アンカリング効果とは、最初に与えられた印象的な情報や数値がその後の意思決定に影響を与えることを指します。
アンカリング効果を理解すると、接客だけでなく価格の表示方法や営業の仕掛け方を工夫できます。
本記事では、アンカリング効果をエステサロンやネイルサロンで活用する方法やポイントを解説していきます。
アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、最初に与えられた情報や数値によって意思決定が引っ張られてしまう現象のことを指します。人は情報が十分に揃っていないのに決断をしようとすると、特定の情報や数値を重視しすぎてしまうようになります。
ここでは、アンカリング効果について解説します。
人間の心理的傾向「アンカリング効果」
アンカリング効果は、船が一旦いかり(アンカー)を降ろしてしまうと、その場所から動けなくなってしまうことに由来して作られた言葉です。
顧客としては知りたい情報や必要な情報が揃っていない場合、特定の情報の断片を重視する傾向があるため、経済学や心理学で利用されています。
アンカリング効果を説明する有名な実験
アンカリング効果を証明するのに、有名な実験があります。この実験では 2つのグループに国連における「アフリカ」の割合を質問し、回答してもらいます。質問する際に、 2つのグループにはルーレットで出ただけの根拠のない数字(10%と65%)を提示します。ただし、回答者も数字に「根拠がない」ことは分かっています。 Aグループには「国連でアフリカ諸国が占める割合は65%よりも高いかそれとも低いか?」「では、国連でアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?」と質問します。
2つ目の質問で具体的な数字を聞くと、平均の数字は45%となりました。
Bグループには「国連でアフリカ諸国が占める割合は10%よりも高いかそれとも低いか?」「では、国連でアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?」と質問すると、 2つ目の質問で平均25%と回答しました。
この実験によって、根拠がない数字や情報によっても答えが左右されてしまうことが分かりました。
アンカリング効果をエステサロン・ネイルサロンの現場で活用する方法
技術や口コミが集客や顧客のリピート率に直結しやすいエステサロンですが、この業界でもアンカリング効果の活用例が見られます。ここではアンカリング効果をエステサロンや、ネイルサロンで有効的に活用する方法を紹介します。
自店舗よりも高い価格を先に伝える
1つ目のポイントは、プランの説明の際に、自店舗よりも高い価格を先に伝えることです。さらに、競合店の価格や大手チェーンの平均相場などを先に伝えて、自店の価格がそれよりも安価であること、あるいは同額であっても品質がさらに上であることを伝えることができれば、顧客はその数字と比較し、店舗の提供価格に納得感を覚えます。
具体的には、先にサービスの平均相場である8,000円を先に伝えた後、同じサービスを自店舗では5,000円で購入することができると伝えると、よりお得に感じてもらえやすくなります。
手の届かないコースを先に伝える
ハードルの高い要求から伝える手段は、前述した不動産の契約のように最後のプランに狙いを定めて購入してもらいたい場合に役立つ手法です。エステサロンやネイルサロンでは、顧客は数万円を使うことを前提にしているものの、頭の中では予算の上限を決めています。予算以上のメニューを示されることでそのプランの価格が基準となり、それ以降に示されるプランを相対的に安いと感じるようになります。
エステサロンやネイルサロンは、予算が許すならば上質なものを手に入れたいという考えが強い商品カテゴリといえます。結果として、当初決めていた予算よりも少し上の価格のプランを利用することも考えられるでしょう。
一方で、アンカリング効果と異なるテクニックで、購入や実現のハードルが低いものからサービスの利用や商品の購入につなげていく手法と、その背景を論理的に説明した一貫性の原理やローボールテクニックなども存在します。
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二重価格表示にならないよう注意
大きな数字を引き合いに出すことや、割引率を高く見せる広告手法は効果があると述べてきましたが「二重価格表示」には細心の注意を払う必要があります。二重価格表示とは商品やサービスを提供するときに実際よりも著しく有利であると顧客に思わせる表示のことを指します。「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律の第4条第1項第2号で定められており、消費者庁のガイドラインを確認する必要があります。
たとえば「通常価格25,000円、割引率50%OFF、販売価格12,500円」と表記して商品やサービスを販売している場合、以前に25,000円で販売した実績がなければ、根拠のない自社旧価格を比較対象とした二重価格表示だとみなされてしまいます。
「同一ではない商品の価格を比較対照価格として表示する」ことや「比較対照価格について実際と異なる表示やあいまいな表示」をしてしまわないように、価格の掲示に注意を払わなければなりません。
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アンカリング効果のその他事例
心理学や経済学の領域で有効とされるアンカリング効果は、マーケティング以外にも幅広く活用できます。ビジネスや日常生活におけるケースを紹介します。
1. 電気屋の価格表示
価格表示を工夫するだけで、顧客の消費行動に影響を与えられます。
たとえば、テレビを以下のような方法で2つ掲示していきます。1つは「80,000円」、もう1つには「100,000円の20%オフ→80,000円」と掲示します。すると多くの人は後者を安いと感じ、前者よりも購入する確率が高くなります。
これは値引き前の100,000円という価格が基準(アンカー)となり、80,000円という価格が歪められて認知されることで起こる現象です。
2. 不動産屋の物件紹介
一番契約したい部屋に顧客を誘導させるために、不動産の物件紹介でもアンカリング効果を使用するケースが多数あります。顧客に物件を紹介するときに予算オーバーの高額な物件、予算内だが条件の悪い物件、条件に当てはまるそこそこの物件の順番で顧客に提示します。すると顧客は無意識のうちに①②の物件が基準となり、③で契約が成立しやすくなります。
このような施策は「松竹梅の法則」とも呼ばれるもので、物件を即決してもらいたいときや、1番契約して欲しい物件が明確なときに利用されます。
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3. 待ち合わせに遅刻
マーケティングや仕事の面以外に、普段の待ち合わせでもアンカリング効果を利用できます。AさんとBさんが待ち合わせをしているときに、Bさんから「1時間遅れる」と連絡があったとします。
しかしBさんは45分後に到着すると、Aさんは無意識的に「急いでくれた」と認識するのです。もし1時間と言われていて、1時間半遅刻していたら怒っていたと思われるかもしれません。
この違いは、1時間という遅刻の目安が無意識的に基準となっていたことによるアンカリング効果といえます。
ポイントを抑えてアンカリング効果を集客に応用
ネイルサロンやエステサロンの集客には、技術の上手さだけでなく、商品説明のためのPOPに掲載している情報やその見せ方、接客における言葉選びや話の進め方が影響しています。アンカリング効果理解し、活用することで集客やリピーターの育成にもつなげられるでしょう。価格設定においては、顧客にコースを選んでもらう際に大きい数字を並べるなどの少しの工夫で実行できます。ただし、二重価格表示に触れるほど過剰な価格の設定をしてしまうと、店舗の信用をなくしてしまうことにつながります。実際に取り入れる際には細心の注意を払い、確実に顧客獲得につなげていく堅実さも必要です。
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※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
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