経済産業省は、10月3日、デジタル広告の利用基盤を提供する事業者(以下:デジタルプラットフォーマー)に適正な取引を促す法規制の対象として、GoogleとMeta(旧:Facebook)、ヤフー(Yahoo!)の3社を指定しました。
取引条件を変更する場合の事前通知や政府への報告書提出を義務づけ、立場の弱い広告主との公正な取引を促す狙いがあります。デジタル広告分野にこのような規制が拡大されるのは"世界初"とのことです(※毎日新聞参照)。
この記事では、この法規制の概要と3社が指定された背景、また規制拡大により広告主に及ぼされる影響について紹介します。
デジタル広告に"世界初"の規制、概要は?
今回の規制拡大は、令和3年2月1日に施行された「デジタルプラットフォーム取引透明化法(以下:透明化法)」に基づく措置となります。透明化法は、取引条件を変更する場合の事前通知や政府への報告書提出を義務づけ、立場の弱い広告主との公正な取引を促すものです。当初の規制対象は、ネット通販の店舗を集めた「オンラインモール」と、スマートフォンなどにアプリを提供する「アプリストア」でしたが、今年8月にデジタル広告も追加されました。
同法では、規制対象となった事業者に対し、広告主への掲載条件の開示や、条件を変更する場合の事前通知を義務づけています。さらに、広告主からの苦情・紛争を解決するための相談窓口を設置することも求めています。
対象事業者はこれらの取り組み状況について定期的に報告書を提出し、経済産業省は広告主・有識者の意見も取り入れて運営状況を評価し、必要があれば業務改善を求めます。
今回の規制拡大と併せて、デジタルプラットフォーマーの相談に応じ解決に向けた支援を行うための相談窓口が、経済産業省に設置されました。
大手3社が指定された背景
透明化法では、特に取引の透明性・公正性を⾼める必要性の⾼いデジタルプラットフォーマーを「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定し、規律の対象としています。規制の対象となるのは、自社の検索サービスやネット交流サービス(SNS)などにオンライン広告を表示させる大手事業者(国内売り上げ1000億円以上)と、自社以外のウェブサイトへのオンライン広告を仲介する大手事業者(同500億円以上)です。
今回この条件に合致した3社が、新たに規制対象となる「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定されました。
デジタル広告の国内市場規模は約2,7兆円(2021年)で、広告費全体の4割を占めます。公正取引委員会の調査によると、デジタル広告の中でも、検索連動型広告(リスティング広告)においてはGoogleとYahoo!がシェアを独占しており、ディスプレイ広告においても指定された3社が市場で独占的、または有力な地位にあるとのことです。
政府は、デジタル広告大手の強い立場が不適切な取引実態を招いている懸念があるとし、取引適正化に向けた規制に踏み切りました。
規制拡大による広告主への影響は?
デジタル広告を巡っては、広告主から「掲載のルールやシステムが一方的に変更される」「取引内容や価格基準が不透明」との苦情が寄せられていました。また、企業イメージが傷つきかねないWebサイトへの広告掲載や、不正プログラムによるクリック数増加で広告費を詐取する行為の横行も指摘されています。今回の規制拡大は、広告主のこれらの不利益の改善を狙ったものです。実際に改善されれば、広告主が不等な掲載ルールに束縛されたり、広告が不適切な場所に掲載される機会は減るでしょう。また、有事の際には相談窓口を利用できるようになります。
広告主にとっては、今回の規制拡大は良い影響が多いと言えそうです。
<参照>
経済産業省│「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」の規制対象となる事業者を指定しました
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