コロナで注目「マイクロツーリズム」事例8選:観光業・ホテル・飲食店の救世主となるか

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いわゆる第2波が心配されていた新型コロナウイルスですが、西村経済再生相は8月31日の記者会見において「(新規感染者数の)下降傾向が見えてきている」と発表しており、専門家らで構成する厚生労働省の助言機関も「7月末が感染拡大のピーク」との見解を示しています。

コロナウイルスは、これまで指定感染症の5段階中2番目に高い危険度とされてきましたが、8月26日には「2類相当」解除に向けて見直しが進められるなるなど「アフターコロナ」に向けて準備が進められており、観光地の宿泊施設飲食店などからは一刻も早い回復が望まれています。

そこで注目が集まっているのが、地元に焦点を当てた「マイクロツーリズム」であり、アフターコロナでの新しい観光のあり方として活用が期待されています。

本記事では、マイクロツーリズムの概要に加え、マイクロツーリズムの活用事例について解説します。

マイクロツーリズムとは?4つのポイント

マイクロツーリズムとは「小さな旅行」を意味し、自宅から自家用車で30分から1時間程度の距離での近場観光を指します。

国内外で42施設を運営する大手「星野グループ」代表の星野氏によって提唱された概念であり、感染拡大を防止すると共に、地域経済を両立する新しい観光のあり方として期待されています。

本項では、マイクロツーリズムが注目を集める4つのポイントについて解説します。

1. 安全、安心のイメージ

コロナ禍におけるマイクロツーリズム活用のメリットとしては、まず第一に安全・安心さが挙げられます。

ウィズコロナからアフターコロナ初期にかけては、接触のリスクが少なく安全なイメージがある自家用車での旅行や、短時間移動の旅行から回復すると見込まれており、マイクロツーリズムとの親和性は高いといえるでしょう。

2. 地域の主要都市からの流入

観光庁の統計によると、2018年の観光市場は26.1兆円と言われており、そのうちの約20.5兆円は国内観光が占めています。

海外への渡航は難しい現在、海外旅行客が国内旅行客に転じる見込みは高く、またマイクロツーリズム市場は日本全国各地に一定量存在していることから、地域における主要都市からの流入も期待できます。

3. 感染防止と経済活動の両立

他地域への新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、現在遠方への移動が制限されていますが、マイクロツーリズムではそもそも地元地域内での移動を前提としているためにウイルス拡散のリスクは低いとされています。

さらに、マイクロツーリズムは地域の観光需要創出にもつながるため、地域経済活性化にも有効性が期待できるでしょう。

4. 安定した観光経済圏の創出

2020年に予定されていた東京オリンピックに向けて、右肩上がりに伸びる訪日外国人観光客数を追い風に拡大を続けてきた観光業は、新型コロナウイルスの影響により壊滅的なダメージを受けています。

東京での感染者数は依然として3桁台が続くなど、大都市圏では未だ感染拡大が続いていますが、一方で感染が抑制されている地域も出始めています。このような地域においては観光需要を安定的に維持できる可能性があり、国内観光産業への影響の軽減につながります。

マイクロツーリズム事例8選

さまざまな恩恵が期待されているマイクロツーリズムは、大手宿泊施設を中心に活用の動きが広まっています。

星野グループをはじめとした民間宿泊施設や地方自治体など、マイクロツーリズムへ積極的に取り組んでいる8の事例を紹介します。

1.星のや東京:都内で心も身体もリフレッシュする温泉旅館滞在

▲星のや東京公式サイトより
▲星のや東京公式サイトより

東京の大手町に位置し、東京駅や皇居が徒歩圏内という好立地が魅力の「星のや東京」は、都心にありながらも最上階に温泉を構える伝統的な日本旅館です。

旅館では首都圏在住者をターゲットに、温泉を目玉とした施設滞在に焦点をあてた3密回避が可能なパッケージで、集客を図っています。

2.星のや京都:奥嵐山で京文化に触れる久しぶりの優雅な1日

▲星のや京都公式サイトより
▲星のや京都公式サイトより

同じく星野グループの、京都の奥座敷と呼ばれる嵐山に施設を構える「星のや京都」は、京都市内から車で僅か30分の場所にあり、関西在住者でも行きやすい立地が特徴です。

25室の客室は、伝統文様「京唐紙」の壁紙や、星のや京都オリジナルの「畳ソファ」など京文化を感じられる内装となっている他、全客室が大堰川(おおいがわ)に面しており、感染リスクを抑えた非日常体験を提供している事例だといえます。

3.界 長門:山口県の伝統工芸を堪能する温泉旅館

▲界 長門公式サイトより
▲界 長門公式サイトより

コロナ禍の2020年3月12日に開業した「界 長門」は、美肌の湯として知られる山口県・長門湯本温泉にあります。

「藩主の御茶屋屋敷」をテーマとし、萩焼・徳地和紙・大内塗・萩ガラスなど山口県の伝統工芸が随所に感じられる内装となっており、客室ステイでも楽しめる設えが特徴的です。

また、同旅館は長門市との共同プロジェクト「長門湯本温泉まちづくり計画」を進めており、宿泊者以外も利用可能な「あけぼのカフェ」を運営するなど、地域内での交流創出・活発化に取り組んでいます。

4.嬉野茶時:「お茶・焼き物・温泉」の融合がSNSで拡散

▲嬉野茶時公式サイトより
▲嬉野茶時公式サイトより

日本三大美肌の湯「嬉野温泉」が有名な佐賀県嬉野市では、観光需要を取り戻し集客を図るべく温泉旅館経営者らが結託し、名産であるお茶と焼き物を融合させたイベント「嬉野茶時」を打ち出しました。

温泉旅館のラウンジにて茶農家が接客を務め、嬉野茶をワイングラスに注ぐなどの付加価値により非日常体験を提供した同イベントは、驚きの価格設定にも関わらず終日満席を誇りました。さらにはその人気ぶりがSNSでさらに拡散され、都内の高級外資系ホテル「マンダリンホテル」や六本木ヒルズでの開催も実現しています。

地元産業の協力によって経済活性化につながった、まさにマイクロツーリズムの好事例だといえるでしょう。

5.月岡温泉観光協会:観光サイト「月岡温泉◎ちかたび」

▲月岡温泉◎ちかたび公式サイトより
▲月岡温泉◎ちかたび公式サイトより

新潟県新発田(しばた)市の月岡温泉観光協会は、温泉街のおすすめスポット、および車で1時間圏内で行ける観光スポットを紹介する観光サイト「月岡温泉◎ちかたび」を開設しました。

同サイトは、観光のテーマ性やストーリー性を高め、地域の魅力を最大限引き出し総合評価を高めることを目的に、周遊ルートとして新発田(しばた)市のみならず周辺地域も取り上げています。

コロナ以前に始まった取り組みですが、地域の観光資源を活かした滞在コンテンツの提供は、観光需要創出、および地域ブランディングに一役買っています。

6.NIPPONIA 小菅 源流の村:700人の村がひとつのホテルに

▲NIPPONIA 小菅 源流の村公式サイトより
▲NIPPONIA 小菅 源流の村公式サイトより

山梨県小菅村にあるホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、村の95%を占める森林内に点在する、100件ほどの古民家を改修した分散型ホテルです。

元々は村長が「700人の人口を維持する」ことを目標に、小菅村の地方創生プロジェクトの一つとして7年前に始まったものですが、密になりにくいという特性に加え、東京から車でわずか2時間という立地が功を奏し、7月から連日満室となっています。

さらに、従業員によってホテルまで届けられた旬の食材を用い、備え付けの豪華なキッチンで調理が可能であるという点も人気の一つとなっており、コロナ禍での潜在的観光ニーズを満たす宿泊体験を提供しています。

7. 青森県弘前市「食べて泊まって弘前応援キャンペーン」

▲弘前観光コンベンション協会公式サイトより
▲弘前観光コンベンション協会公式サイトより

地方自治体の事例としては、青森県弘前市のキャンペーンが挙げられます。

青森県に隣接する秋田県・岩手県在住者を対象とした同キャンペーンでは、弘前市内の特定宿泊施設を利用した場合、一人あたり1泊2,000円の宿泊割引・1泊2,000円の飲食券配布を実施し、合計4,000円分の価値を提供しています。

この施策によって地元地域への消費を促進する狙いがあり、マイクロツーリズム実現に取り組んでいます。なお、宿泊割引は最大3連泊まで利用可能となっています。

8.広島県尾道市「おのみちGO(ゴー)!GO(ゴー)!キャンペーン」

▲尾道市公式サイトより
▲尾道市公式サイトより

青森県弘前市同様、広島県尾道市も同様の取り組みに注力しています。

尾道市では周辺の中国地方5県に加え、瀬戸内海を挟み対岸に位置する四国地方の愛媛県もマイクロツーリズム商圏在住者として、キャンペーン対象者に数えられています。

5,000人限定で実施された同キャンペーンの内容としては、これらの対象者がキャンペーンを利用し尾道市内の宿泊施設へ宿泊した場合、宿泊プラン2,000円分+飲食店1,000円分2枚+お土産店1,000円分クーポン券と、一人あたり合計5,000円の特典を提供しました。

地域で連携し「小さな旅行」の枠に留まらない非日常体験が鍵

感染拡大防止、そして地域経済活性化を両立する新しい観光のあり方「マイクロツーリズム」は、地元地域内での移動を前提としているほか、3密回避を実現しながらの観光が可能であることから、アフターコロナにおける新しい生活様式と親和性が高いといえます。

国境を超えた移動が制限されている現在、海外旅行客が国内旅行客に転じる見込みも高く、また長らく続く自粛生活への疲れから潜在的旅行需要は高まっていると予測され、コロナで打撃を受けた観光業界が現状を打破するための切り札になり得るとして、注目が集まっています。

マイクロツーリズムで顧客呼び戻しを図るには、地域ぐるみでの協力が欠かせません。安近短の枠に留まらないためにも、事例を参考にしながら地域の観光資源を最大限に活用した非日常体験を提供することにより、顧客満足度向上に努めることが重要であるといえるでしょう。

<参照>

読売新聞:ピークは7月末、以降は減少傾向…助言機関「大きなクラスターで再び増加も」

観光経済新聞:国内での旅行消費額26.1兆円 2018年観光庁統計

Nativ media:【特集】アフターコロナの地域戦略〜(2)国内観光はどう変わるのか?〜

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