規模の小さな水族館では、大規模水族館よりも目玉となる展示が少なく、集客に苦しむことが多くあります。

また都内では水族館の数も多く、激戦区となっています。

小規模水族館は規模で打ち出す集客よりも、展示や宣伝方法を工夫する必要があります。

しかしどのように展示を工夫すれば良いのか、どのような宣伝が効果的なのか迷う事業者も多いでしょう。

この記事では、近年の水族館市場の解説を踏まえ、集客のコツや、実際に入場者数を増やした事例について紹介します。

近年の水族館市場を解説

始めに、近年における水族館市場について、来館者数や水族館の数といった観点から解説します。

水族館の来館者数ランキング2019

日本国内における水族館の来館者数は、以下の通りとなっています。

順位都道府県施設名来館者数
第1位沖縄県美ら海水族館約372万人
第2位大阪府海遊館約259万人
第3位愛知県名古屋港水族館約211万人
第4位東京都サンシャイン水族館約174万人
第5位東京都アクアパーク品川約170万人
第6位神奈川県横浜・八景島シーパラダイス約148万人
第7位東京都葛西臨海水族園約140万人
第8位東京都すみだ水族館約130万人
第9位茨城県大洗水族館約112万人
第10位兵庫県須磨海浜水族園約110万人

1位での美ら海水族館は、卒業旅行や家族旅行など、沖縄観光の定番スポットとなっています。

ここでは日本一を誇る大きさの大水槽を筆頭に、様々な展示を楽しむことができます。

2位の海遊館では、外観だけでなく大水槽を回りながら下へ向かう、特徴的な構造をしています。

海遊館の顔であるジンベイザメも見どころです。

これらの結果から入場者数が多い水族館は大水槽を保有しているなど、規模そのものが大きいものが多いと傾向があります。

全国の水族館の数は

全国における水族館の数は、およそ150か所あります。
その内容は各施設で違いがあり、淡水魚やペンギンなどの専門の生物の展示を特徴とした水族館もあります。

こうした展示内容が各施設によって異なる点も、水族館の魅力であるといえるでしょう。

また、施設の規模も魚の種類も大小様々であるため、各施設に応じた集客方法をとることが望ましいと考えられます。

集客のコツは

では、規模が小さい水族館における集客では、どのような方法が効果的となるのでしょうか。

この項では、より効率的な集客が期待できるコツについて、いくつか紹介します。

水族館を楽しむのは子供だけではない

水族館のターゲットを、漫然と子供に設定してしまっている水族館は少なくありません。

しかし、実際には子供ではなく、大人が水族館を楽しむ場合も多いと言われています。

大人は水族館を通して、生き物ではなく、水中の世界そのものを見ています。

「水塊」と呼ばれる、水槽による水中感や海の奥行などを表現することで、より鮮やかな水中の世界を体験できる光景を生み出せます。

これにより、非日常感を体験したいと考える、大人客の比率を増加することができると期待されています。

今まで子供だけをターゲットにしていた水族館も、展示の工夫次第で新たな顧客層の集客が可能になるかもしれません。

リピーターを意識

水族館では、新規顧客の獲得はもちろん大切ですが、リピーターを意識することも重要な集客ポイントとなります。

リピーター客が飽きないよう、オリジナルのガチャガチャなどといったグッズ販売や、企画展の入場費用で収益を伸ばす水族館も少なくありません。

また、2回の来園で元が取れる年パスなど、サブスクリプション型サービスも行っています。

特に都内では水族館の数も多いため、来客が分散しがちです。

そのため、リピーターの確保が大切です。

水族館の集客事例

客層や、集客において意識する点について紹介しました。ここからは、より具体的な例を用いて、水族館の集客事例について紹介します。

最先端の技術を融合

マクセルアクアパーク品川では、デジタル×水族館を活用し、季節に応じたプロジェクションマッピングやオリジナル音楽を提供しています。

2019年の夏には、プロジェクションマッピングを活用したパフォーマンスとして、「宵のペンギンまつり」を開催しました。

これは、ペンギンが縁日にちなんだ道具で遊びつつ、身体能力を生かしたパフォーマンスを披露するショーとなっています。

このパフォーマンスにプロジェクションマッピングが連動することで、縁日では定番となっているスーパーボールや金魚などのアイテムが床に映し出されます。

クライマックスでは、床から壁へ向かって花火が打ちあがり、色鮮やかに空間が彩られ、ゲストも夏の風情を楽しむことができます。

展示生物や内容の充実

池袋のサンシャインシティにあるサンシャイン水族館では、年間を通して様々な企画展を開催しています。

最近の企画展は、2020年1月23日から3月8日まで開催されていた、「ホラー水族館」です。

水族館×お化け屋敷をテーマとしており、通常営業や終了した後の18時30分から、夜間特別営業として開館されていました。

サンシャイン水族館では、以前にもこのような独特な企画展を開催しています。

2019年9月27日から11月4日までは、「性いっぱい展」、2018年6月28日から2019年2月11日までは、「化ケモノ展」を開催する等、多種多様な展示を行っています。

ショボさを活かした宣伝

三重県伊勢市にある、伊勢シーパラダイスは、一時は廃館も検討されていましたが、今では大人気の水族館となっています。

ここでは、「セイウチのお散歩タイム」というプログラムがあります。

この水族館は敷地が狭く、生き物がショーを披露するスペースが不足していたことが課題でしたが、スタッフが観客の前に生き物を連れていくという斬新な方法で、人気のプログラムとなりました。

このショーでは、セイウチが観客に近寄り体を触らせ、希望すればビンタもしてもらえるようです。

おさかなたちの学校がコンセプト

横浜中華街の中にあるヨコハマおもしろ水族館・ヨコハマ赤ちゃん水族館は、館内の造りが小学校や幼稚園となっているユニークな水族館です。

ヨコハマおもしろ水族館では下駄箱をモチーフにした水槽や校長室に体育館倉庫、音楽室の中を魚が泳いでいます。

めだかの学校のように小さくてユニークな魚を300種、5,000匹ほど見ることができます。

面白いだけでなく魚の名前や生態に関するクイズも豊富で、小さな子供も学習しながら水族館を楽しむことができます。

水族館の小ささ、狭さ、展示の少なさも見方を変えれば長所に

小規模水族館は、大規模水族館に比べ、目玉となる展示を打ち出すのが難しい傾向にあります。

そのため、水族館とプロジェクションマッピングを組み合わせたりするなど、違うテーマと掛け合わせることで、水族館に馴染みのない客層にもアプローチができます。

また、館内を一つのコンセプトに統一する見せ方も、来館者を楽しませる工夫として良いでしょう。

それぞれの展示の内容や見せ方を濃いものにすることで、「ここにしかない」と顧客に思わせることも可能です。

そうすることで、リピーター客の増加にもつながるでしょう。