「資金決済」とは、お金を支払うことによって債権(お金を支払う義務)、債務(お金を受け取る権利)を解消することをいいます。
これまで資金移動業者は100万円以上の送金ができませんでした。資金決済法が改正され、送金が可能になったり、収納代行の一部が規制対象になったりするなどの変更点がいくつかあります。既存の対応の見直しや新規ビジネスに参入する際にはこれらを確認し、注意事項を理解する必要があります。今回は資本決済法改正のポイントを解説します。
資金決済法改正とは
資金決済法は「資金決済に関する法律」が正式名称です。もともと資金決済法は、情報通信技術の発達や利用者のニーズが多様化し、資金決済システムをめぐり変化していく環境に対応するために2010年4月に施行されました。
政府は大阪、関西万博が開催される2025年までにキャッスレス決済比率40%の目標を掲げており、安心・安全な決済サービスに対するニーズの高まりに応えていく必要がありました。
そして、資金移動業者の高額送金や収納代行の定義付けなどに対応するため、資金決済法改正が2020年6月5日に成立し2021年5月1日に施行されたのです。また、暗号資産に関する内容も今回の改正ポイントのひとつです。
<参照>キャッシュレスの現状及び意義商務・サービスグループキャッシュレス推進室2020年1月
資金決済法改正の施行日は2021年5月1日
「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」案が国会に提出され2020年6月5日に成立し、同法により資金決済法が改正され、2021年5月1日に施行されました。
主に、資金移動業と前払式支払手段に関する制度にそれぞれ変更点があります。
資金移動業に関しては、柔軟性のある規制が設けられ、新規参入のハードルが下がったといえます。また、前払式支払手段に関しては、利用者の保護に重点が置かれました。
背景
従来の資金決済法では100万円以下の送金のみ認められていたため、海外送金など高額送金のニーズに応えられていませんでした。
特に、海外送金は世界的にみても海外での出稼ぎ労働者の雇用や収入が増加しており、銀行を通さずに送金するなど手段も多様化しています。
世界銀行によると、2019年の出稼ぎ労働者による低中所得国への送金は、過去最大の5,480億ドルでした。また、金融庁の資料によると、資金移動業者による5万円未満の送金が件数ベースで全体の約90%を占めており(2019年3月現在)、少額送金のニーズも高いことがうかがえます。
政府はキャッシュレス化決済を進めていくなかで、これらのニーズに対応するため今回改正に至りました。
<参照>
新型コロナウイルス感染症により、本国送金が2021年までに14%減少
金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案
資金移動業者に関する規定を整備
資金移動業とは、銀行を通さずに送金や振込サービスを提供することです。従来の資金決済法では、100万円以下の取引のみ可能でした。
今回の改正法により、1つしかなかった資金移動業者が3つに区分されました。それぞれ送金限度額が定められています。
第一種資金移動業 |
100万円以上 |
許可制 |
第二種資金移動業 |
100万円以下 |
登録制 |
第三種資金移動業 |
5万円以下 |
登録制 |
内閣総理大臣の登録を受ければ、資金移動業を営めます。
ただし、第一種資金移動業の場合は、業務実施計画をまとめたうえで内閣総理大臣の許可を受けなければなりません。
コード決済サービスのPayPayでは、この改正を受けて100万円を超えるユーザーに出金等を通じて残高を調整するよう案内を出していました。これはPayPayが第二種資金移動業として登録をしているためです。
<参照>「PayPayマネー」の残高上限が500万円から100万円に“減額” 6月1日以降:改正資金決済法への対応 - ITmedia Mobile
前払式支払手段とは
前払式支払手段とは、商品券やIC型またはネット上で使えるプリペイドカードなどのことを指します。
前払式支払手段の発行者は利用者の資金を保全するために、発行保証金の供託、保全契約、信託契約などに関する情報を利用者に提供しなければなりません。
また、無権限取引(利用者の意思に反して権限を持たない第三者による取引)により生じた損失の補償等に関する情報も利用者に提供することが義務付けられました。
必要であると認められた場合、業務改善命令や業務停止命令が出される可能性があり、しっかり確認しておく必要があります。
改正のポイントは?
第一種資金移動業として認可を受けた資金移動業者は、100万以上の送金ができるようになりました。一方、収納代行に対する資金移動業の規制対象の範囲も今回はっきりと示されました。
該当する事業者は、今回の改正ポイントをもとに対応の見直しが求められます。
送金事業者は100万円以上の送金も可能になった
これまでの資金決済法上では、資金移動業者には100万円以上の送金が認められていませんでした。しかし、今回の改正法により第一種資金移動業が新たに設けられました。内閣総理大臣の認可を受けていれば、100万円以上の送金が可能です。
これにより海外送金や企業間の送金に関するビジネスが活発になることが予想され、利便性の向上に対するニーズも高まりそうです。
ユーザー間の送金も規制対象に
収納代行とは、債権者の委託を受け、債務者から代金を回収する事業のことをいいます。これまで「割り勘アプリ」は収納代行であるといわれていました。
しかし、本質はユーザー間の送金サービス(=為替取引)ということで、今回資金移動業の規制対象であることが明確になりました。
宅配業者の代金引換やコンビニの収納代行、エスクローサービス(フリマアプリなど)は従来どおり規制対象外です。
<参照>あなたのサービスは大丈夫? メルカリに学ぶ、CtoCサービスで気を付けるべき「資金決済法」の罠:「STORIA法律事務所」ブログ(1/2 ページ) - ITmedia NEWS
同額の準備を免除
資金移動業者は、送金額の100%以上を履行保証金として供託(法務局に預ける)しなければなりません。これは、資金移動業者がもし破産してもユーザーの損害を補償するためです。
しかし、今回から100万円以下の少額送金であれば、事業者がユーザーから預かったものと同額分を準備する義務が免除されました。
暗号資産(仮想通貨)との関係は?
昨今、中米エルサルバドルでビットコインを法定通貨にする法律が世界で初めて成立し、話題を集めた暗号資産も資金決済改正法で扱われています。
これまで仮想通貨と呼ばれていましたが、今回の改正法では「暗号資産」に改められました。
そして、いわゆる暗号資産カストディ業務が「他人のために暗号資産の管理をする」行為として暗号資産交換業の対象に追加されました。カストディとは投資家の代わりに資産の保管や管理することをいいます。
金融庁を参考に資金決済法改正の条文を再確認
金融庁の公式サイトでは資金決済法改正の概要や関連法令など詳しい内容が確認できます。また、政府の法令データベースサイト「e-Gov法令検索」でも条文全文が確認できます。
今回の規制対象部分を確認して、これまでとどう変わったのか点検し、今後の対策を立てる必要があります。
閣議決定日は2021年3月16日
金融庁では今回の改正に対するパブリックコメントを募集し、それに対する金融庁の考え方を公式サイトで公開しています。
たとえば第一種資金移動業の許可申請書を提出してから許可取得までに必要な日数については、約2か月以内であることが示されています。(No.8)
また、第一種資金移動業または第二種資金移動業による5万円以下(本来は、第三種資金移動業)の為替取引は可能ですが、第一種資金移動業または第二種資金移動業の規制をそれぞれ遵守する必要があると回答しています。(No.1)
<参照>「令和2年資金決済法改正に係る政令・内閣府令案等」に関するパブリックコメントの結果等について:金融庁
資金決済法改正はことし5月施行、参入ハードル低下にも
今回の改正により新規参入のハードルが下がり、より多くの事業者が資金決済サービスに参入することが予想されます。
資金移動業者の高額送金が可能になり送金取引がより活発になる一方、少額送金を活かしたいわゆる「投げ銭」サービスも活発になるのではないかと考えられています。「投げ銭」サービスでは、ネット上のライブ配信に視聴者が課金アイテムなどをプレゼントできます。(ただし、資金移動業としてのサービス提供が難しいという専門家の指摘もあります。<参照>SHOWROOMに学ぶ、資金決済法に抵触しない投げ銭サービスの作り方 | STORIA法律事務所)
新型コロナウイルスにより、物販だけでなく観光などの体験もネット上にシフトしているケースもあり、今後こういったサービスが新たな売る仕掛けづくりにもつながっていくかもしれません。
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