宿泊業に行動経済学を活かすには|客単価や満足度の向上につながる理論を解説

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行動経済学は心理学と経済学を掛け合わせ、人間の経済活動の理由や法則について分析する学問です。

行動経済学の考え方は様々な業界に応用可能です。行動経済学の理論を応用し、事業主にとってより利益の大きな商品の購買を動機づけたり、集客力を高めることもできます。

本記事では、宿泊業に応用可能な行動経済学について客単価の向上、顧客の誘致、顧客の満足度向上の3つの視点から解説します。

宿泊業に応用可能な行動経済学その1:客単価を上げる

利益拡大の方法の一つが、客単価の向上です。顧客の誘致を狙い値段を下げても、忙しさだけ増して売上が増えないと意味がありません。

まずは客単価の向上を顧客が受け入れやすくなる心理効果を解説します。

1. アンカリング効果

アンカリング効果とは、人が何かを決定するために考える時、ある値を基準とし、それとの比較で条件の優劣を判断する現象です。

アンカリングは、直訳すると「アンカー(錨)を下ろす」という意味で、人の頭の中で基準が固定される様子と重ねてこう名付けられています。

アンカリング効果では、多くの場合最初に提示された情報が基準となります。

よく使用されている例に「3,000円の商品が今だけ2,000円!」といった売り文句があります。この場合「3,000円」が基準となり、割引価格である「2,000円」は「3,000円よりも安い」ものとして認識されます。

ただたんに「2,000円」という価格を示すよりも、金額に対しポジティブな評価が下されやすいといえるでしょう。

旅行プランの価格を提示したうえで、実際の販売価格を見せれば、割引されたプランとして消費者の購買を後押しする効果が期待できます。

アンカリング効果とは?意味やマーケティングへの活用事例を業種別に紹介

アンカリング効果は最初に表示された数字や条件が、その後の判断に影響を与える心理効果を指します。行動経済学や心理学の分野で知られる現象であり、近年はマーケティングにおいても幅広く活用されています。この記事では、アンカリング効果がどういった現象なのか、マーケティングへの活用方法・事例を紹介します。目次アンカリング効果とは?行動経済学・心理学の心理効果アンカリング効果の語源アンカリング効果を活かした業種別マーケティング事例飲食業/飲食店などのコースメニューやレイアウト小売業1/家電量販店などの価...

2. おとり効果と極端回避性

おとり効果とは、選択肢を提示する際にあえて選ばれにくい選択肢をまぜることで、特定の条件の選択肢が選ばれる現象です。

雑誌の購読販売について考えてみます。

A. Webでの定期購読 1,000円 
B. Webと紙媒体での定期購読 3,000円

この場合、内容が同じであれば、価格の安いAを選択する人が多くなります。

この選択肢に、おとりとして「紙媒体での定期購読」を追加して、以下の3つのプランを販売する場合を考えます。

A. Webでの定期購読 1,000円
B. 紙媒体での定期購読 3,000円
C. Webと紙媒体での定期購読 3,000円

この場合、Webでの定期購読と同じ内容で、3倍の値段である「紙媒体の定期購読」を選ぶ人はほとんどいないと考えられます。

ところがBという選ばれない選択肢は、Cとの比較対象としてその役割を果たします。

消費者は、BとCを比較し、同じ値段ならばWebも紙媒体も両方読めるCに魅力を感じます。結果として、Cを購入する人が増加します。

おとり効果は選ばれない劣位なものを一つ入れて選択肢を提示することで、決断に影響を与える現象です。類似した現象に、複数の選ばれない選択肢を入れて提示されると、中間に位置する条件の選択肢を選ぶ現象があり、これを松竹梅の法則といいます。

ホテル旅館であれば以下のような例があげられます。

A. ツインルームプランA 5,000円
B. ツインルームプランB 8,000円

大きな差がなければ、価格の安いAを選ぶ人が多いでしょう。

この中にCという選択肢を追加します。

A. ツインルームプランA 5,000円
B. ツインルームプランB 8,000円
C. ツインルームプランC 10,000円

この場合、AとBで比較すると高く感じたBの8,000円が、より高いCを提示されることで比較的安い印象を与え、Bを選ぶ人が増えます。

コストパフォーマンスを重視し、より品質が良くより安価なプランを選択する顧客が多い一方で、記念日など特別な日の宿泊に豪華な部屋やサービスを求め、高単価なプランを探す顧客も一定数います。

高単価なプランは顧客のそうした需要にマッチするだけでなく、いくつかのプランの比較材料として提示できる有効といえます。

おとり効果とは?消費者心理とマーケティング施策・注意すべき5つのポイント

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松竹梅の法則とは|真ん中を選ぶ心理・マーケティング現場への活用・価格設定のポイント

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宿泊業に応用可能な行動経済学その2:顧客の集客

どんなに魅力的な宿泊プランを提示していたとしても、顧客にしっかりと届き、最終的に顧客が選択しなければ効果は現れません。

続いては、顧客の誘致を促進させる効果を紹介します。

1. 利用可能性ヒューリスティクス

ヒューリスティクスとは、これまでの経験や価値観など、決断したり選択したりする時に意識せずにその決断や選択に影響を与えている要素をいいます。決断や選択を早める効果がありますが、思い込みの場合もあり、必ずしも正しいとは限りません。

ヒューリスティクスの中で、ぱっと思いつきやすい情報により強く影響を受けることを利用可能性ヒューリスティクス(または想起ヒューリスティクス)といいます。この利用可能性ヒューリスティクスは以下の3つの側面で成り立ちます。

1.想起容易性

文字の通り、ぱっと思い出しやすいことが利用可能性ヒューリスティクスの特徴です。有名人を起用したCMなどは、CMを見た人の中で強く印象に残っていて簡単に想起されます。

2.検索容易性

複数の選択肢から選ぶ時に、記憶を検索した結果選択されやすいという側面が検索容易性です。たとえばずっと使い続けている化粧品など、これまで選択して失敗のなかったアイテムを記憶検索からさっと選び、「いつもの」という信頼から選択に至る状態が当てはまります。

3.具体性

知人からの情報や口コミサイトの情報など、小数派の意見かもしれないのに優先して選択の根拠にする側面が具体性です。テレビで短時間、注意を払わずに見た情報よりも、友人から直接聞いた話の方が記憶に残りやすいのはこのためです。

宿泊施設の特徴や情報がこうした要素を持つよう、工夫し、SNSなど顧客が接触する媒体で発信するといった取り組みにより、利用可能性ヒューリスティクスに基づいた認知拡大が期待できるでしょう。

ヒューリスティックとは?意思決定に使われる法則の主な種類・マーケティング活用例を紹介

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2. ウィンザー効果

ウィンザー効果は、第三者の評価によって信憑性や信頼感が増幅される現象です。

消費者が広告や公式サイト、公式アカウントの発信よりも口コミを参考にしたいと考えるのは、この現象があるからです。

たとえば「最高のおもてなしを提供する贅沢旅館」と宣伝した場合、顧客はそのメッセージを見て、宿泊者を呼び込みたい宿泊施設が良い部分を紹介するのは当然のことだと感じます。

対照的に、宿泊施設サービスや接客態度、景色の良い浴場など設備を評価する口コミを目にすると、誇張ではなく事実だと受け止めることが多くなっています。

ウィンザー効果とは?口コミから信頼の獲得へ・マーケティングへの活用法を紹介

ウィンザー効果は、直接利害関係のない第三者から得た情報を信頼しやすいという人間の性質から、評価対象とは無関係な場所から得られた情報が信頼されやすくなる効果を指します。昨今のマーケティング施策では欠かすことのできない口コミやレビューが、消費者に影響を与えていることの背景には、このウィンザー効果の存在があります。本記事では、ウィンザー効果の現象そのものや、マーケティング施策の例、ウィンザー効果をマーケティングに応用する際のポイントについて解説します。目次ウィンザー効果とはウィンザー効果の実例ウ...


3. バンドワゴン効果

バンドワゴン効果は、不特定多数の同じような意見にならいやすくなる現象をいいます。具体的な例でいうと、大多数の人が良いと判断しているからきっと良いのだろうと評価するようになるといったケースがあります。

多くの人が持っているのであれば自分も持っておきたいと考え、商品購入に至るのもバンドワゴン効果の一つです。

宿泊施設の場合、高評価の口コミが増えれば、多くの人が利用し満足していることがそれをチェックする顧客に伝わります。バンドワゴン効果により、広告など打たなくとも、施設を利用してみたいと思う顧客が増えることが期待できるでしょう。

施設内のカフェや、宿泊する部屋のテーブルに口コミの投稿を呼びかけるカードを置くことで口コミ投稿を増やすことができます。

バンドワゴン効果とは?人気が人気を呼ぶ・反対の効果・意図的に引き起こすには?

商品を購入する際に「最近周囲の人が話題にするあの商品が気になる」、週末の予定を立てる際に「行列のできているパンケーキ屋に行ってみたい」と考えたことがある人も多いでしょう。消費行動は、消費者の周囲からの評判が大きな影響をもたらします。このように多くの人が選んでいるという現象が、ある選択肢を魅力的に感じさせ、同じように選ぶ人がさらに増える効果を「バンドワゴン効果」と呼びます。この記事では、バンドワゴン効果の意味や似た効果、対義語、日常生活で見られる例や、マーケティングへの活用ポイントについて整...

4. フレーミングの法則

フレーミングの法則は、同じ一つの事実であっても、表現方法を変えることで、情報の受け手の印象が変わることを説いた理論です。

宿泊施設の魅力を訴求する際や、周辺の観光地や飲食店を紹介する際には、より確実に起こるメリットを伝えるとよいでしょう。

フレーミング効果とは?有名な実験「アジア病問題」・マーケティングへの活用例・5つの活用法

フレーミング効果とは、価値が同じでも表現の仕方を変えることにより相手の捉え方に影響を与える事象です。マーケティングには人間のさまざまな心理的作用が活用されており、フレーミング効果もその一つです。この心理現象について詳しく理解することで、顧客に対して商品の訴求力を高められます。フレーミング効果が起こる原因や実証実験を紹介した上で、販売方法や宣伝方法における活用例を解説します。関連記事行動経済学を小売業に活かすには?目次フレーミング効果とは「フレーミング効果」とは表現の仕方が相手の選択行動に影...


宿泊業に応用可能な行動経済学その3:顧客満足度を向上させる

宿泊業において利益拡大に重要とされる要素は、客単価の向上と利用件数の増加、そしてリピーターの獲得です。リピーターを生み出すためには、次回の利用を促す顧客満足度の向上が欠かせません。

顧客満足度の向上に応用可能な法則を解説します。

ピークエンドの法則

人の記憶は、最も強く印象に残った情報と、最後に得た情報が残りやすいという特徴があります。これをピークエンドの法則といいます。

諺の「終わりよければ全てよし」ではありませんが、最終的に残る記憶が好意的なものであるよう、宿泊の終盤に力を入れる宿泊施設が増加しています。

たとえば、宿泊施設であれば、顧客が施設を離れる直前である朝食に力を入れる、あるいはチェックアウトの際に小さな贈り物をするといった取り組みができるでしょう。滞在期間の最後に好印象を与える工夫によって顧客満足度の向上が期待できます。

ピーク・エンドの法則とは?店舗の接客とどう関係?活用方法を解説

ピーク・エンドの法則は、心理学や行動経済学の分野で知られる人間の心理現象の一つで、事業者がファンやリピーターをつくる上で重要なヒントを有しています。ピーク・エンドの法則とは何かを理解すれば、顧客のサービス満足度向上や営業活動の成功率アップにつながります。本記事では、日常生活における具体例とともに、ピーク・エンドの法則の概要とマーケティングへの活用方法を詳しく解説します。目次ピーク・エンドの法則とはピーク・エンドの法則を証明する実験ピーク・エンドの法則は顧客満足度を高め、リピーターを増やすの...

宿泊業にも応用できる行動経済学

顧客が商品サービスを選択する時にはさまざまな心理効果が生じています。宿泊施設の販促においては、たとえばプランの設定やウェブサイトでの宿泊料金の見せ方を決める際には、アンカリング効果やおとり効果を意識するとよいでしょう。

口コミが集客に有効なのは、ウィンザー効果やバンドワゴン効果により、顧客の中に行ってみたいという気持ちを呼び起こすからにほかなりません。宿泊施設にかぎらず、口コミは重要なマーケティング資産といえます。

施設を利用する顧客は何に満足し、どの程度の予算を妥当と感じているのかといったデータと掛け合わせて、行動経済学に基づく施策やサービスに落とし込んでいくことが、継続した集客につながるでしょう。

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