カニバリゼーションとは「共食い」という意味で、マーケティングでは「自社ブランド同士が競合してしまい、商品のシェアを奪い合う状況」の意味で使われます。
本記事では、カニバリゼーションの成功例と失敗例を見ながら、自社ブランド商品の市場シェアを上げるにはカニバリゼーションとどう向き合っていくのかを紹介していきます。
マーケティングの重要用語である「カニバリゼーション」とは?
カニバリゼーション(cannibalization)とは、元々生物界での共食いを意味しています。
マーケティングの共食いとは、市場で自社ブランド同士が競合してしまい、商品のシェアを奪い合う状況のことを指します。簡単にいうと自社ブランドの商品やサービスでお互いの顧客を奪い合うことです。
自社にとってマイナスのカニバリゼーション
例えば、新製品の市場投入によって既製品の市場が食われてしまうカニバリゼーションが引きおこるとします。
市場が食われてしまうことは、市場を確保するための自社内の競争に無駄なエネルギーを費やしてしまうことを意味します。
そしてカニバリゼーションは自社内の非効率化に繋がるだけではなく、最悪の場合他社のシェア拡大を許してしまう可能性も発生します。
カニバリゼーションで市場シェアを増やすことも可
非効率の意味を表すカニバリゼーションですが、あえて自社競争をさせ、双方の市場シェアを強固にしようとする手法もあります。
この手法では戦略的にカニバリゼーションを起こし、自社シェアを固めることで、他社の参入を防ぐ効果もあります。自社ブランドの製品ラインナップを揃えることにより、競合他社の製品を排除することが可能になります。
自社製品で消費者を囲い込み、市場シェアを確保・強固にすることにカニバリゼーションは利用されることがあります。
カニバリゼーションの事例3選
上記で説明したようにカニバリゼーションはマイナスの意味とプラスの意味で表せます。
ここでは数多くあるマーケティングでのカニバリゼーションの失敗例と成功例の一部を紹介していきます。
事例1:失敗例
ここに大手お菓子メーカーA社があります。このA社の主力商品はチョコ60g(200円)で、そのチョコの市場の60%を占めています。主な顧客層は10~20代の若者です。
A社は市場シェア拡大のためターゲットを、年齢層を上げた30~40代女性に設定し容量を減らして糖質控えめのビターチョコ40g(150円)を新発売しました。
しかし、いざ販売してみると、普通のチョコ60gを普段購入しているお客様の切り替え購入は多数ありましたが、ターゲットにしていた30~40代女性からの購入はほぼありませんでした。
結果としては、安価で糖質を控えた新商品が既存シェアを食ってしまうことで市場シェア50%に低下してしまいました。
事例2:カニバリゼーションで市場シェアを維持
チョコなどの菓子類で同じ製品で少し違った味のものを多数出しているケースです。同種のお菓子なので当然自社製品内でカニバリゼーションが発生し、売上を食い合うことになります。
しかし消費者が選ぶ場合「どれを選んでも自社の製品」になるぐらいの製品ラインナップを揃えることにより、競合他社の製品を排除することが可能になります。その結果、自社製品内で多少のカニバリゼーションが発生しても、競合を排除することにより自社のチョコ製品の売上が向上します。
大手お菓子メーカーA社は、チョコ60gがチョコ市場の60%を占めています。しかしこの商品だけでは徐々に消費者が味に飽きてしまい、いずれシェアを大きく減らす可能性があります。現にSNSでは、チョコ60gに対する飽きの声が聞こえ始めました。
そのため、A社は60%の市場シェアを維持するために、ビターチョコ60g、ミルクチョコ60g、ホワイトチョコ60gを次々に発売しました。製法は同じで味を変えた商品です。
すると消費者は新商品を試しに購入し始めました。だからといって新商品だけに留まるのではなく、味に飽きればまた普通のチョコ60gに戻ってきます。そして次第にこの4商品を回して購入するようになりました。普通のチョコ60gのシェアは低下しましたが、A社全体のシェアは60%を維持しています。
このように市場シェア低下を防ぐために、戦略的にカニバリゼーションを起こさせることもあります。チョコ=A社にすることで自社の売り上げを維持し、他社が市場参入するタイミングを作りません。
事例3:他社にカニバリゼーションを起こさせる
B社はビール市場でトップシェアを誇りますが、最近ジュースメーカーC社がビール市場に参入しようとしています。
C社はジュース市場でシェア1位を誇る大企業なので、B社としてはC社参入を防ぎたいところです。そのため、あえてB社からC社商品と競合するジュースを発売することで、C社は対抗措置として新しいジュースを開発せざる負えなくなります。
既存ジュースと新規ジュースでカニバリゼーションを起こさせることでC社の経営効率を下げ、新規参入を防ぐ効果があります。
カニバリゼーションを自社戦略に活かすために
カニバリゼーションは、戦略的に利用することで自社の経営に貢献できます。
しかし、カニバリゼーションの事例で紹介したように自社に引き起こしてしまって失敗することや逆に引き起こされてしまうこともあります。そのためカニバリゼーションをどう利用し、起こった場合どう対処するのかを把握する必要があります。
カニバリゼーションを起こさないためには
まずは市場分析が非常に大切になってきます。新商品の発売前、実際に市場に投入する前には、あらかじめ新商品とカニバリゼーションを起こす可能性のある自社の既存商品について市場分析を行う必要があります。
他にもターゲットの流入を防ぐペルソナの正しい設定、消費者のニーズを満たす商品の差別化や似た商品を開発しないような自社内の情報共有が必要になってきます。
カニバリゼーションをわざと起こすには
意図的にカニバリゼーションを起こす場合もあります。
カニバリゼーションにより自社やグループ企業内などで競争させることによって全体として売上向上を目指せます。
自動車会社の場合、低価格帯な大衆車や高額な商品ラインナップをそろえ、少しづつカニバリゼーションの状態を作ります。これによって消費者のニーズを他社に向かせずに、自社で満たさせることができます。
起きてしまったカニバリゼーションにどう対応すべき?
カニバリゼーションを解消にするには2つ方法があります。
一つ目は既存商品の再ポジショニングを行うことです。商品ラインを見直し、ターゲットの重複を避けることと、新しいターゲットを探し出すことが必要になってきます。そこから商品の差別化を図ることが有効です。
2つ目はカニバリゼーションを起こしている商品と既存商品の違いをターゲットとなる消費者、顧客に認識させることです。既存商品と新規商品の魅力や利便性を追求し、差別化を図ることで、互いの競合が無くなります。
カニバリゼーションを活かしてシェア拡大
カニバリゼーションは意図せずに引きおこる場合は自社ブランドの市場シェアを下げる可能性がある現象です。そして多くは気づかないうちに起こる現象でもあります。
これを機会に自社でもカニバリゼーションは起こっていないか確認してみると良いでしょう。
また意図的に引き起こすことで自社に利点を生み出すこともできます。カニバリゼーションを上手く活用させることで他社からシェアを奪い、自社のシェアの拡大につながります。
会社が成長していくには欠かすことができないので、ぜひ活用してみてください。
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