コミュニケーションデザインとは、企業と顧客間での関わり方やつながり方を設計することを指します。
ユーザーはパソコンやスマートフォンなど、さまざまなデバイスで興味のあるなしに関係なく多くの広告に常に触れています。そのため広告を届ける側である企業は、自社の広告が他社の広告に埋もれないように戦略をとる必要性に迫られています。
こういった背景から顧客とのつながり方がさらに重要視されるようになったことでコミュニケーションデザインに注目が集まっています。
本記事では、コミュニケーションデザインとは何か、実際に導入し成功した企業の例を紹介しながら、コミュニケーションデザインを導入する際に注意しなければならない点について具体的に解説します。
コミュニケーションデザインとは
顧客とのつながりをデザインするコミュニケーションデザインは、顧客に関心を持ってもたうために重要です。
コミュニケーションデザインの概要や注目される背景について、ご紹介します。
コミュニケーションデザインとは
「コミュニケーションデザイン(Communication Design)」とは、人と人とのコミュニケーションをデザインすることです。企業においては、顧客とのつながり方や関わり方など、企業と顧客とのコミュニケーションをデザインするという意味で使われます。
コミュニケーションデザインの考え方は、人の動き方やその動き方に合わせてどういった働きかけをすれば最高の出会いの場を提供できるのかを考え、最適な手法を逆算していくというものです。
このようにデザインされた複数の情報に触れた時に顧客の心が動くとされ、近年では広告業界だけでなくあらゆる企業で、目に見えない価値を顧客に伝える方法としてコミュニケーションデザインが用いられています。
注目されている背景
コミュニケーションデザインが注目されている背景に、インターネットの発達により多くの情報が発信されるようになったことが挙げられます。
インターネットの普及とスマートフォンなどのさまざまなデバイスが登場、さらに日本のみならず世界中から情報発信ができるようになったため、世界中の企業が競争相手となりました。
また、ダイレクトメールやSNSのPR広告だけでなく、AIがカスタマイズした関心度の高い情報が24時間発信され続けています。
情報があふれるこのような状況下で、企業は顧客の関心を掴むことが難しいため、顧客とのつながりや関わり方を重視する傾向が強まっています。
コミュニケーションデザインの成功事例3選
海外や日本の企業の中には、コミュニケーションデザインを取り入れ、結果として顧客とのつながり方や関わり方の構築に成功している企業や、業績の向上につながっている企業が多くあります。
1. GAP:1969 RECORDS
GAPでは、創業年である1969をキーワードに、5組のアーティストとコラボレーションしたミュージックビデオやデジタルルックブックを公開し、「1969 RECORDS」という取り組みを実施しました。このプロジェクトを通してGAPのルーツにちなんだ作品を公開し、顧客との関係の構築を目指しました。
この取り組みにおける特徴の一つとして、公開されたミュージックビデオ内では企業のロゴを押し出していない点が挙げられます。またメッセージやコンセプトを伝えるため、アーティストや楽曲の知名度に依存していない点も特徴です。
GAPの実施したこの取り組みは、短期的な注目ではなく、継続した顧客とのコミュニケーションに成功し、さらにコミュニケーションデザインの専門家からも高い評価を得ています。
2. 鶴屋百貨店:100年先も愛されるデパートへ
老舗デパートの鶴屋百貨店は、「100年先も愛される地方デパートにする」というビジョン達成のために社内におけるコミュニケーションデザインを取り入れました。
鶴屋百貨店は、顧客に向けた広告やキャンペーンは短期的な業績の向上は期待できるものの、長期的に愛される企業になることにはつながらないと考え、社内の人事改革に取り組みました。
具体的には、新しいアイデアが出せる人材育成や企画コンペの実施、社内の評価方法の改善など、社内におけるコミュニケーション改革を実施しました。
その結果、社員の意識が変わり売り場が活性化したことで、顧客からの印象が改善され集客につながっています。
3. 永谷園:食材の可能性をブランド化し、商品を売る
食品メーカーの永谷園は、コミュニケーションデザインによるWebと広告の組み合わせに成功しました。
永谷園では「『冷え知らず』さんの生姜シリーズ」という商品を展開しており、一つの食材として生姜のブランド化を進めるために、永谷園生姜部を立ち上げました。
新商品を販売する場合、広告を出して多くの人に認知してもらう方法が一般的です。
しかし、永谷園生姜部では、食材の試験農場を開設し、大学と共同研究を実施し、その結果や食材を使ったレシピをWebサイト上で公開することで、少しずつ消費者とのコミュニケーションを図っていきました。
その後、新聞やテレビなどで広告を出したことで、Webサイトへの流入もさらに増加し、多くの消費者に認知される結果となりました。
コミュニケーションデザイン作成における3つのポイント
実際にコミュニケーションデザインを取り入れる際には、事前準備や導入後の検証が欠かせません。
このトピックでは、コミュニケーションデザインを作成する際のポイントについて解説します。
1. ターゲットの策定・メディアの選定
最初に、ターゲット(ペルソナ)を設定します。
製品やサービスを購入してくれるターゲットについて、年代や性別といった大きな枠組みではなく、その人のライフスタイルや属性といった細かな部分まで策定することが重要です。
ターゲットを絞り込む過程で、販売する製品やサービスに関連する要素が浮き彫りになります。
定義しなければならない項目は製品やサービスによって異なります。
次に、メディアの選定です。
ターゲットとなる顧客層が普段よく触れているメディアを選ぶことで、より訴求効果のある情報発信が可能となります。
選定するメディアはWebメディアやSNS、スマホアプリなどに着目しがちですが、ターゲットによっては新聞や雑誌のような従来型のメディアの方が有効な可能性があります。
ほかにも電車内の広告や街中に掲載されている広告のような、家庭の外で接触する媒体である「アウト・オブ・ホーム・メディア」と呼ばれるメディアなどもあります。
2. アプローチが適切か検証
情報が溢れる現代では顧客は興味がない情報には注目せず、訴求効果が低いメッセージを顧客に公開し続けていても顧客の目に留まる可能性は低いため、顧客にアプローチする際は顧客の視点に立って訴求する必要があります。
ターゲット層に適切にアプローチするために、顧客のニーズに合ったメッセージを、顧客が受け取りやすいタイミングで届けられているかを検証することが重要です。
3. 検証結果を踏まえて修正すること
顧客とのコミュニケーションが想定した通りの効果を出しているか検証したあとには、結果を踏まえて修正を加えることが必要です。
期待よりも効果が出ない場合には、制作したものを再度確認するか、外部要因を調査するかのどちらかの方法で修正できます。
制作したものを確認する際には、ターゲティングやデザイン設計、定義付けなどが適切であったかを振り返ります。
一方、外部要因を調査する際には、自社と顧客の関係性だけではなく、競合他社の存在にも意識を向ける必要があります。
また、こうした修正は一度ではなく、繰り返すことでより高い効果が期待できます。
1つの制作物を使い続けることは顧客との間に慣れが生まれ、飽きてしまうので効果が薄れてしまいます。
長期的に顧客との関係性を構築するためには、継続して検証し最適化することが必要です。
制作物が適切であるかを検証する際には、3者を分類して考える「3C(Consumer:顧客、Company:自社、Competitor:競合社)分析」や顧客の頭の中での優位性を確保する「ポジショニング戦略」などのフレームワークが参考にできるでしょう。
コミュニケーションデザインを用いて顧客との関係を構築
コミュニケーションデザインを取り入れることで、企業と顧客とのコミュニケーションをデザインし、目に見えない価値を顧客に届けられます。
日本の企業の中にも、さまざまな方法でコミュニケーションデザインを取り入れ、顧客との関係性の構築に成功している例も見られます。
一方で、ただ導入すればいいというわけではなく、ターゲットの策定や掲載メディアの選定、導入後も適切にアプローチされているか検証し、検証結果を踏まえた修正を続けることが重要となります。
そうすることで、広告や情報が溢れる状況下でも、ターゲット層に商品やサービスの情報を的確に届けることができ、認知度の向上や業績の向上が期待できるでしょう。
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