心理学および認知科学を利用したデザインに関連する理論ですが、提唱された初期の理論と世間で知られている現在の理論とでは内容が異なっています。
それぞれの違いに触れつつ、デザインに効くアフォーダンス理論について解説します。
アフォーダンス理論とは
アフォーダンス理論は、20世紀に生まれた新しい概念です。本来は学術的な論説でしたが、現代では実践的な理論として応用されるに至りました。
環境や経験から意味や関係性が見いだされること
アフォーダンス理論は、アメリカの知覚心理学者ジェームズ・ギブソンが提唱した理論であり、「与える」「提供する」という意味を持つ英単語であるafford(アフォード)から作られた造語をもとにしています。簡単に説明すると、過去の経験によって行動や思考が結び付けられる効果を指します。
特に、結び付けられたイメージ、思考法を指してアフォーダンスと呼称します。類例としては「固定観念」などが挙げられるケースも確認できます。
ジェームズ・ギブソンが造語とともに提唱した本理論は学術的な側面が強く、広く知られるには至りませんでした。
目的や意味がひと目でわかるもの
1988年にカリフォルニア大学サンディエゴ校の教授であるドナルド・ノーマンによって書かれた『The Design of Everyday Things』がきっかけで、アフォーダンス理論は世間に広く認知されました。
注意点として、ノーマン教授によるアフォーダンスの解説は、ギブソン教授が唱えた内容とは一部が異なっています。
ギブソン教授が提唱したアフォーダンスは、人と物との関係性そのものを示していました。対して、ノーマン教授のアフォーダンスは、人と物との関係性をユーザーに伝達するもの、あるいはヒントを示すものであるとされました。
たとえば衣類をしまうための和式タンスや洋式キャビネット、あるいは押し入れ収納用のケースを見た人は基本的に、手前に引き出すことで開けることができるものであると認識します。
これは、引き手がついているためです。この状況においては、引き手がアフォーダンスになっています。
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アフォーダンス理論の例
アフォーダンス理論は日常のあらゆる場面で利用されています。ノーマン教授が広めたアフォーダンス理論を活用している実例について、複数紹介します。
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1. 分別のごみ箱
駅やコンビニには、公共のごみ箱が設置されています。近年のごみ箱は分別を可能にするため、新聞・雑誌、かん、びん、ペットボトル、その他のごみなどで分かれているケースが多くなっています。これらのごみ箱では、ペットボトルや缶、ビンなどのごみの入れ口を各ごみに応じた形になっているものも少なくありません。こうした入り口の形状は、どこに何を入れるのかを伝えるアフォーダンスです。
ごみ箱という物体が、人間にとってごみを捨てる用途で使われていることを示しています。
2. ウェブサイトの各種テンプレート機能
ウェブサイトのアフォーダンスについて、いくつかの例を紹介します。ハイパーリンク
1. 口コミラボとは
2. 口コミラボとは
上記の二種類の文章について、下の青い文章がリンクとして別ページにつながっていると感じることは、ウェブサイトのアフォーダンスの一例です。
黒文字に下線と青文字に下線とでは、本来はどちらもアフォーダンスではありませんでした。多くのアクセスを集める大手検索エンジンを始めとしたサイト群が、青文字に下線は別ページに誘導するリンクであるという価値を与えました。長い年月がアフォーダンスを形成した事例です。
動画再生ボタン
ビデオやカセットテープが主流だった頃から、再生を示すマークは右向きの三角です。
ウェブサイトでの動画の時代となった今でも、再生のためのボタンの形状は同じです。アフォーダンスとして右向きの三角が機能しており、動画再生を望むユーザーが一目でどう操作したらよいのかわかるように、三角のボタンが配置されています。
検索バー
検索エンジンを始めとした多くのサイトに存在する検索バーも、アフォーダンスを含んでいます。左側に虫眼鏡、真ん中に入力欄、右側にボタンという配置そのものが、総体としてのアフォーダンスを形成しました。
記入欄の薄文字の検索例やボタンの内部の検索を誘導する文言はサービスによって異なりますが、全体の配置が変わらないことで、アフォーダンスとして機能しています。
▲[口コミラボ公式サイトの検索バー]:編集部スクリーンショット
3. スマートフォンの電源オフ:スライドによる状態変化
最新技術にもアフォーダンス理論は使用されています。下記のスマートフォンの画面において、スライドによる状態の変更は文字で示唆されるとともに、スライドの道筋を示す形でのアフォーダンスを構成しています。
スライド操作については、タッチしての画面操作がポータブルなデバイスで可能になってから増加傾向にあり、ロック解除や2段階認証の一部などの多くの場面で使用されています。
また、スライドするために指を置く部分には電源マークが描かれ、本スライドによって電源のオンオフが実行できることを想起させます。スライドによるアフォーダンスの一例です。
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アフォーダンス理論を踏まえ、わかりやすいデザインを
アフォーダンス理論を理解することは、ユーザーの側に立った良質なデザインやマーケティング施策につながります。情報の受け取り手のストレスを減らすことで、企業や組織のメッセージがより広い対象に伝わることもあるでしょう。
特に新たなデザインで機能を提供する場合は、ガイダンスをさしはさむ必要があります。
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