企業から顧客へ直接メッセージを送れる手段として、従来はダイレクトメールが一般的でしたが、最近ではLINEなどのSNS上で1to1のやり取りができるなどコミュニケーションの形が多様化しています。
それでもなお、ダイレクトメールは企業にとって貴重なマーケティング手法です。調査によると、20~59歳男女の平均受取数は1週間に6.7通で、デジタル化が進む中、多くの企業が活用しています。
この記事では、顧客に読まれる文章作成のポイントや、シチュエーションに合わせた文例を紹介します。
顧客の関心を引く挨拶文の作り方
ダイレクトメールを手にし、最後まで目を通してもらうには、挨拶文で顧客の関心を惹くことが重要です。顧客の関心を引く挨拶文の作り方を解説します。
読みたくなるDMかどうかは挨拶文で決まる
DM(ダイレクトメール)に必ず挿入する「挨拶文」ですが、儀式的な挨拶と捉えるのは誤りです。
顧客は挨拶文が目に入った瞬間、果たして自分に関係のある内容なのか、興味が沸くお知らせなのかなどを判断します。顧客の興味関心を掻き立てたり、自社に対する親近感を高めることが挨拶文の役割といえるでしょう。
形式的な文章では印象に残らないため、ラブレターのように気持ちが伝わる文章で、読み手の心を掴みます。
挨拶文で重要なポイント5つ
挨拶文を書く際は、以下の点に注意すると完成度が高くなります。
一人ひとりに当てたメッセージであるように書く
売り込みをせず、悩みへの共感や親しみのある話題から入る
特別感やお得感のある言葉を入れる
文字サイズやカラー、デザインなどを工夫して読みやすくする
全文面もしくは一部を手書きにする
顧客の個人名を冒頭や文中に差し込んだり、「あなた」と呼びかけて書くと、自分に向けられたメッセージだという意識が強くなります。逆に、無差別に送られていると感じた場合は興味が沸かず、離脱の可能性が高くなります。
DMの目的は、売ることではなく読んでもらうことです。商品やサービスを紹介する内容でも、顧客が抱える悩みや関心のある話題から始め、関連づけた形で紹介すると良い流れに仕上がります。
「限定」「特別」「先着」「無料」などの文字をタイトルや文中に用いると、顧客は、逃したくない、詳細まで知りたいという心理になります。さらに、DM自体が有益なものである、と捉え、継続的に送っても読まれやすくなるでしょう。
初見で「読みづらい」と思われてしまうと、読む意欲が失われてしまいます。高齢者に送る場合などは特に文字のサイズに留意し、訴求ポイントを目立たせたり、目で追いやすい文字配置にするなど、見やすさに充分な配慮が必要です。
年賀状を受け取った時に、手書きのメッセージがあるのと無いのとでは心証が違うように、DMでも手書きの文面は心が込もっていると感じられます。読了してくれる効果だけでなく、顧客と企業の距離がぐっと縮まります。
店舗マーケティングのノウハウが無料で学べる!「口コミアカデミー」を見てみる
ターゲットや季節に合わせた例文5選
ターゲットを新規顧客、既存顧客、休眠顧客にセグメントし、それぞれに最適な文章を用意すると刺さりやすくなります。
また、季節イベントや特別な日に合わせて送ると、マンネリ化を防ぐことができるうえ、希少性が高いと感じてもらえます。
1. 新規見込み顧客の場合
見込み顧客の場合、知らない会社からのDMに対し慎重な場合もあるため、出だしで拒絶されないように礼儀正しい言葉選びが重要です。
さらに、読む必要性を感じてもらえる書き出しにします。
【文例】
- 「突然のご連絡にて恐縮ですが」と書き出し、いきなり送ることについて丁寧に断りを入れる
- 「〇〇に困っていませんか?」「△△の秘訣」のように、有益情報があると予期させるタイトルや書き出しにする
2. 既存顧客の場合
距離を縮め、商品や会社のファンになってもらえるように、親密感を与える表現にします。
会社対個人ではなく、人対人の方が親しみを感じてもらいやすいため、ショップやサロンなど直接顧客と触れ合う業態であれば担当者からのメッセージを添えると良いでしょう。顧客と交わした会話の内容などを織り交ぜると効果的です。
【文例】
「先日はご来店頂きましてありがとうございました!
新作のシャツは〇〇様にとってもお似合いでした。
洗濯してもシワになりにくい素材ですので、ぜひ着回しを楽しんでください。
裏面にスタッフおすすめのコーディネートも紹介していますので、
ぜひ参考にしてみてください。
では、また〇〇様にお会いできるのを楽しみにしています!
STAFF △△△△
P.S.
またご来店の際は、××の話を聞かせてください!」
3. 休眠顧客の場合
一定期間、来店や購入が途絶えている顧客に対しては、キャンペーン情報や来店のオファーばかりだとイメージダウンにつながります。
「最近お仕事を忙しくされていますか」「季節の変わり目ですがいかがお過ごしでしょうか」といった相手を気遣う言葉を冒頭に入れることで、抵抗感が無くなります。さらに、サービスや商品のメリットを改めて訴求し興味をもってもらえるようはたらきかけます。
時間が空いたことで来店しづらく感じる顧客もいることを考え、ウェルカムであることも伝えると安心感が生まれるでしょう。
【文例】
「前回ご来店いただいてから〇ヵ月経ちましたが、お元気でいらっしゃいますか。
気になることがございましたら、お気軽にご相談くださいね。
先日、店内を大幅にリニューアルしました。居心地よく過ごせる空間で△△様のご来店をお待ちしておりますので、ぜひ一度遊びにいらしてください。」
4. 季節のご挨拶として送る場合
季節ごとに変化する顧客のニーズにフィットした内容にすることで、共感や気付きにつながり来店意欲の醸成に効果的です。
【文例】
春:「新生活応援フェア!花粉に負けない〇〇で、気持ちよく春を過ごせます。」
夏:「夏本番はもう目の前、紫外線対策も本番です!BBQなどにぴったりの〇〇が勢ぞろいしています」
秋:「さわやかな秋晴れの日が続く行楽シーズン、お出かけに合わせて便利な〇〇を楽しむお客様が増えています。△△様もいかがですか?」
冬:「一年の締めくくりですね。リラックスタイムに〇〇で、溜まった疲れを癒していただけたら嬉しいです。」
5. 記念日など特別な日に送る場合
父の日や母の日、誕生日などにお祝いの言葉を送ったり、初来店日から1周年など顧客との関係性を祝福して送ると、サプライズ感が高まります。
【文例】
「〇〇様へ特別なお知らせ
来る△月は、〇〇様が初めて来店された記念の月。
改めてご縁に感謝し、ささやかですがプレゼントをお送りします。気に入っていただけると嬉しいです!
今後も、〇〇様のライフスタイルに寄り添えていければ幸いです。」
DMの開封率、反応率で効果がわかる
DMを送付後、どれくらいの顧客が閲覧したかや売上げに結びついたかなど効果測定し、PDCAに活かすことが大切です。顧客のアクションである「開封率」と「反応率」について説明します。
開封率と反応率の定義、目安
開封率とは、送付したDMのうち実際に開封された割合を指します。
「開封数÷総DM数」で算出可能ですが、紙の場合は開封数を把握できないため別途アンケートなどを取って確認する必要があります。データによると、自分宛に届いたDMの場合、開封率は74%程度のようです。
また反応率は、DM送付後の購入や会員登録といった具体的な顧客のアクションの割合を意味し、「反応数÷総DM数」で算出します。16.3%程度が目安になります。
レスポンスが低いDMの要因
顧客の反応が著しくない場合は、特別感が感じられなかったり、顧客側のメリットが示されていない、堅苦しい表現で読みたい気持ちに至らなかった、などが考えられます。
来店促進のためのDMであるはずが逆に敬遠されてしまう要因にもなり得るため、徹底した顧客視点の文章作成が必要です。
気持ちが伝わる文章で、来店効果を高める
ダイレクトメールは、短期的な来店や購買へも効果がありますが、長期的に店舗と顧客の関係をつなぎ、深めていく効果もあります。
手元に保管したくなるデザインで記憶に残りやすくしたり、サンプルやカタログを同封して体験を与えるなど、アナログならではの価値を発揮すると、エンゲージメントが高まります。
またDMでオンラインコンテンツを紹介したり、並行してメールを送付したりするなどクロスチャネルでアプローチすると、質の高い顧客分析が可能になり、施策を来店や購買促進に活かしやすくなります。
参照
「DMメディア実態調査2019」報告(一社)日本ダイレクトメール協会研究開発委員会