昨今のホテル業界では、低賃金や、長時間労働、不規則な就業体系などの理由から、他のサービス業と同様に離職率が高く、人材確保が大きな課題となっています。
そのため、近年では、限られた人員をより効率的に適切な配置で活用するためのIT化が注目されています。
本記事では、IT化の取り組みの一つであるRPAについて、その概要やホテルにおいて導入が可能な業務、導入事例を紹介します。
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RPAとは
RPAは、Robotic Process Automationの頭文字をとったもので、ロボットによる業務の自動化を意味します。
パソコン上のソフトウェアを利用して業務の削減、効率化することを目的として幅広い業界で導入されています。
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RPAを導入する理由
RPAを導入することで単純かつ定型的な業務は自動化できるため、人手不足と長時間労働の解決に役立ちます。
パソコンを利用した業務のうち作業プロセスや判断基準が決まっているものは、たとえ膨大なデータ処理でも、RPAの導入により自動化できます。
RPAの導入で定型業務を自動化することで、従業員への時間的、心的負担を大幅に軽減でき、従業員をより創造的な業務や、経験や判断力が必要な業務に割り当てることができます。
RPAとAI・IoTとの違い
RPAは定型業務の自動化に向いており、人間が指示した判断基準や手順通りに作業をこなします。
AIとは、膨大な量のデータから、学習を通して独自の判断基準を発見し柔軟に判断を下すことができます。
また、RPAでの作業にAIによる判断基準を用いることで、自律的な判断を伴う作業をさせることも可能です。
IoTとは Internet of Thingsの略で、様々な物に通信機能を搭載して情報の送受信を行います。
膨大な量のデータを収集することができ、それらの処理をAIで行うことで組み合わせて活用することもできます。
RPA導入が可能なホテル業務
RPA導入により、日々行う業務の効率化と負担軽減に大きな効果が期待できます。
以下では、ホテル業務の中でRPAの導入が可能な例として予約管理業務と会計・経理業務を紹介した上で、導入における問題点を解説します。
1. フロントの予約管理
ホテル業界においてRPAが効果的に導入できる業務として、予約管理が挙げられます。
日々の予約管理業務では自社の予約サイト、インターネット上の予約サービス、電話、FAX、メールなど様々な媒体からの予約を統合して管理する必要があります。
電話、FAX などの予約は手動で入力する必要がありますが、それ以外の予約、キャンセル、連泊の管理や、空室状況の集約、部屋割当の最適化にはRPAの活用が期待できます。
RPAで自動的に処理できないものの調整や最終確認を人間の手で行うだけで済むため、日次業務の負担を大幅に軽減できます。
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2. 会計・経理業務
作業量の多さゆえに手間のかかる業務として、会計・経理業務が挙げられます。
RPAを活用することで、請求書のデータ化、システムへの入力、内容の転記などの定型業務から開放されるため、導入が進んでいます。
これらの業務は人間の手で紙媒体の請求書をスキャナーにかけるだけで、残りの処理はRPAが自動的に実行します。
また、経費精算における上司の承認システムの自動化に役立った事例もあります。
RPAの導入により、設定されたルールに沿って申請された経費の内容に不正や無駄な出費がないかを確認し、自動的に承認を下すことができるようになりました。
RPAの導入は、作業の手間やミスの減少に効果を発揮するほか、例外時や特殊な場合のみ人間が対応すれば済むようになり、限られた人員で効率的に業務を遂行するうえで役立ちます。
RPAのホテル業務への導入で注意したいこと
RPAを導入するためには、専門の業者への委託や専用ツールの購入、使用料などの予算と、RPAが適切に作動しているかを管理する人員の確保をする必要があります。
中小規模のホテルにとっては導入にかかるその予算と労力の確保が難しいケースもあります。
また、ホテル業界の場合には、対面でのサービス提供や利用者へのきめ細かな個別対応が中心業務となるため、定型業務の割合が比較的少ない傾向にあります。
RPA導入による費用対効果や、効率的な導入方法を十分に検討することが大切です。
さらに、RPAは非常に便利でもたらす効果の大きいシステムであるからこそ、停止してしまった時の影響も大きいと考えられます。不具合時の対応なども事前に想定しておくことが大切です。
ホテルがRPAを導入した事例
単純な事務処理の効率化に効果を発揮するRPAは、ホテル業界でも導入が進んでいます。
以下では、2つのホテルにおける導入事例について紹介します。
会計処理を200時間削減（リーガロイヤルホテル）
ロイヤルホテルは、運営するリーガロイヤルホテルでの会計処理業務にRPAの導入をし、会計処理にかかる時間を一か月あたり200時間削減することに成功しました。
RPAを導入するうえでは、複数社のシステムの比較や試験導入の実施、社内システムとの親和性や導入による効果の検証がされました。
RPAの導入は、大量のデータ処理を行う単純作業の効率化に最適です。
社内の複数の部門や旅行代理店などとの金銭のやり取り、1,000室を超える客室を利用する顧客との間に発生する会計処理には膨大な時間がかかっていましたが、RPAの導入で大幅に業務の効率化が進みました。
現在では、会計処理以外にも合わせて29項目の業務をRPAへと置き換えており、さらに活用の場を広げています。
売り上げ計算を月間22時間削減（芝パークホテル）
業務フローの見直しの過程でRPAを導入し、効率改善につながった事例もあります。
芝パークホテルでは、業務の中で日々当たり前に行っていたことが、実際には自動化できるものであったという気付きから、RPAの導入に至りました。
同社では2か月で計4つのシステムを作成・導入し、その一つが日別売上データの収集業務です。
売上金管理システムのデータと現金に差異が無いか、施設内のすべての箇所を照合し、売上の内訳データをエクセルに転記する作業をすべて自動化しました。
これまで手作業で行っていた業務から開放されたことで、同社では一か月あたり22時間の工数削減につながりました。
RPAを導入してホテル業務の効率化を
RPAの導入は、事務作業を担当する従業員の負担軽減とコスト削減のために、ホテル業界でも進められています。
人手不足が顕著なホテル業界においては、自動化できる業務をRPAに置き換え、人間ならではの柔軟さが求められる接客などの業務に十分な人員を割り振ることが、業務効率化に有効といえます。
また、単純作業をRPAに任せることで、長時間労働の抑制や生産性の向上にもつながり、ホテル従業員の働き方改革にも一役買うことが期待されます。
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