ホテルや旅行会社の休廃業が過去最多ペース…ワクチン接種者限定ツアーなど引き続き展開中/宿泊業界動向まとめ【2021年7月】

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7月は4度目の緊急事態宣言による自粛ムードの中、東京オリンピックが開催されました。無観客での開催により、宿泊施設では見込まれていた宿泊利用は実現せずに終わりました。

昨年7月はGoToトラベル事業により国内旅行者の宿泊が増加しましたが、今年は実施されないばかりか酒類提供の禁止も宿泊需要の低下に拍車をかけたようです。

その一方で、6月以降は日本全国でワクチン接種の対象者が拡大し、幅広い年齢層での接種が進められています。本記事では、こういった状況を活かした集客に励むホテルや旅行会社などをはじめとした2021年7月の動向について紹介します。

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宿泊業界動向まとめ 2021年6月

宿泊業界動向、主要トピック

ワクチン接種が急速に進んだアメリカでは、事業の制限が緩和され宿泊業界も回復傾向です。宿泊業界の主要指標の一つである販売可能な客室1室当たりの収益(RevPAR)が、7月にコロナ流行前の水準を超える結果となりました。

今後、日本国内でもワクチン接種完了の割合が高まれば、同様に宿泊業界の回復も期待できるでしょう。

7月は6月に引き続き、接種完了者向けのプランや優待、県民割の動きが見られました。

<参照>
米宿泊業界の主要指標、コロナ前の水準上回る-旅行需要旺盛で - Bloomberg

ワクチン接種完了者向け割引プランなど継続中

6月以降、ワクチン接種者を対象に割引キャンペーンや特別プランを展開するなど、ホテル側の新たな試みが消費者の旅行意欲を高めています。京都市観光協会によると、市内で約4割の宿泊施設が、ワクチン接種者向けの優待サービスを導入済もしくは導入検討中という状況です。

また東京ステーションホテルではワクチン接種者にホテル利用券を配布し、京都ホテルオークラは宴会場を利用できるプランでプレゼント特典を設けるなど各社工夫を凝らした施策を打ち出しています。

このような取り組みはホテルだけでなく、ビッグホリデーが「接種者対象の割引ツアー」を発売しワクチン接種者は11月までの期間であれば何度でも割引が適用されるサービスを開始しました。

希望者のワクチン接種が11月に完了する見通しの中で、並行して提供される各社サービスに今後も目が離せません。

<参照>
新型コロナ: ワクチン優待、京都市の宿泊施設の4割が実施・検討: 日本経済新聞
JR東傘下の日本ホテル、ワクチン接種でホテル利用券を付与 「東京ステーションホテル」など対象:接種を促進 - ITmedia ビジネスオンライン
【京都ホテルオークラ】ワクチン接種応援企画◆同窓会プランプレゼントやレストラン割引を8月より開始|オークラ ホテルズ & リゾーツのプレスリリース
【ワクチン接種者向け旅行代金割引ツアー発売】旅行会社のビッグホリデーがワクチン接種者を対象にした5,000円割引サービス付きツアーを発売|ビッグホリデー株式会社のプレスリリース

県民割も引き続き展開(青森県事例)

観光庁がGoToトラベル事業の代替として、地域の観光業支援を目的とした「県民割」は、当初10月末までとなっていたところを12月末までに延長となりました。

青森県では、県内259施設が対象となる「おでかけキャンペーン」で、県民1人1泊につき最大7,000円補助するサービスを7月より開始しています。現在は新規予約受付を停止中とのことです。

<参照>
青森県、県民に宿泊代半額キャンペーン 飲食クーポンも: 日本経済新聞

政投銀の支援策を藤田観光が利用

ワシントンホテルや椿山荘など都内ホテルやリゾート事業を展開する藤田観光は、日本政策投資銀行(DBJ)より資金調達することを発表しました。

コロナの影響で大型施設の売却など苦肉の決断を強いられた同社ですが、調達した資金で既存ホテルの再開発や新規ホテルの開業を目指します。

DBJは今年3月末より、宿泊業界や飲食業界において資金繰りや財務基盤強化を支援する制度を掲げ、これまでにもワタミやゼンショーホールディングスといった大手企業が活用しています。

<参照>
藤田観光、政投銀から150億円調達 資本金1億円に減資: 日本経済新聞

宿泊業界のDX、注目トピック

各業界でデジタルトランスフォーメーションDX)が推進されていますが、7月に発表された宿泊業界における事例を紹介します。

AIで秩父の宿泊業支援 8月末まで実証実験

ホテル向けクラウド型システムを開発するAZOO(アズー)は、秩父の観光協会や旅館業協働組合と連携し、エリア内の宿泊事業者に対して同システムのマーケティング機能を無償で提供します。

紙文化が残るホテル業務の効率化を目指すための実証実験で、アフターコロナの観光地活性化につながる試みとして有効です。

<参照>
新型コロナ: 埼玉・横瀬町、AIで秩父の宿泊業支援 8月末まで実証実験: 日本経済新聞

ラグジュアリーホテルでアクティビティ予約アプリを導入

新潟のラグジュアリーホテル「ryugon(龍言)」は、宿泊予約の流れでアクティビティ予約もできるアプリを導入し、雪国ならではの体験価値を提供します。

自転車のレンタルサービスや、現地の食文化に触れる料理体験など旅行者の興味を引く過ごし方を提案し、満足度向上やリピートにつなげる狙いです。

aiPassでのアクティビティ予約
▲aiPassでのアクティビティ予約:クイッキン株式会社

<参照>
スマートチェックインを提供する『aiPass』がJTB BÓKUNと連携し、滞在中のアクティビティ予約をスマート化するプラグインを提供開始|クイッキン株式会社のプレスリリース

ロボットのおもてなし

ホテルニューオータニ(東京)公式サイト
▲ホテルニューオータニ(東京):公式サイト

「ニューオータニイン横浜プレミアム」では、海外からも注目を集めるマスコット型のロボット「LOVOT」と宿泊するプランを開始しました。LOVOTは癒しと寛ぎを与える役目を果たし、20代から30代の夫婦やカップルなどから好評の声が寄せられています。

顧客データの集積や分析につながるDX化とは色が異なりますが、宿泊客に新たな醍醐味を与えるテクノロジー活用の事例といえるでしょう。

ホテルニューオータニ(東京)でも同様のサービスが導入されています。

<参照>
横浜エリアのホテル初!カップル・ ご家族 の記念日に、いっしょに過ごしてほしい。「LOVOT(らぼっと)といっしょ に宿泊体験 プラン」|HRTニューオータニ株式会社のプレスリリース

7月に発表された宿泊業関連のデータ紹介

7月に発表された、宿泊業界の動向や旅行者の増減、今後の予測を示すデータを紹介します。

帝国データバンク調査:ホテルや旅行会社など観光産業、休廃業・解散が高水準

ウィズコロナの期間が1年半続き、長引く苦境の中、宿泊業旅行業の休廃業や解散が上半期、過去最多となりました。

政府や民間の金融機関からの資金援助などにより企業倒産は前年同期を下回るものの、宿泊需要の低下が続き、休廃業や解散は前年に比べ大幅に増加しているとの見方を示しています。

ワクチン接種の普及が今後半年で計画通りに進めば需要回復も期待できるものの、データ推移からは経営維持が困難な会社が増える可能性もあります。

<参照>
帝国データバンク:2021年1-6月 全国企業「休廃業・解散」動向調査
帝国データバンク:2021年1-6月 全国企業「休廃業・解散」動向調査(PDF)

東京商工リサーチ:2021年上半期(1-6月)宿泊業の倒産状況調査

2021年上半期の宿泊業倒産は前年同期と比べ40%減少し43件となりました。倒産の主な原因は「販売不振」で全体の約8割を占めています。

緊急事態宣言やまん延防止措置などにより、国内外の移動に制限が残る中で、宿泊業界は業績好転の見通しが立てづらく、東京商工リサーチでは「経営破綻が再び増加する可能性もある」としています。

需要喚起を目的とした施策や、金融支援などを推進する以外にも、企業は、生き残りのため業態転換も視野に入れる必要があるのではないかとの考察です。

<参照>
2021年上半期(1-6月)宿泊業の倒産状況調査 : 東京商工リサーチ

観光庁「宿泊旅行統計調査」「旅行・観光消費動向調査」発表

観光庁は、宿泊旅行統計調査の速報値を公開しました。

延べ宿泊者数5月が2,047万人泊で2019年同月比マイナス60%、2020年同月比ではプラス129%でした。6月は1,960万人泊でそれぞれマイナス57%、プラス24%となりました。

内訳では日本人と外国人ともに2020年5月より大幅プラス、2020年6月よりプラスという結果です。

しかし2019年と比較すると引き続き落ち込んでおり、特に外国人ではマイナスが著しく、97%となっています。

<参照>
宿泊旅行統計調査(令和3年5月・第2次速報、令和3年6月・第1次速報) | 2021年 | 報道発表 | 報道・会見 | 観光庁

夏休みの国内旅行者数 4,000万人と推計、コロナ前の-44.8%

JTBでは、夏休みの国内旅行人数が延べ4,000万人と推測しており、コロナ前の2019年は7,450万人であったのに対し半数近くに留まる見通しです。

緊急事態宣言が8月まで続くことで大きな回復には至りませんが、近場での旅行やマイカーでの移動など、感染リスクを避けた形で旅行する人が増えるなど、昨夏を上回ると予想しています。

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夏休みの国内旅行者数 4,000万人と推計、コロナ前の-44.8%にとどまる

博報堂が「来月の消費予報・7月」を発表


博報堂のシンクタンク分野を手掛ける博報堂生活総合研究所が行う、消費の先行きについての調査によると、8月の消費意欲は「旅行」や「レジャー」については前月比で増加が見られました。

具体的な声として、夏休みの思い出作りや、ボーナスの使い道として旅行に行きたいという意見が見られる一方で、猛暑により外出したくないという声も散見されます。

コロナ前の状態には回復しきれない予想ではあるものの、旅行シーズンに対する消費者の期待も見受けられました。

<参照>
博報堂生活総研[来月の消費予報・2021年8月](消費意欲指数) |ニュースリリース|博報堂 HAKUHODO Inc.

業界団体、ワクチン接種条件に旅行解禁の提案も

一部の国や地域ではワクチン接種の人口比率が上がり、海外からの旅行者入国を解禁する動きも見られています。8月には日本旅行業協会の菊間会長が「ワクチン接種が完了すれば、行動制限を段階的に解除してもいいのでは」と主張し、政府へ旅行を認めるよう訴えました。

オリンピックは無観客でありながら滞りなく開催を完了しました。緊急事態宣言やまん延防止等充填措置は8月末までの期間を予定しています。解禁後には旅行業界でも様々な打ち手が展開され、関連市場の盛り上がりも期待されます。

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