日本経済において、市場が成熟し、商品の質や価格の差がなくなり日用品化する「コモディティ化」が進んでいます。例の一つとして、スマートフォンが挙げられます。かつてはキャリア毎に強みを活かし、デザインや機能で差別化できていましたが、今では機能や機種の差異が無くなり、契約獲得を狙った料金プラン改定が続いています。
従来に比べ、企業の技術力や情報収集力が格段に向上し、どの業界においても類似商品を生み出しやすくなりました。企業はコモディティ化された状況から脱し、自社の価値を訴求することが重要です。
本記事では、コモディティ化がもたらす影響や要因、自社商品を立たせる戦略について解説します。
コモディティ化の意味、招く影響
コモディティ化はどういう状況を指すのか、そして企業や消費者にどんな影響を与えるのかを押さえます。
コモディティ化は商品価値を下げ価格競争に陥る状態
英語の「commodity」は日用品や必需品を指しますが、ビジネスにおけるコモディティ化とは、商品が似たり寄ったりでありふれた状態になり、日用品化していることを指します。
ある商品に対する需要が高まると、他社が真似して開発や販売するようになり、市場がコモディティ化します。
こういった市場では差別化が難しく、価格競争が進み、市場規模がますます拡大する結果となります。家電商品など、規格やルールが存在する商品群や市場では特に、コモディティ化しやすい傾向です。
消費者は必要な商品を安く入手できる点でメリット
消費者の立場から見ると、コモディティ化により供給量が増えることで、どの地域でも商品が手に入りやすくなり、かつ同質の商品をより安く購入できるようになるなどメリットがあります。
企業は弱体化や経営苦境に陥る可能性がある
企業は競争優位性を保つために、新商品開発に取り組みますが、独自商品を生むためには膨大な時間とコストがかかります。
前例のない商品を編み出し、注目を集めたとしても、コモディティ化により価格競争に巻き込まれれば商品価値が下がります。
また、低価格化は収益や労働環境の悪化を引き起こし、イノベーションが起こしづらい状況を招くでしょう。
コモディティ化が起きる要因6つ
なぜ日本経済においてコモディティ化が起きやすいのか、大きく6つの要因が考えられます。
要因1. 平均思考で強みやオリジナリティが希薄化
海外に比べ日本は平均思考が高く、多くのターゲットから好感を持たれる平均値を目指すため、尖りを磨くよりも弱みを埋めることに注力しがちです。その結果、独自性や強みが薄れてしまいます。
要因2. マジョリティを重視する市場主義で画一化
多数派のニーズに応えようとする余り、市場のさまざまな情報や反応に影響を受けやすい特徴があります。本来芯とすべき独自コンセプトから逸脱してしまい、商品の画一化につながります。
要因3. 業種業態を超えた参入による供給過多
他業種の企業が参入することで市場が活性化する一面もありますが、参入企業の増加で供給が需要を超えると価格競争が置き、コモディティ化が加速します。
要因4. グローバル化により技術や製品が越境
人や資本、技術が越境する分、広範囲で均質化や画一化が進みます。また、人件費が安い新興国から低価格な類似品が入り、国内生産品は安くせざるを得ない状況になります。
要因5. メーカーのモジュール化製造で類似品が増加
新たな製品を設計する際、既存の部品やユニットを用い組み合わせる方法をモジュール化と呼びます。多種多様な部品を組み合わせることで、ユニークな商品を開発できる手法ですが、部品のコモディティ化により仕上がりが同質化する傾向にあります。
要因6. 技術の円熟化でハイスペック商品の訴求が困難
消費者が期待する使用感をはるかに超えた過剰機能の商品が溢れることで、商品のアピール力が弱くなったり、オーバースペックで消費者が使いこなせず、商品の違いを感じにくくなったりします。
コモディティ化された市場から抜け出す方法3つ
競合との差別化が難しい状況でも、3つの視点を持つことで自社ブランドや商品を立たせ、コモディティ化から抜け出せます。
1. 機能ではなく体験を売る
技術力で競う従来の考え方から、体験という付加価値で競う発想へと転換が必要です。マーケティングにおいて、その商品がどんな経験や感動を提供するのかを文脈でアピールし、消費者の捉え方を広げて販売促進します。
2. 顧客目線に立ち、個性を磨く
そもそも消費者が持ちたい商品はどのようなものか、満足の高いサービスとは何か、原点に立ち戻り顧客ニーズを考えます。
消費者意識調査によると、「好きなものにはこだわりがある」と答えた人が約7割います。
機能面だけでなく、使い手の「好き」や「こだわり」にも目を向け、独自路線を展開すると良いでしょう。
<参照>「平成29年度消費者意識基本調査」の結果について(消費者庁)
3. ブランドを育て、認められる高価値を生む
魅力的なブランドは信頼され、高額の商品やサービスであっても対価を得られます。認知され、ファンになってもらい、ブランドで選んでもらえるようになれば、市場で独自のポジションを確立できます。
さらに、機能や性能で他社と比較されなくなり、価格も保証できるため収益性を高められます。ブランドを育て、商品全体の価値を上げると効果的です。
脱コモディティ化の成功事例
コモディティ化はあらゆる市場で企業において脅威となりますが、脱却して大成を遂げた事例も多くあります。
1. キットカット「きっと勝つ」で縁起かつぎ商品として大ヒット
チョコレート菓子の「キットカット」という商品名にちなんで「きっと勝つぞ」というメッセージを打ち出し、受験生の“お守り”や“合格祈願”として広く親しまれるようになりました。
糖質カットやカカオ配合量など機能的価値で勝負せず、『夢に向かって頑張る学生を応援』など、ポジティブな情緒的価値でアピールしたことが強みになっています。その結果、同ジャンルの中で“受験生を応援するアイテム”という唯一の立ち位置を得て、差別化に成功しています。
2. 無印良品/暮らしを軸に「本当に必要なモノ」
「感じ良いくらし」というコンセプトを掲げ、生活で本当に必要な物を、本当に必要な形で作ることをポリシーに商品展開しています。
使い勝手の良い機能性とシンプルなデザインのバランスが取れており、コンセプトに沿ったラインナップはぶれがありません。
生活に深く関わる食分野にも力を入れ、「カフェ アンド ミール MUJI」も展開し、人々の衣食住全体をフィールドに事業を広げています。
3. SUBARU/車に乗る=人生の一部と捉えたCMで新たな価値を訴求
「あなたとクルマの物語」をテーマに、「Your story with」というドラマチックなCMを作成し、反響を呼びました。
車は移動手段ではなく「乗る人の人生の一部である」というメッセージを土台にプロモーションを打ち出し、「おとうと篇」「助手席篇」などターゲットを絞ったCMで、それぞれのストーリーを描いています。
商品PRでも主人公が車ではなく人であることが、視聴者を惹きつけ、車の新しい存在価値もうまく表現している好例です。
唯一の製品や独自のブランドを確立し、市場を勝ち抜く
商品やサービスを提供する企業にとって、自社ブランドの確立やプロモーション方法の再検討など、脱コモディティのための戦略を立てておくことが大切です。
消費者が価格とは違う価値を感じることでブランドファンが増え、価格だけの乗り換えも起きにくくなります。
コロナ禍において、日常を豊かにすることや、毎日の積み上げを大切にしたいと感じている消費者が多い中で、その一部となるような存在のブランドや商品を作り出せれば、市場で存在価値を発揮できるでしょう。
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