、コアな商品とメジャーな商品によっても適切な選択肢の数は異なってくるので、それぞれで選択肢の数を選定する必要があります。
売りたい商品の種類によって選択肢の数を変える
選択肢過多の現象はどの業界や商品にも起こり得ます。特に、顧客に人気が出る商品やサービスを明らかにすることを目的に、種類やサービス内容をはじめとした選択肢を増やしてしまうことは少なくありません。
しかし顧客にストレスを与えない数選定の方法や選択肢を封やすべき場面の見極めをすることで、顧客の購買意欲を損なわないマーケティングができるといえます。
選択肢過多の考えをマーケティングで活用していくには、その言葉の意味を理解するだけでなく、具体的な例についても知っておくことが重要です。
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