AIやIoTなどのテクノロジーを産業構造に適応させて、新しいシステムを作り上げようというデジタルトランスフォーメーション（DX）が進んでいます。
デジタルトランスフォーメーションを導入することによって、作業の効率化や顧客の大量のデータ収集が容易になるなど、企業にとっては大きなメリットとなります。
今回はデジタルトランスフォーメーションを実際に導入している事例を業界別に解説します。
デジタルトランスフォーメーション（DX）とは
ICTの浸透によって人々の生活が良い方向に変化していくことをデジタルトランスフォーメーション（DX）と言います。
DXによってさまざまな分野で作業の効率化がされることに注目が集まっています。
デジタルトランスフォーメーションの概要や必要な理由について紹介します。
デジタルトランスフォーメーションとは
デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術の浸透によって、さまざまな分野のシステムが社会全体に最適化されることを意味します。
インフラや制度、生産業において従来の経済システムに代わって、AIやIoTなどのICTが導入されています。このICTを軸に社会や経済が変化することでより利便性が高く、ICTの能力を引き出す新しいシステムが完成します。
この結果として、産業構造自体も大きく変化することになります。例えば、製造業において製品製造の中で収集したデータを活用して新製品を展開したり、自動化が進んでいったりなど、従来の社会モデルとは大きく異なる形に移行することが予測されます。
デジタルトランスフォーメーション（DX）のメリット・デメリットを紹介
デジタル化を進めることで業界内の競争において優位性を獲得できるデジタルトランスフォーメーションは、大きな注目を集めています。本記事ではデジタルトランスフォーメーションについてその概要や必要性について紹介しながら、導入のメリットやデメリットを解説していきます。目次デジタルトランスフォーメーションとは？デジタルトランスフォーメーションの概要デジタルトランスフォーメーションの必要性デジタルトランスフォーメーションの導入事例デジタルトランスフォーメーション 3つのメリット1. 効率性・生産性・精度...
デジタルトランスフォーメーションが推進される背景
デジタルトランスフォーメーションが推進される理由として大きく挙げられるのが消費活動の変化です。
昨今ではシェアリングエコノミーなど、消費活動の変化に対応した新しいサービスが次々に開発されています。
今後も変化する消費行動に対応していくことは重要となるでしょう。
また、顧客からの評価として「デジタル化への対応力」という観点も重要となります。
顧客はデジタル化にどれだけ迅速に対応できているか、合理的な判断ができているかといった観点で企業を評価するようになるため、どれだけ対応しているかが重要となります。
他にも、デジタルトランスフォーメーションにより同業界での競争で、優位性を勝ち取ることも可能です。
そういった観点でもデジタルトランスフォーメーションの必要性がうかがえます。
レガシーシステムが存在することによる課題
デジタルトランスフォーメーション導入に向けての大きな課題として、レガシーシステムが存在していることが挙げられます。
レガシーシステムとは、老朽化したシステムや旧来の技術基盤によって構築されたシステムのことです。
レガシーシステムのメリットとして、使い慣れていることから利用しやすいというメリットがあります。
しかしそのまま運用するとなると、メンテナンス費用が高かったり、機能の拡張が難しいなどのデメリットが多いことも事実です。
また、レガシーシステムを新しいシステムに移行する際に、IT人材の不足や、データ紛失のトラブルの可能性といった問題も挙げられます。
いかにレガシーシステムから新しい技術に切り替えていくのかが、デジタルトランスフォーメーション導入のカギとなります。
業界別の成功事例
ここでは業界別にデジタルトランスフォーメーション導入の成功事例を紹介します。
食品・飲食
大手コーヒーメーカーであるスターバックスコーヒーはモバイルアプリを利用して、ユーザーに最適化されたオススメの商品を提案しています。
強化学習技術を活用することによって、最寄りの店舗の在庫や人気商品、ユーザーの注文履歴などをチェックしてオススメの商品を推奨することが可能になりました。
また、江崎グリコ株式会社は、商談率を上げるためにマーケティングオートメーション（MA）を導入しました。
マーケティングオートメーションとは、マーケティングを実施するうえで、コストや時間がかかる作業を自動化することです。
データ収集や問い合わせ情報のリスト化などを自動化することによって、効率化をはかります。
この導入の結果、顧客のニーズがより明確化され法人向けの備蓄食料サービスという新たなニーズを得ることができました。
アパレル
グンゼ株式会社は最新のICTを用いて、導電性ニットを開発しました。導電性ニットは人の体の動きを把握することができる技術で、人々の日常生活の課題を解決します。
例えば、人が猫背気味になっている動きをセンサーで探知して「猫背率」を可視化できるようにしました。
センサーは服の繊維と同様に伸縮するため、快適に着用可能です。
ほかにも消費カロリー、心拍などのバイタルデータを計測して、専用のクラウドで管理できます。
こういったデジタル技術を応用した衣服は、スポーツ施設などでの健康管理ツールとしての期待が高まります。
アメリカのラグジュアリーブランドであるバッジェリーミシュカは2018年にランウェイのモバイルアプリをリリースしました。
このアプリはモデルの衣装につけているビーコンを活用することにより、観客はランウェイの最中にリアルタイムで衣装の情報を閲覧することが可能になります。また、リアルタイムで「いいね」や「超いいね」をつけて、投票することもできます。
これらのデータからどの生地を発注すべきか、どんなデザインが人気なのかなどを判断することができます。
アプリの導入により、実際にランウェイを見ることができない人からも、多くの評価を得ることを可能にしました。
化粧品・医薬品
化粧医薬品大手の資生堂は「オプチューン」と呼ばれるIoTスキンケアシステムをリリースしました。
オプチューンはユーザーの肌データに基づいた美容液や化粧水を提案するシステムです。
従来の店舗で行なっていた対面販売における提案を、デジタル技術を活用して遠隔でも提供しようという試みとなります。
専用のアプリを利用して、日々変化する肌の状況をチェックして個人の肌のデータを収集します。
そのデータを元に、湿度や温度などさまざまな細かい情報を含めて分析したうえで、個人にあったスキンケアを抽出します。
このシステムは定額制スキンケアセットとして販売されています。
製薬会社の大手の大塚製薬株式会社は服薬支援システムの一環として、服薬支援容器を開発しました。
服薬時間帯になるとLEDが点灯し薬の飲み忘れ防止に貢献しています。
また、服薬した日時が容器のメモリーに自動で記録され、薬剤師はこのデータを元に服薬指導や残薬管理ができるようになります。
配車サービス
配車サービスで有名なUberもデジタルトランスフォーメーションに関する成功事例です。
Uberはもともとアメリカの発祥で、日本には2018年から参入しました。ユーザーがアプリを活用することで配車から目的地の指定までを一括で行うことを可能にしました。
現在はタクシー会社との協業や自治体の協力によって、様々な場所でサービス提供を行なっています。NPO法人「気張る！ふるさと丹後町」が展開している「ささえ合い交通」はUberのアプリを活用して、マイカーを使った送迎を実施しています。
Uberは送迎以外にもテイクアウトのサービス「Uber eats」などを展開しており、今後も支払いから商品の配達までを一括で実施が可能です。
こういったデジタルトランスフォーメーションを活用した生産性の向上を目指す動きは各業界で増えています。
デジタルトランスフォーメーション推進のポイント
ここからはデジタルトランスフォーメーション推進において、おさえておくべきポイントについて解説します。
レガシーシステムに関する課題の解決
デジタルトランスフォーメーションの実現をはかるには、レガシーシステムの課題解決が必要不可欠です。
新しいITシステムの構築にはコストやリスクがかかってしまい、どれだけ軽減できるかが重要となります。
例えば、不要なシステムを廃棄して軽量化したり、協調領域における共通プラットフォームを構築したりなど、できるだけコストを下げる施策が必要です。
また、デジタルトランスフォーメーション人材の育成や確保、DX推進のためのシステムガイドラインなどの策定など、さまざまな課題を解決していく必要があります。
現場との情報共有
デジタルトランスフォーメーションを導入する際にはシステムを実行する現場と、戦略練っていく経営陣との情報連携が必要不可欠です。
デジタルトランスフォーメーションは全体の最適化を行うため、組織全体で協力しながら導入を進める必要があります。
また規模などにもよりますが、費用や人員、工数も大きくなる傾向にあるため、経営陣との認識合わせは特に重要です。
デジタルトランスフォーメーション推進指標の確認
デジタルトランスフォーメーション推進の指標を経済産業省が「DX推進指標とそのガイダンス」で取りまとめています。
このガイダンスは各企業が現状の課題把握やデジタルトランスフォーメーションの導入が、自社で可能なのかの判断などが記載されています。
また経営幹部やデジタルトランスフォーメーション部門、事業部門などそれぞれ企業の形に合わせた自己診断ができるため、改めて経営の在り方やデジタルトランスフォーメーション導入を実現するためのIT構築に関する指標を理解できます。
成功事例を参考に自社にあった取り組みを
今回はデジタルトランスフォーメーションの成功事例について解説しました。
飲食業やアパレルなど業界を問わずにICTの導入は進んでおり、産業構造は大きく転換しています。
スターバックスコーヒーやオプチューンの例のように、データを分析してより顧客のニーズに合ったものを提供できるようになりました。
またグンゼ株式会社の導電性ニットのように、デジタル技術と融合させた商品の開発も行われています。
どの企業も効率化や利便性の向上をはかっており、ユーザーのためのアイデアが実現しています。
導入にはコストがかかるなどさまざまな課題があるため、ポイントを押さえながら導入していくことがカギとなります。
成功事例のように、自社にあったデジタルトランスフォーメーションの取り組みをすることで、よりよいサービスを開発することに期待できます。
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